14 / 38
long run 4
しおりを挟む目が覚めると太陽は真上近くに上がっていた。
横に焚いといた焚き火はとっくに消え、僅かに煙が上がっていた。
「そりゃ~熱いわけだ」
毛布を袖の中へと仕舞うと、一度伸びをする。
「う~~~~、よく寝た! じゃ、お仕事をするか」
空へ舞い上がり、以前と同じようにあちらこちらへ牛を左袖の中から出す。
ブモ~~~~
ブモ~~~
ブモ=
牛もいきなり牧草地から何もない砂漠に出され動揺しているようだった。
いきなり走り出す牛、
左右をきょろきょろ見回す牛
いきなり大きな鳴き声を発する牛
砂地にも関わらずエサを探そうとする牛
そして、空高く舞い上がった。
後はエサに引っかかってくれるのを待つだけ。
しばらくすると砂が盛り上がりながら、こちらに近づいてくる。
「おお、エサに釣られて来た来た!」
砂から飛び出し口をウニョウニョさせながら牛に喰らいつく。
「うわーーキモーーー! こいつの口は何度見ても見慣れないな。
久しぶりだな、ワーム君。
生きていてくれて良かったよ。
もし死んでいたら探すのが大変だったからな~
長い生きしてくれて、ありがとう」
とは言ったが、ここから100kmほど離れた町で事前に情報は得ていた。
まだ、砂漠を根城にしながら商団や旅人を襲っているという話を。
もしワームが死んでいたら広大な砂漠の中から死骸を探す。
それどころか死んでいたら風化して、辺り一面の砂の中からペンダントだけを探す事になるということだ。
それなら『ありがとう』の一言くらい言いたくもなる。
「さぁ~どうしたものか。いきなり即死魔法のデスクリムゾンを掛けてもいいんだが・・・・
!!! ヤツを使おう。
いつまでもマジックバッグに入れっぱなしじゃ、気持ち悪いからな~」
マジックバッグは生き物でも魔法でも何でも収納することができる。
入れた瞬間に時間はほぼ停止し、熱いものは熱いままで、冷たいものは冷たいままで。
そう、切断されたものは切断されたままで。
「ほら、行ってこい!」
左の手の平をワームに向けると、袖の下から30年ほど前にラインハルトが切断したワームの頭部が飛び出した。
ワームの頭部は地面に落ちるとブチョグチョグチャと汚い音を立てながら、もがく様に暴れる。
徐々に頭部から下が生えて来る。
そして、ある程度生えると下半身が、いや、下半身が正しいか分からないが、50mくらいの下半身がドーン!という感じで生えて来る。
しばらくはそのままでウニョウニョ砂の上でもがくのだが、また下半身が生えてくる。
そして、ウニョウニョと・・・・・また、生えて来る。
幾度かそれを繰り返すと、頭部しかなかったのだが、今では完全なワームにと変わった。
が、よく見るとオリジナルと比べ100mほど全長は短いだろうか?
オリジナルのワーム1号がクローンワーム2号君に気がつく。
2号君も気がつくと両者は体を起こしながら見合っている。
しばらく沈黙が続いた。
あーーーーーーーーーーーーーーー!! やばい。やっちまったかもしれない。
いきなり怪獣大戦争が始ると思ったのだが、元は両方とも同じ固体。
お互いが分かり合って二人仲良く俺を襲いに来るのかもしれない。
嫌な汗が流れる。
2匹同時に キシェーーーーン! という叫び声を上げ、体を後ろに反らした。
キェーーン!
ゲンゲン!!
と2匹が叫んだ方ともうと体をぶつけるようにして戦いが始った。
砂が舞い上がり、2匹のワームの叫び声が響く。
「おおお、良かった良かった。予定通り怪獣大戦争になってくれて。
2匹討伐する事にならなくて良かった。良かった!」
俺は呑気に今よりも高く高度を取り二匹の死闘を眺めていた。
地ベタに這い蹲るように戦うのかと思ったら、コブラのように体を起こし体をぶつけ合う戦い方をしていた。
人間や牛など小さい生物を襲うときと根本的に戦い方が異なっている。
全長が長い分、体をぶつけ合ったときなどは1号の方が押しているように見える。
全長が短い2号の方が小回りが効くためか1号の後ろに回りこみ後方から噛み付き攻撃を仕掛ける。
6・4で1号君の方が有利なように見える。そのとき、ふと思い出した!
「あ!!マズイ! 目印をつけておかないと! 乱戦しているうちに、どっちが1号か分からなくなるかもしれない!
どうすればいいかな~ ペンキでもぶっ掛けるか・・・・・
いや逃げられると厄介だ!」
袖の下から透き通った紺色の大剣を取り出し1号の尻尾目掛け突き刺した。
1号は2号に気を取られているのか、尾の方には神経が無いのか気がつくことは無かった。
俺の大剣は着ている白いローブと一緒に遙か昔、俺が初めて異世界へ召喚されたときに手に入れた物だ。
両方とも神が使用していた物だった。
神剣、神の法衣といわれて、その世界では神話になっていた。
神剣の力により砂地だろうが突き刺すと、その地に固定され抜けなくる。
若干の例外はあるが神剣に選ばれた者以外持ち上げることが出来ないのだ。
1号は尾を固定された事により一段と動きが鈍くなり2号は背後から攻めようとする。
「後に回り込もうとするなんて、一応、脳みそはあるようだな」
どれくらい時間が過ぎただろうか?
両者とも一進一退。
決め手に欠ける戦いだった。
「う~~~ん、厭きてきたな・・・・
決着がついても、解体しなきゃならないんだよな・・・・・面倒だ。
それに、2号君が勝っても退治しておかないと依頼主から大目玉を食うからな~」
頭を掻きながら魔法を唱えた。
「デスクリムゾン!! デスクリムゾン!!」
ドダン!
ドダン!!
左手から即死魔法が発せられ2匹は体を横たえた。
砂が辺り一面に舞い上がる。
「あ~~きっと、命の軽視とか言って非難されるんだろうな~
無駄に生物と生物を戦わせ、挙句の果てに2匹とも即死魔法だもんな~
言い逃れできないよな~」
ブツクサ言いながら砂が舞う地上に降り1号の尾に刺さっている神剣を抜いた。
「回収が大変だな」
ワーム1号の頭部へ向かう。
砂の上を400mほど歩いたろうか。
「この辺から捌くか」
徐に横たわっているワームの脇腹に神剣を突き刺し、頭目掛け斬り裂きながら歩く。
「うげーー気持ち悪~~~!」
先ほど飲み込んだ牛はもっと下のほうへ飲み込まれたようでおぞましい姿対面する事はなかった。
「この辺りだろ」
と適当に目星をつけ細かく切り刻むと30年前にペンダントを巻き付け投げ入れた短剣が出てきた。
「ここにあったという事は、あれから30年の間、こいつを切断したヤツがいなかったということか・・・・・
さすが極悪勇者・ラインハルトといったところか。
さすが、魔王をほ葬っただけのことはあるな・・・・・
何にしろ回収できたことだし、依頼主へ届け行くか」
静かに空へ舞い上がった。
0
あなたにおすすめの小説
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ
翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL
十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。
高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。
そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。
要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。
曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。
その額なんと、50億円。
あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。
だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。
だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
安全第一異世界生活
朋
ファンタジー
異世界に転移させられた 麻生 要(幼児になった3人の孫を持つ婆ちゃん)
新たな世界で新たな家族を得て、出会った優しい人・癖の強い人・腹黒と色々な人に気にかけられて婆ちゃん節を炸裂させながら安全重視の異世界冒険生活目指します!!
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ
鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。
それが約50年前。
聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。
英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。
俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。
でも…英雄は5人もいらないな。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる