4 / 88
1章. ゆい
machi.3
しおりを挟む
昼過ぎまでは小雨だったのに、今はかなり激しく降っている。
渋滞しているのか、タクシーはなかなか進まない。
苦しそうに息をしていた翔が、突如、吐いた。
「あ~あ…」
車内に吐しゃ物特有のにおいが充満し、運転手さんが露骨に嫌な顔をする。
「上田医院でしょ?
後、少しだから降りてくれる?
ちょっと掃除しないと使いもんになんないからさぁ」
汚したところはできる限りハンカチで拭いてから、翔を抱えてタクシーを降りた。
激しく打ち付ける雨。
翔を濡らさないように上着をかけて、
傘を首で支え、病院に向かって歩く。
あっというまに足元からずぶ濡れ。
車で5分の距離は、歩くと長い。
上田医院についた時は、すでに18時を過ぎ、雨と吐しゃ物にまみれた私の前で、受付の窓は固く締まっていた。
病院の前でまた、タクシーを呼ぶ。
翔が苦しそうにしゃくりあげる。
顔が赤い。呼吸が浅い。
やっぱり車を買いたい。
雨の日はいつも思う。
購入資金もないし、維持費もないから、無理だけれど。
ゆっくり、ときどき止まってもらいながら、
帰りのタクシーでは戻さずに済んだ。
しらかばハイツ202が、私と翔の部屋。
病院の借り上げ社宅にいれてもらっている。
六畳間にシンクと簡易コンロ、片隅にトイレがあってお風呂はない。
1階の共同浴場に決められた時間内に入るか、銭湯まで行くか。
水しか出ない水道で済ませるか。
翔を寝かせて汚れたものを片付け、一息つけたのは21時近くなってからだった。
翔の顔は赤く、熱はまだあるようだけど、今のところ、静かに寝ている。
隣のマリカちゃんが帰宅したようで、テレビの音が聞こえてきた。
明日は休むしかない。婦長と曽根さんに電話しなきゃ…
思うように体が動かず、床にへたり込んだまま、
しばらくぼんやりしていたようで。
…気付いたら、翔が痙攣していた。
渋滞しているのか、タクシーはなかなか進まない。
苦しそうに息をしていた翔が、突如、吐いた。
「あ~あ…」
車内に吐しゃ物特有のにおいが充満し、運転手さんが露骨に嫌な顔をする。
「上田医院でしょ?
後、少しだから降りてくれる?
ちょっと掃除しないと使いもんになんないからさぁ」
汚したところはできる限りハンカチで拭いてから、翔を抱えてタクシーを降りた。
激しく打ち付ける雨。
翔を濡らさないように上着をかけて、
傘を首で支え、病院に向かって歩く。
あっというまに足元からずぶ濡れ。
車で5分の距離は、歩くと長い。
上田医院についた時は、すでに18時を過ぎ、雨と吐しゃ物にまみれた私の前で、受付の窓は固く締まっていた。
病院の前でまた、タクシーを呼ぶ。
翔が苦しそうにしゃくりあげる。
顔が赤い。呼吸が浅い。
やっぱり車を買いたい。
雨の日はいつも思う。
購入資金もないし、維持費もないから、無理だけれど。
ゆっくり、ときどき止まってもらいながら、
帰りのタクシーでは戻さずに済んだ。
しらかばハイツ202が、私と翔の部屋。
病院の借り上げ社宅にいれてもらっている。
六畳間にシンクと簡易コンロ、片隅にトイレがあってお風呂はない。
1階の共同浴場に決められた時間内に入るか、銭湯まで行くか。
水しか出ない水道で済ませるか。
翔を寝かせて汚れたものを片付け、一息つけたのは21時近くなってからだった。
翔の顔は赤く、熱はまだあるようだけど、今のところ、静かに寝ている。
隣のマリカちゃんが帰宅したようで、テレビの音が聞こえてきた。
明日は休むしかない。婦長と曽根さんに電話しなきゃ…
思うように体が動かず、床にへたり込んだまま、
しばらくぼんやりしていたようで。
…気付いたら、翔が痙攣していた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
109
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる