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そんなわけで。
その日の終業後は、まりな先輩とシュート先輩と3人で、国立T美術館で開催されている『千年を駆けるアート展』を観に行った。
絵画展なんてここ何年も観たことなくて、壮大な館内に満喫する芸術の熱量に圧倒された。
何だろう。
人間の力の偉大さというか。
心を無にできる空間というか。
浄化される。
静けさと厳かさが支配する芸術空間で、ひと際観客が群がっている絵があり、自然と足を止めて、息を飲んだ。
『最愛』 chia.t. 20××年
女の子の寝顔を描いた美しい絵だった。
淡い色彩が涙でにじむ。
描いた人の想いが沁み込んできて、涙腺が刺激される。
こんな風に描ける人がいるんだと畏敬の念を抱く。
この女の子をどんなに大切に想っているか、
圧倒的に強い思いがストレートに伝わってきて、泣けた。
「…いいな」
「…素敵」
いつの間にか隣に立っていたまりな先輩とシュート先輩も、言葉を失って見入っているみたいだった。
「…これ、少しだけ、佐倉に似てるな」
シュート先輩がポツリとつぶやいて、一気に涙が止まらなくなった。
一人号泣してしまった私を、先輩たちはそっとしておいてくれた。
千晃くんだった。
千晃くんの絵だった。
20××年。5年前。
千晃くんと一緒に過ごしていた頃。
人生で一番幸せだった頃。
億単位で取引されるという噂の千晃くんの絵を、見せてもらったことがあったけど、
風景画ばかりで、人物を描いたものは一つもなかった。
『ここの絵、描いてもいい?』
千晃くんに聞かれたことがあったのを思い出す。
多分、快諾したんだと思う。
千晃くんは私が嫌がることは絶対にしなかった。
『今しか、ないから』
いつ描いていたのか、完成したのか、全然知らなかった。
「…ずるいよ」
千晃くんの目にこんな風に映っていたなんて知らなかった。
どんなに大切に想われていたか、思い知らされた。
『忘れなくていいだろ』
高野チーフの声が耳によみがえる。
千晃くんがくれた大切で幸せな時間は。
止まってはくれなかったけれど。
『あいつと過ごした時間は、嘘じゃないんだから』
なくなったわけじゃない。
確かにそこにあって、今も私の中にある。
千晃くんの中にも、多分、眠っている。
千晃くんだって、忘れたくて忘れたわけじゃない。
失くしたことが悲しすぎて、取り戻したくて、
でも出来なくて、泣いてばかりだったけど。
やっと、思い出を抱きしめられる気がした。
千晃くん。ありがとう。
明日どんな千晃くんに会っても。
思い出を抱きしめて歩いていけると思った。
その日の終業後は、まりな先輩とシュート先輩と3人で、国立T美術館で開催されている『千年を駆けるアート展』を観に行った。
絵画展なんてここ何年も観たことなくて、壮大な館内に満喫する芸術の熱量に圧倒された。
何だろう。
人間の力の偉大さというか。
心を無にできる空間というか。
浄化される。
静けさと厳かさが支配する芸術空間で、ひと際観客が群がっている絵があり、自然と足を止めて、息を飲んだ。
『最愛』 chia.t. 20××年
女の子の寝顔を描いた美しい絵だった。
淡い色彩が涙でにじむ。
描いた人の想いが沁み込んできて、涙腺が刺激される。
こんな風に描ける人がいるんだと畏敬の念を抱く。
この女の子をどんなに大切に想っているか、
圧倒的に強い思いがストレートに伝わってきて、泣けた。
「…いいな」
「…素敵」
いつの間にか隣に立っていたまりな先輩とシュート先輩も、言葉を失って見入っているみたいだった。
「…これ、少しだけ、佐倉に似てるな」
シュート先輩がポツリとつぶやいて、一気に涙が止まらなくなった。
一人号泣してしまった私を、先輩たちはそっとしておいてくれた。
千晃くんだった。
千晃くんの絵だった。
20××年。5年前。
千晃くんと一緒に過ごしていた頃。
人生で一番幸せだった頃。
億単位で取引されるという噂の千晃くんの絵を、見せてもらったことがあったけど、
風景画ばかりで、人物を描いたものは一つもなかった。
『ここの絵、描いてもいい?』
千晃くんに聞かれたことがあったのを思い出す。
多分、快諾したんだと思う。
千晃くんは私が嫌がることは絶対にしなかった。
『今しか、ないから』
いつ描いていたのか、完成したのか、全然知らなかった。
「…ずるいよ」
千晃くんの目にこんな風に映っていたなんて知らなかった。
どんなに大切に想われていたか、思い知らされた。
『忘れなくていいだろ』
高野チーフの声が耳によみがえる。
千晃くんがくれた大切で幸せな時間は。
止まってはくれなかったけれど。
『あいつと過ごした時間は、嘘じゃないんだから』
なくなったわけじゃない。
確かにそこにあって、今も私の中にある。
千晃くんの中にも、多分、眠っている。
千晃くんだって、忘れたくて忘れたわけじゃない。
失くしたことが悲しすぎて、取り戻したくて、
でも出来なくて、泣いてばかりだったけど。
やっと、思い出を抱きしめられる気がした。
千晃くん。ありがとう。
明日どんな千晃くんに会っても。
思い出を抱きしめて歩いていけると思った。
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