時間を止めて ~忘れられない元カレは完璧な容姿と天性の才能を持つ世界一残酷な人でした 【完結】

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千晃くんが海外に戻る。

「これでやっと、香恋ちゃんの目も覚めるな」
「お嬢様との破局説が流れてるから、より加熱するかもよ?」
「え、…マジすか」

先輩たちの声が遠く聞こえた。

千晃くんがいなくなる。
もう、会えなくなる。

再会してからも、
千晃くんはずっと優しくて。
ずっと私を助けてくれた。

なのに。
私は、失くしたものを数えてばかりで、
泣いてばかりいた。

千晃くんに。
このまま、会えなくなっていいの?

『最愛』

千晃くんが描いてくれた美しい絵を思い出す。
溢れるほどの愛情を思い出す。

千晃くんを思うと。
まだ心臓がぎゅっとつかまれるみたいに痛いけど。

でも、会えなくなってしまうなら。
最後に伝えたいのは、…

「ここちゃん、お昼食べよ~」
「すみません。ちょっと、用事済ませてから行きます」

お昼休み。
フロアに残って、千晃くんがくれたメモの番号にメッセージを送ることにした。

『先日来、数々の困難な場面におきまして、多大なるご助力を賜りましたことに厚くお礼申し上げます。心よりの感謝を一言申し上げたく、ご多忙中とは存じますが、ご都合宜しき折にお時間を頂けましたら幸いでございます』

…いや。
お前、誰だよ。

仕事じゃないし。
商談じゃないし。

激しく頭を振って作成したメッセージを全て消し、スマートフォンの画面をにらむ。

千晃くん、…

かくまってくれた力強い腕。
つないでくれた優しい手のひら。
私を見つめる澄んだ瞳。
そっと触れた艶やかな唇。

優しくて悲しい。愛しくて儚い。

『…会いたい』

千晃くんを思い浮かべたら、指が勝手にメッセージを作成していた。

ぼーっと画面を見つめてから我に返り、更に激しく頭を振った。

いや。いやいや。
ちょっと待て。
なんか意味深じゃないか。
下心丸出しじゃないか。

私と千晃くんの今の関係は、職場の知り合いというだけで、
こんなメッセージを送るような仲では、…

「ここちゃん、午後の営業、6号車使うんだよね?」
「うわあ、…っっ‼」

自分の作成したメッセージにやましさを認めていたところ、
急に話しかけられて必要以上に動揺した挙句、

『メッセージ送信しました』

「送っちゃったよ―――っ‼」

焦りまくって送信してしまった。

「どうした、ここちゃん?」
「あ、いえ。なんでも…」

まりな先輩に不審そうに見られて、

「…そうですっ、6号車で間違いないです‼」

やけくそに叫んだけど、動揺は隠しきれなかった。

落ち着け、落ち着くんだ、ここ。
メッセージの送信取り消しという機能があるんじゃなかったか?

どうやるんだっけ?
え? どうやるんだっけ!?

微塵も落ち着けずに、焦りに焦って、無駄に設定なんかを調べている間に、

ピロン。

新しいメッセージが飛んできた。

千晃くんっ

『すぐ行く』

ぎゃあああ、ここのバカ―――っ
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