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time.82
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「…ここ?」
千晃くんが私を見つけて、少し戸惑ったような声を上げた。
誰の目にどんな風に映ろうと関係ないと言い聞かせたけど、
千晃くんとチーフをがっかりさせるのは胸が痛む。
せっかく色を合わせてフォーマルスーツを新調してくれたのに、
私がこんな濡れネズミみたいな格好をしていたら、
「…佐倉先輩、常盤さんに恥かかせるつもりなんですか?」
千晃くんが恥ずかしい思いをすることになる。
いたたまれなくて千晃くんを見れない。
何て説明しても、やっぱりがっかりさせてしまうような気がする。
「常盤さん。エスコート役、交換します?」
香恋ちゃんが私の前に進み出て、こそっと千晃くんに囁きかけた。
「おおっとぉ? ここにきてまさかの急展開? ってか、香恋ちゃん、それは勘弁してよ~」
香恋ちゃんの申し出に、いち早く反応したのは、
やたらと髪の毛をワックスで固めて、無意味に回転を繰り返していたシュート先輩だった。
「…ちょっと、待ってて」
千晃くんの爽やかな香りが近づき、優しい声が耳元をかすめて、
顔を上げたら立ち去っていく千晃くんの後姿が見えた。
「さすがの常盤さんも、戻ってこないんじゃないですかぁ?」
憐れむように私を見る香恋ちゃんの向こうに、タキシード姿のチーフが見えた。
上質でクラシカルなタキシードを着たチーフは、大人の魅力に溢れていて、
いつもより3割増しで素敵に見える。
チーフに寄り添うように立つまりな先輩の、艶やかで大人っぽいマリンブルーのドレスが映えていた。
一瞬、チーフと視線が絡んだ。
薄いヘーゼルの瞳が、真実を探るようにじっと私を見ている。
大声で弁明したい気分だった。
チーフがせっかく買ってくれたドレスを着ていないのは不可抗力で、
私だって本当はあのドレスを着たかった、…‼
まりな先輩に何事か話しかけられたチーフが、私から目を逸らして先輩に向き直り、口の端を緩めながらうなずいた。
急に。
自分がここにいる意味が分からなくなった。
一応、業務的なことはもう終わったわけで。
後は、
従業員も一緒に自社の歩みを振り返って将来のビジョンを考えたり、
経営陣や他部署や関係各所の方々と交流を図ったりするわけで。
つまり。
別にもう、こんなみじめな格好でいつまでもここに留まっていなくても、…
「…ここ。顔上げて」
いつの間に戻ってきたのか、少し息を切らせながら、
千晃くんが身をかがめて私を下からのぞき込んでいた。
千晃くんが私を見つけて、少し戸惑ったような声を上げた。
誰の目にどんな風に映ろうと関係ないと言い聞かせたけど、
千晃くんとチーフをがっかりさせるのは胸が痛む。
せっかく色を合わせてフォーマルスーツを新調してくれたのに、
私がこんな濡れネズミみたいな格好をしていたら、
「…佐倉先輩、常盤さんに恥かかせるつもりなんですか?」
千晃くんが恥ずかしい思いをすることになる。
いたたまれなくて千晃くんを見れない。
何て説明しても、やっぱりがっかりさせてしまうような気がする。
「常盤さん。エスコート役、交換します?」
香恋ちゃんが私の前に進み出て、こそっと千晃くんに囁きかけた。
「おおっとぉ? ここにきてまさかの急展開? ってか、香恋ちゃん、それは勘弁してよ~」
香恋ちゃんの申し出に、いち早く反応したのは、
やたらと髪の毛をワックスで固めて、無意味に回転を繰り返していたシュート先輩だった。
「…ちょっと、待ってて」
千晃くんの爽やかな香りが近づき、優しい声が耳元をかすめて、
顔を上げたら立ち去っていく千晃くんの後姿が見えた。
「さすがの常盤さんも、戻ってこないんじゃないですかぁ?」
憐れむように私を見る香恋ちゃんの向こうに、タキシード姿のチーフが見えた。
上質でクラシカルなタキシードを着たチーフは、大人の魅力に溢れていて、
いつもより3割増しで素敵に見える。
チーフに寄り添うように立つまりな先輩の、艶やかで大人っぽいマリンブルーのドレスが映えていた。
一瞬、チーフと視線が絡んだ。
薄いヘーゼルの瞳が、真実を探るようにじっと私を見ている。
大声で弁明したい気分だった。
チーフがせっかく買ってくれたドレスを着ていないのは不可抗力で、
私だって本当はあのドレスを着たかった、…‼
まりな先輩に何事か話しかけられたチーフが、私から目を逸らして先輩に向き直り、口の端を緩めながらうなずいた。
急に。
自分がここにいる意味が分からなくなった。
一応、業務的なことはもう終わったわけで。
後は、
従業員も一緒に自社の歩みを振り返って将来のビジョンを考えたり、
経営陣や他部署や関係各所の方々と交流を図ったりするわけで。
つまり。
別にもう、こんなみじめな格好でいつまでもここに留まっていなくても、…
「…ここ。顔上げて」
いつの間に戻ってきたのか、少し息を切らせながら、
千晃くんが身をかがめて私を下からのぞき込んでいた。
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