時間を止めて ~忘れられない元カレは完璧な容姿と天性の才能を持つ世界一残酷な人でした 【完結】

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「必死」とか、チーフに世界一似合わない単語が出てきてビビる。
そこは「余裕」じゃないんですか⁇

ていうか。

え。こいつに必死⁇

思わず、無駄に整っているチーフの横顔を凝視したら、無言ではたかれた。

え。これは元カノさんに対する当てつけなんでしょうか、…

「…そう、なんだ」

梨子さんが私とチーフをつないでいるベルトに目を向けて、

「運命の鎖につながれちゃったんだね」

なんだか寂しそうな微笑みを浮かべた。

チーフと一緒にベルトを見下ろして。

「…そうだな」

チーフがふっと口元を緩めた。

「えっ⁉ そうなの⁉」

これはただのパラシュートの安全装備じゃないの⁉

思わず素っ頓狂な声を上げてしまい、

「もう、黙ってろ、お前」

頭に回されていた大きな手で口を塞がれた。

え――っ、運命、軽はずみ過ぎじゃない⁉︎

「雅くん、…変わった」

梨子さんが拗ねたようにつぶやくと、

「…死んでも守ってやりたい奴がいるから」

チーフは私に回した腕に力を込めた。

な、…なんか。チーフが。

甘い。っていうか。
窒息する。っていうか。
顔上げられない。っていうか、…

これが当てつけだとしても、ちょっとどうにも目が泳ぐ。

「…俺は、怒ってない。何とも思ってない」

静かに告げるチーフの声が暗がりに響いて胸を刺す。

「雅くん、…」
「…元気でな」

梨子さんが言葉を失った。

中庭を一陣の風が吹き抜け、降り積もった紙吹雪が舞い上がる。

「…分かった」

梨子さんが、何かを振り切ったような、きっぱりとした笑みを見せた。

「元気でね、雅くん。…もう、会わない」

そうしてくるりと踵を返し、

「…佐倉さん。染み抜き手伝ってくれてありがとう」

少しだけ震える声でつぶやいてから、ホテルの建物の中に戻っていった。

「…チーフ。いいんですか? ずっと忘れられなかった人なのに」

梨子さんの後姿は確実に泣いていた。
なんかかっこいいこと言っていたけど、ホントは、チーフだって、…

梨子さんを待っていたマンションの部屋。
本当は梨子さんが使うはずだった合い鍵。

気になってチーフを見上げると、

「いたっ」

なんか、ゴチン、とおでこに衝撃が走り、恐らく頭突きしてきたチーフの顔がすぐそこに迫っていた。

「いいに決まってんだろ。お前、何聞いてたんだ?」

え、…

何、って言われても、チーフの顔が近すぎて頭が働かない。

「俺が死んでも守ってやりたいのは、世界中に一人しかいない」

チーフの低い声が耳に甘く響いて、柔らかく潤った唇が、

一瞬だけ優しく優しく、私の唇に触れた。

「覚えとけ」

な、…

声が出ない。息が止まる。身動きできない。

何するの―――っ⁉

完全に動きを止めた私の頬を軽くつまむと、

「戻るぞ」

チーフは満足そうに片頬を上げ、パラシュートの装備を外し始めた。
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