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あの事故の時、横転した車の中で、
『俺の、…ここ』
千晃くんは私を探して、私を見つけてくれた。
あの時、千晃くんは、
本当に本当に、私を見つけてくれていたんだ。
「常盤さんの脳には、確かに損傷が見られましたが、彼はそれを補って余りある能力を持っています。彼の脳は非常に特殊で、…言ってみれば、人知の域を超えています」
榊医師は穏やかに、でもとても力強く語ってくれた。
「人間の脳には未だ解明できていないことが多くありますが、私は、近い将来、彼が解明してくれるんじゃないかと思っています。現在、記憶障害に特効薬はありません。でも、彼は自分の手で、自身の記憶障害を克服するのではないでしょうか」
カラン、…
ランチドリンクのアイスティーに浮かんだ氷が音を立てて溶ける。
「我々の思いもよらない方法で」
榊医師が内緒話をするように声を潜めた。
「例えば、時空を超える、とか」
榊医師の柔和な笑顔の向こうに、千晃くんの面影が見える。
「ここさん。あなたを見つけるために」
『もしもいつか、時間を超えられる未来が来たら、…』
千晃くんの甘くて優しい声が聞こえる。
『…逢いにいく』
千晃くん。
千晃くんがくれた約束は。
あの夜の満天の星のように。
いつでも私を明るく照らしてくれる。
「彼はきっと、新しい未来を切り開いてくれるんじゃないかと、私はとても楽しみにしているんですよ」
和やかな笑顔と希望の欠片を残して、榊医師はカフェレストランから帰っていった。
遠ざかる背中を見送って、会社に戻る途中、
「…なんか俺、かぐや姫の爺さんになった気分なんだけど」
チーフがぽつりとつぶやいた。
「え?」
爺さん??
意味が分からなくて、隣を歩く長身のチーフを見上げると、
「なんでもねえよ」
頭をつかまれて、前に向き直らされた。
抜けるような青空。人で溢れる昼時のオフィス街。
きれいに整備された街路樹から降り注ぐ木漏れ日。
「…返してやるよ、お前が望むなら」
どんな時も、何があっても、私を受け止めてくれる。私の味方でいてくれる。
強くて優しくて、いつの間にかこんなにも大切でかけがえのない存在になっていた高野チーフ。
何の自虐か分からないけど、少し拗ねた口調でぶつぶつ言っているチーフが、なんだか可愛く見えて、
「…え? 爺さん? 爺さん⁇」
無駄に爺さんを繰り返していたら、
「…うるせえ」
きめ細かく整ったチーフの顔が急に目の前に迫って、
ちゅ。
ほのかなアイスティの香りとともに、チーフの柔らかくて甘い唇が優しく私に触れた。
な、…
触れた唇から顔中に熱が広がって、手足の先まであっという間に伝染して、
その場に固まって明らかに通行の邪魔になっている私を、
「…いいだろ、少しくらい。俺、爺さんなんだから」
チーフの長い腕がかばうように引き寄せて、先を促した。
なんか危険な爺さんがいる、…
『俺の、…ここ』
千晃くんは私を探して、私を見つけてくれた。
あの時、千晃くんは、
本当に本当に、私を見つけてくれていたんだ。
「常盤さんの脳には、確かに損傷が見られましたが、彼はそれを補って余りある能力を持っています。彼の脳は非常に特殊で、…言ってみれば、人知の域を超えています」
榊医師は穏やかに、でもとても力強く語ってくれた。
「人間の脳には未だ解明できていないことが多くありますが、私は、近い将来、彼が解明してくれるんじゃないかと思っています。現在、記憶障害に特効薬はありません。でも、彼は自分の手で、自身の記憶障害を克服するのではないでしょうか」
カラン、…
ランチドリンクのアイスティーに浮かんだ氷が音を立てて溶ける。
「我々の思いもよらない方法で」
榊医師が内緒話をするように声を潜めた。
「例えば、時空を超える、とか」
榊医師の柔和な笑顔の向こうに、千晃くんの面影が見える。
「ここさん。あなたを見つけるために」
『もしもいつか、時間を超えられる未来が来たら、…』
千晃くんの甘くて優しい声が聞こえる。
『…逢いにいく』
千晃くん。
千晃くんがくれた約束は。
あの夜の満天の星のように。
いつでも私を明るく照らしてくれる。
「彼はきっと、新しい未来を切り開いてくれるんじゃないかと、私はとても楽しみにしているんですよ」
和やかな笑顔と希望の欠片を残して、榊医師はカフェレストランから帰っていった。
遠ざかる背中を見送って、会社に戻る途中、
「…なんか俺、かぐや姫の爺さんになった気分なんだけど」
チーフがぽつりとつぶやいた。
「え?」
爺さん??
意味が分からなくて、隣を歩く長身のチーフを見上げると、
「なんでもねえよ」
頭をつかまれて、前に向き直らされた。
抜けるような青空。人で溢れる昼時のオフィス街。
きれいに整備された街路樹から降り注ぐ木漏れ日。
「…返してやるよ、お前が望むなら」
どんな時も、何があっても、私を受け止めてくれる。私の味方でいてくれる。
強くて優しくて、いつの間にかこんなにも大切でかけがえのない存在になっていた高野チーフ。
何の自虐か分からないけど、少し拗ねた口調でぶつぶつ言っているチーフが、なんだか可愛く見えて、
「…え? 爺さん? 爺さん⁇」
無駄に爺さんを繰り返していたら、
「…うるせえ」
きめ細かく整ったチーフの顔が急に目の前に迫って、
ちゅ。
ほのかなアイスティの香りとともに、チーフの柔らかくて甘い唇が優しく私に触れた。
な、…
触れた唇から顔中に熱が広がって、手足の先まであっという間に伝染して、
その場に固まって明らかに通行の邪魔になっている私を、
「…いいだろ、少しくらい。俺、爺さんなんだから」
チーフの長い腕がかばうように引き寄せて、先を促した。
なんか危険な爺さんがいる、…
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