時間を止めて ~忘れられない元カレは完璧な容姿と天性の才能を持つ世界一残酷な人でした 【完結】

remo

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「そば、めっちゃ美味しかったね! めっちゃ美味しかったね!」
「つるつる~っ」

チーフが作った打ちたてのそばは感動するほど美味しく、
るうちゃんもたくさんおかわりをして、2人ともものすごく満足そうだった。

なんかこう、チーフって何でも上手っていうか。
何やっても絵になるっていうか。器用っていうか。

…ちょっとずるい。

夕方、茉由子さんとるうちゃんが家に帰る、その帰り際。
玄関の上がり框で、

「…ここちゃん、ありがとう」

茉由子さんに何気なく言われて、

「あんな甘い、っていうか、…あんな幸せそうな雅、初めて見た」

ちょっと本気で泣けてきた。

「あーっ、ママがここたん泣かした。…うらやましいから?」
「違うわよっ」

茉由子さんが少しだけ焦った様子で、

「ねぇねぇ、今度の休み、一緒に旅行しない? 海行こうよ、海」
「うみ~~」

るうちゃんを抱き上げて話を変えた。
奥歯を噛みしめながら頷いたら、

「…しないよ」

後ろからチーフにふんわり抱きしめられた。

「初めての旅行は2人で行くから。海はその後な」

前に回された腕に頭を抱かれ、こめかみに柔らかい唇が触れた。

「もおおっ、分かったわよ。雅ったらここちゃん独り占めして。その後でいいけどっ、ここちゃん、水着見に行こうね!」

茉由子さんが少し呆れたように笑い、

「がっくん、るうもちゅう~~」

るうちゃんが唇を突き出して、チーフが笑いながらそのぷっくりした頬に唇を寄せた。

…ありがとうは、私の方です。

「…お前、割と泣き虫だよな」

茉由子さんとるうちゃんが帰った後。
玄関でそのままチーフが私を抱きしめる。

大きくて温かくて安心する。
心地よくて艶めいて乱される。

強くて優しいチーフの腕の中。

しなやかな体躯。規則正しい鼓動。
滑らかな肌触り。チーフの匂い。
低く沁みる声。
全てを包み込んでくれる腕。

「…あの。お爺さんっ‼」
「…おい」

込み上げる想いが口を突いて出るに任せたら、なんか間違えた。

「なんだい、婆さん。とかの返しを求めてんのか?」
「違いますよっ‼︎」

チーフが少し困ったような顔で、柄に合わないことを言ってくるから、おかしくて泣いたまま笑ってしまった。

「今日から、よろしくお願いします、って思って」
「…ん」

チーフの薄いヘーゼルの瞳が優しく緩む。

「…それで」

この気持ちを何て言ったらいいのか分からないけど。
うまく言えるか分からないけど。

「…チーフがお爺さんになっても、ずっと。こんな風にいられたらいいな、って思って」

急になんだか緊張してきて。
もごもごとつぶやいたら、一瞬動きを止めたチーフに、

「…そうだな」

強く強く抱きしめられた。

チーフの低くかすれた甘い声が耳をくすぐる。

「だったら。爺さんも悪くないな」
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