18 / 124
blue.17
しおりを挟む
「おい! そこで何やってる!?」
個室のドアが外側から蹴破られて、私に乗りかかっていた谷口さんの背中にぶつかり鈍い音がした。
興奮した荒い息を吐きながら顔を上げた谷口さんの向こうに、長身の影が見えた。
「お、まえ、…っ!」
状況を認めたらしい和泉さんが谷口さんをつかみ上げて私から引き離すと、
「ま、待て。こ、この女が、…っ」
言い逃れようとしている谷口さんを有無を言わせず殴り倒した。
激しい音がして谷口さんのうめき声が聞こえる。
「…のい?」
出来得る限り身を縮めていたけれど震えが止まらない。
涙の膜の向こうにきれいな顔を痛そうに歪めた和泉さんが見えた。
「…悪かった」
和泉さんがスーツの上着を私にかけてそっと引き寄せ、口の中に詰め込まれた綿みたいなものを取り除いてくれる。
「…ごめ、…なさ、…っ」
温かい胸の中に包み込まれると、一気に涙が溢れて止められなくなった。
ゴミだけど。
ゴミかもしれないけど。
恐怖と安堵と切なさと痛さと、わからないけど嗚咽が込み上げてきて止められなくて和泉さんにしがみついた。
「もう、…大丈夫だ」
和泉さんが回した腕に力を込めて優しく抱きしめてくれた。
「のいちゃん、遠慮しないでね」
「…はい。ありがとうございます」
麻雪さんと並んでタクシーに乗り、帰宅の途に就いている。
いや。
有難いです。本当に有難いです。
でも。
居心地の悪さ半端ないです…
和泉さんは震えが止まらない私をずっと抱きしめていてくれた。
優しい温かい胸の中で堰が切れたように泣きじゃくってしまった私をずっと包み込んでいてくれた。
そして。
「今日は、俺のうちに来い」
艶のあるハスキーな声を耳元で響かせるから、
別の意味で身体中に震えが走ったというか、全身の血が踊り上がったというか、…
もうこのまま離さないでくれたらいいのに、とか思っちゃったのに。
私の荷物を持った麻雪さんが現れて、
「行こう、のいちゃん」って、…
そう、つまり。
和泉さんち=麻雪さんち、だった。
何が悲しくて2人の愛の巣に行かなきゃならないんだ―――――っ
いや。有難いです。本当に有難いです。
今日は一人になりたくないだろうって気遣ってくれた優しさが嬉しくて。
有難くて。申し訳なくて。
…胸が痛いです。
「ごめんね、イズミくんが強引で」
麻雪さんが優しい眼差しで私を見る。
「い、いえ、そんな。とんでもないことでございます」
もはや口調もおかしい私に、ふふふ、と麻雪さんは柔らかい笑い声をあげた。
個室のドアが外側から蹴破られて、私に乗りかかっていた谷口さんの背中にぶつかり鈍い音がした。
興奮した荒い息を吐きながら顔を上げた谷口さんの向こうに、長身の影が見えた。
「お、まえ、…っ!」
状況を認めたらしい和泉さんが谷口さんをつかみ上げて私から引き離すと、
「ま、待て。こ、この女が、…っ」
言い逃れようとしている谷口さんを有無を言わせず殴り倒した。
激しい音がして谷口さんのうめき声が聞こえる。
「…のい?」
出来得る限り身を縮めていたけれど震えが止まらない。
涙の膜の向こうにきれいな顔を痛そうに歪めた和泉さんが見えた。
「…悪かった」
和泉さんがスーツの上着を私にかけてそっと引き寄せ、口の中に詰め込まれた綿みたいなものを取り除いてくれる。
「…ごめ、…なさ、…っ」
温かい胸の中に包み込まれると、一気に涙が溢れて止められなくなった。
ゴミだけど。
ゴミかもしれないけど。
恐怖と安堵と切なさと痛さと、わからないけど嗚咽が込み上げてきて止められなくて和泉さんにしがみついた。
「もう、…大丈夫だ」
和泉さんが回した腕に力を込めて優しく抱きしめてくれた。
「のいちゃん、遠慮しないでね」
「…はい。ありがとうございます」
麻雪さんと並んでタクシーに乗り、帰宅の途に就いている。
いや。
有難いです。本当に有難いです。
でも。
居心地の悪さ半端ないです…
和泉さんは震えが止まらない私をずっと抱きしめていてくれた。
優しい温かい胸の中で堰が切れたように泣きじゃくってしまった私をずっと包み込んでいてくれた。
そして。
「今日は、俺のうちに来い」
艶のあるハスキーな声を耳元で響かせるから、
別の意味で身体中に震えが走ったというか、全身の血が踊り上がったというか、…
もうこのまま離さないでくれたらいいのに、とか思っちゃったのに。
私の荷物を持った麻雪さんが現れて、
「行こう、のいちゃん」って、…
そう、つまり。
和泉さんち=麻雪さんち、だった。
何が悲しくて2人の愛の巣に行かなきゃならないんだ―――――っ
いや。有難いです。本当に有難いです。
今日は一人になりたくないだろうって気遣ってくれた優しさが嬉しくて。
有難くて。申し訳なくて。
…胸が痛いです。
「ごめんね、イズミくんが強引で」
麻雪さんが優しい眼差しで私を見る。
「い、いえ、そんな。とんでもないことでございます」
もはや口調もおかしい私に、ふふふ、と麻雪さんは柔らかい笑い声をあげた。
0
あなたにおすすめの小説
時間を止めて ~忘れられない元カレは完璧な容姿と天性の才能を持つ世界一残酷な人でした 【完結】
remo
恋愛
どんなに好きになっても、彼は絶対に私を愛さない。
佐倉ここ。
玩具メーカーで働く24歳のOL。
鬼上司・高野雅(がく)に叱責されながら仕事に奔走する中、忘れられない元カレ・常盤千晃(ちあき)に再会。
完璧な容姿と天性の才能を持つ世界一残酷な彼には、悲しい秘密があった。
【完結】ありがとうございました‼
好きな人の好きな人
ぽぽ
恋愛
"私には何年も思い続ける初恋相手がいる。"
初恋相手に対しての執着と愛の重さは日々増していくばかりで、彼の1番近くにいれるの自分が当たり前だった。
恋人関係がなくても、隣にいれるだけで幸せ……。
そう思っていたのに、初恋相手に恋人兼婚約者がいたなんて聞いてません。
皇宮女官小蘭(シャオラン)は溺愛され過ぎて頭を抱えているようです!?
akechi
恋愛
建国して三百年の歴史がある陽蘭(ヤンラン)国。
今年16歳になる小蘭(シャオラン)はとある目的の為、皇宮の女官になる事を決めた。
家族に置き手紙を残して、いざ魑魅魍魎の世界へ足を踏み入れた。
だが、この小蘭という少女には信じられない秘密が隠されていた!?
さんかく片想い ―彼に抱かれるために、抱かれた相手が忘れられない。三角形の恋の行方は?【完結】
remo
恋愛
「めちゃくちゃにして」
雨宮つぼみ(20)は、長年の片想いに決着をつけるため、小湊 創(27)に最後の告白。抱いてほしいと望むも、「初めてはもらえない」と断られてしまう。初めてをなくすため、つぼみは養子の弟・雨宮ななせ(20)と関係を持つが、―――…
【番外編】追加しました。
⁂完結後は『さんかく両想い』に続く予定です。
私が素直になったとき……君の甘過ぎる溺愛が止まらない
朝陽七彩
恋愛
十五年ぶりに君に再開して。
止まっていた時が。
再び、動き出す―――。
*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*
衣川遥稀(いがわ はるき)
好きな人に素直になることができない
松尾聖志(まつお さとし)
イケメンで人気者
*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*
年下男子に追いかけられて極甘求婚されています
あさの紅茶
恋愛
◆結婚破棄され憂さ晴らしのために京都一人旅へ出かけた大野なぎさ(25)
「どいつもこいつもイチャイチャしやがって!ムカつくわー!お前ら全員幸せになりやがれ!」
◆年下幼なじみで今は京都の大学にいる富田潤(20)
「京都案内しようか?今どこ?」
再会した幼なじみである潤は実は子どもの頃からなぎさのことが好きで、このチャンスを逃すまいと猛アプローチをかける。
「俺はもう子供じゃない。俺についてきて、なぎ」
「そんなこと言って、後悔しても知らないよ?」
溺婚
明日葉
恋愛
香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。
以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。
イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。
「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。
何がどうしてこうなった?
平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?
出逢いがしらに恋をして 〜一目惚れした超イケメンが今日から上司になりました〜
泉南佳那
恋愛
高橋ひよりは25歳の会社員。
ある朝、遅刻寸前で乗った会社のエレベーターで見知らぬ男性とふたりになる。
モデルと見まごうほど超美形のその人は、その日、本社から移動してきた
ひよりの上司だった。
彼、宮沢ジュリアーノは29歳。日伊ハーフの気鋭のプロジェクト・マネージャー。
彼に一目惚れしたひよりだが、彼には本社重役の娘で会社で一番の美人、鈴木亜矢美の花婿候補との噂が……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる