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blue.18
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「幼なじみ、なんだってね。イズミくん、あなたのこと、可愛くて仕方ないのね」
「…そんなこと、ないです」
麻雪さんが降り積もったばかりの真っ白な雪だとしたら、私は踏み固められて汚く溶け出した泥まじりの雪だ。
麻雪さんが優しければ優しいほど卑屈になってしまう。
「あなたの姿が見えなくなって、転がったバケツを見つけた時、イズミくん、ものすごく慌ててたわ。あんなに慌ててるイズミくん、初めて見た」
…和泉さん。
すぐに私を見つけてくれてありがとう。
もっと遅かったらと考えると、やっと止まった震えがまた立ち昇ってきてしまう。恐怖で足がすくむ。吐き気が込み上げる。
羽織ったままの和泉さんのスーツの上着を無意識に抱きしめた。
「取材も、…」
「え?」
麻雪さんが独り言のようにつぶやいた。
「取材なんて世界一嫌いなのに、…よっぽど会いたかったのね」
ん?
なんかよく理解できなかった私に向かって麻雪さんはにっこり笑うと、
「本当に、遠慮しなくていいからね。璃乙も居るし」
切り替えるように、優しく私の肩に触れた。
りおと。誰やねん。
小学校低学年くらいの男の子が私を上から下まで二度見する。
眼鏡の奥の理知的な瞳。さらりとなびく髪。
やや痩せぎすに見える肢体。
男の子は私を値踏みした後、その聡明そうな瞳をにっこりさせた。
つられてにっこりすると、
「…おサル」
なんか的確に言い当ててふいっと顔を逸らした。
何このクソガ、…いや、もとい、お子さまは―――っ
「息子の璃乙です。璃乙が笑うなんて、のいちゃん気に入られたね」
麻雪さんがくすくす笑いながら璃乙くんを促してマンションの部屋に上がる。
いや。いやいやいや。
気に入られたとか気に入られないとか、…じゃなくて。
息子って、子どもっ!? 子どもいるの!?
えっ、ホントに子ども!? 子どもいたの!?
全身の力が抜けて、上がり込んだ玄関先にがっくりと座り込んでしまった。
子どもいたのか――――――……
「…まゆき、明日休めるようにしときな。来るから」
「え、そうお? わかったわ」
璃乙くんが大人びた物言いで麻雪さんと話している。
落ち着いた感じとか、物事を深く見通す瞳とか、…似ている気がする。
そうか、和泉さん、子どもいたのか…
仕事上は別姓ってやつか。
そういうことか。
そりゃあまあ、『俺に近づくな』だわな。
そりゃあ、…そうだよね。
お守りみたいに羽織っていた和泉さんのスーツを脱いで丁寧にたたんだ。
もう初夏を感じさせる陽気なのに、…寒くて震えた。
「…そんなこと、ないです」
麻雪さんが降り積もったばかりの真っ白な雪だとしたら、私は踏み固められて汚く溶け出した泥まじりの雪だ。
麻雪さんが優しければ優しいほど卑屈になってしまう。
「あなたの姿が見えなくなって、転がったバケツを見つけた時、イズミくん、ものすごく慌ててたわ。あんなに慌ててるイズミくん、初めて見た」
…和泉さん。
すぐに私を見つけてくれてありがとう。
もっと遅かったらと考えると、やっと止まった震えがまた立ち昇ってきてしまう。恐怖で足がすくむ。吐き気が込み上げる。
羽織ったままの和泉さんのスーツの上着を無意識に抱きしめた。
「取材も、…」
「え?」
麻雪さんが独り言のようにつぶやいた。
「取材なんて世界一嫌いなのに、…よっぽど会いたかったのね」
ん?
なんかよく理解できなかった私に向かって麻雪さんはにっこり笑うと、
「本当に、遠慮しなくていいからね。璃乙も居るし」
切り替えるように、優しく私の肩に触れた。
りおと。誰やねん。
小学校低学年くらいの男の子が私を上から下まで二度見する。
眼鏡の奥の理知的な瞳。さらりとなびく髪。
やや痩せぎすに見える肢体。
男の子は私を値踏みした後、その聡明そうな瞳をにっこりさせた。
つられてにっこりすると、
「…おサル」
なんか的確に言い当ててふいっと顔を逸らした。
何このクソガ、…いや、もとい、お子さまは―――っ
「息子の璃乙です。璃乙が笑うなんて、のいちゃん気に入られたね」
麻雪さんがくすくす笑いながら璃乙くんを促してマンションの部屋に上がる。
いや。いやいやいや。
気に入られたとか気に入られないとか、…じゃなくて。
息子って、子どもっ!? 子どもいるの!?
えっ、ホントに子ども!? 子どもいたの!?
全身の力が抜けて、上がり込んだ玄関先にがっくりと座り込んでしまった。
子どもいたのか――――――……
「…まゆき、明日休めるようにしときな。来るから」
「え、そうお? わかったわ」
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そういうことか。
そりゃあまあ、『俺に近づくな』だわな。
そりゃあ、…そうだよね。
お守りみたいに羽織っていた和泉さんのスーツを脱いで丁寧にたたんだ。
もう初夏を感じさせる陽気なのに、…寒くて震えた。
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