Blue Bird ―初恋の人に再会したのに奔放な同級生が甘すぎるっ‼【完結】

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カタン、という物音がして、思わずびくりと身体を震わせてしまった。

「…のい?」

暗がりの中で、和泉さんの低い声が聞こえた。

和泉さんちのリビングのソファーにお布団を敷いてもらった。
麻雪さんは璃乙くんと寝室に引き上げてしまい、静かなリビングで膝を抱えて座っていた。

「…はい」

深夜をとっくに過ぎている。
和泉さんがこんな時間まで仕事してるのも、私のせい。

「驚かせて悪かった。…眠れないのか」

和泉さんがゆっくり私の方に近づいてくる。
その気配だけで泣きそうになってしまう。

「アイツは支所に異動させる。もう二度とお前には近づかせないから。…心配するな」

和泉さんがソファの前にひざまずいて、私の頭にそっと手を置く。
大きな手。温かい手。
この手は。

「…はい」

別の人のもの。

声が震えないように細心の注意を払って息を吐いた。
泣いたらダメ。心配させてしまう。

「…のい」

暗さに慣れた視界で、和泉さんがその漆黒の瞳を痛そうに細めるのが見えた。

「…一緒に寝るか」

私の髪を撫でた大きな手が、私をそっと引き寄せた。

「は、…え、…は?」

和泉さんはそのまま私を軽々と抱き上げ、リビングを横切る。

「え、…いや、…え?」

目の前で起こっている出来事に頭がついていかない。
和泉さんは隣接する部屋に入り、ベッドの上に私を降ろした。

璃乙くんがいるからか、和泉さんの部屋は独立しているようだ。
モノトーンのインテリアと難しそうな本がずらりと並んだ本棚が目に入る。

乾いた紙の匂い。柔らかい羽毛の感触。
清潔なシーツの肌触り。私を支える力強い腕。

「ま、…麻雪さん、が、…」

どう考えてもこれはアウトだよね。
和泉さんは、あんな事があって私を心配してくれてるだけだろうけど、
いくら何でもこれはアウトだよね。

「…平気だろ」

和泉さんは小首をかしげて考える素振りをしてから、あっさり言い放った。

いや、多分、平気だと思ってるの世界中で和泉さんだけです。
絶対ダメです。こんなの。
こんなの。許されない。

そう思うのに、わかってるのに。

包まれた和泉さんの腕の中が温かくて優しくて安心して。
ずるいのに、泣けてきて、振りほどけなかった。

「のいは、…」

和泉さんが大きな手で私の髪を撫でる。

「…男と寝たことないのか」

えええ―――っ、
なんか速攻バレた―――ってか、モテない認定された―――っ

いたたまれないやら恥ずかしいやら、
もういっぱいいっぱいで逃げようとする私を和泉さんがしっかり抱きしめた。
規則正しい和泉さんの心臓の音が聞こえる。

「…愛しいな」

和泉さんの吐息のようなハスキーボイスが振動と共に伝わり、どうしても涙がにじむ。

ゴミみたいな私のこと、救ってくれてありがとう。
ゴミみたいな私のこと、抱きしめてくれてありがとう。

神様。麻雪さん。ごめんなさい。
今だけ。少しだけ。和泉さんを貸して下さい。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
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