Blue Bird ―初恋の人に再会したのに奔放な同級生が甘すぎるっ‼【完結】

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「ちょっとあんた、研究室から干されたんじゃないでしょうね!?」

広報課に戻ると、早速橙子さんから睨まれた。

「違いますよー。今日は和泉さんが早退しちゃったんです」

まあ、相変わらず研究室では何の役にも立っていないけど。
和泉さんが何か言ってくれたのか、本日の風当たりはあまり強くなかった。

「そうか。それなら良かった」

橙子さんがあからさまにほっとしたような表情を見せた。
…出来の悪い部下でごめんなさい。

「あんたのまとめた資料、よくできてたよ」

こっちを見ないまま、橙子さんがぼそっとつぶやいた。
不意打ちで誉められて、弱った涙腺が刺激されてしまう。

「橙子さ―――んっ」

抱き付こうとしたら、橙子さんがちょうど椅子を引いて立ち上がり、行き場を失くした私は勢い余ってその隣の木下さんに受け止めてもらった。

「…すみません」

「手つなぎ出勤なんて、浮かれてるからじゃないですか」

なんか、ひんやりした空気が流れた。

「…すみません」

まあ確かに、浮かれていたのは事実。だけども。

「和泉碧は、高梨麻雪しか選べませんよ」

木下さんが表情を変えないまま冷たい口調でつぶやいた。

「え、…?」
「さっさとどいてください。のんきな社員さんと違って、こっちは残業できないんですから」

問い返しても、冷たい口調で畳みかけられただけだった。

「…すみません」

すごすごと自席に戻ると、

「あんた、あの和泉さんと手つなぎ出勤!? いつの間にそんなことになってんの―――!?」

興奮した橙子さんに首を絞められたけど、ちょっとそれどころじゃなかった。

木下さん、和泉さんのこと知ってるのかな。
和泉さんの寂し気な微笑みの理由を。

橙子さんの向こうに座る木下さんの横顔を盗み見る。

木下沙良さんは派遣社員さんで勤務中はほとんど無駄話をせず、ひたすら業務をこなして定時に帰る。

美人で仕事が早くて、実はひそかにお近づきになりたかったんだけど、どうもいつも怒られる。

…よし。

「橙子さん、私、今日定時で帰っていいですか」
「…好きにしなよ、リア充め」

隣で橙子さんがぶつぶつ呟いている。

「やっぱり女は隙がないとダメなのか。ドジっ子がいいのか。突っ込んで鼻血か? 鼻血なのか?」
「…落ち着け」

あ。森先輩がしゃべった。

「会議」
「あ、そうだった! 森くん、ありがとっ」

橙子さんが怒涛の勢いで書類をばらまきながら飛んで行った。

その後姿を見つめる森先輩の視線が優しい。
え! これって、…

にやにやしながら森先輩を見ていたら、前から消しゴムが飛んできた。

…照れやさん。
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