Blue Bird ―初恋の人に再会したのに奔放な同級生が甘すぎるっ‼【完結】

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「うん。今、チェックしたから大丈夫。…それで」

麻雪さんはその瞳をかげらせて言いにくそうに私を見た。

「これ、イズミくんの今の研究データ、よね」
「え、…!」

麻雪さんのパソコンの画面を後ろからのぞきこむと、数式とアルファベットとグラフがずらりと並んでいて、もはや何が何だか分からない。
空間図形?…なのか?

「このことはイズミくんには黙っておくわね」
「はあ、…」
「のいちゃんは、もうここには来ない方がいいと思う」

は?
麻雪さんの言っていることがよく理解できなくて、バカみたいに突っ立ったまま麻雪さんを見つめた。

「きっとイズミくん、すごく悲しむから…」

麻雪さんが悲しそうな顔をしているけれど、何がどうなったのかイマイチわからない。

「えっと、それはどういう、…?」
「大丈夫。イズミくんにはうまく言っておくわ」

なんかいつの間にか研究室から追い出されかけていて、そこでふと、過去にこの場所で憎悪の眼差しを向けられたことを思い出した。

「あ、…!」

『その休んでるっていう助手が出てこなきゃそいつじゃねえの』
奏くんの声がよみがえる。

「助手の人…!」
「…横尾くん? しばらく休むって連絡あったみたいだけど」

さっきぶつかったの、その横尾さんて助手の人だ…!

「その人です! そのUSBメモリ、多分その人の、…」

「…うん。分かったわ」

麻雪さんが悲し気な微笑みを浮かべて、そっと研究室のドアを閉めた。

あれ? …なんか追い出された?

閉じられたドアを眺めるも、何の音沙汰もない。

えーっと、つまりどういうことだ。

休んでる助手の横尾さんが、和泉さんの研究データを持って走って出て行った。その人は過去に情報流出した疑いがあって、…

「え!? また和泉さんのデータを持ち逃げしようとしたってこと!?」

つい声が大きくなってしまって自分で自分の口を押さえた。

許せんな、横尾。一度ならずか二度までも。
和泉さんがどんだけ迷惑被っていると思ってるんだ!

ふつふつと怒りが込み上げてきたけれど、

問題のUSBメモリ、落としてったんじゃん。

と思って、ちょっと笑えた。

せっかく忍び込んでもデータがなきゃ意味がない。
詰めが甘いっていうか。…愚か。

なんて。笑っていられたのはその時だけだった。
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