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blue.37

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「楽しそうだな」

サル顔を極めてテーブルに座る3人を威嚇していたら、またもミオちゃんサリちゃんから歓声が上がった。

「和泉さん!」
「王子!」

え。混雑したお昼休みの社食に和泉さん!?
今日の社食、イケメン率高すぎませんか。

「…のい。広報の仕事はどうだ?」

なぜか社食に現れた和泉さんは、一瞬奏くんに目をやってから私に視線を戻し、優しい微笑みを浮かべた。

「あ、…えっと、まあまあです?」

午前中、腑抜けた状態でレイアウトチェックをしていたら、何度か橙子さんから首を絞められたことは黙っておこう。

「広報が忙しくなって残念だな。のいが研究室に居ないと寂しいよ」

え。

「おっ」
「まあ」

…今、自分の妄想声に出しちゃった? え? 現実?
ていうか、私は全然忙しくないですが。

「その研究室、陥れられてばかリみたいだけどな」

隣の奏くんが和泉さんを見ないまま低くつぶやいた。

「…ロンドン新聞の青井。こんなところで何を?」
「あんたんとこの助手、ちゃんと調べたほうがいいですよ。こっちは変な憶測に巻き込まれて迷惑してるんだ」

なんだか和泉さんと奏くんの間に一瞬不穏な空気が流れた。

「…助手か、わかった。調べておく」

でもすぐに、和泉さんが大人の余裕を見せて一歩引き、

「それで、のい、今夜空いてるか」

立ち上がったままの私をのぞき込んだ。

「え、…は、はい」
「良かった。じゃあ後で迎えに行く」

和泉さんは私の頭に優しく手を置いて、

「邪魔して悪かった」
「あ、いいえ、全然」「いつでもどうぞっ」

ミオちゃんサリちゃんに微笑みを投げてから立ち去って行った。

「わー、…和泉王子、近くで見たの初めて」
「人嫌いって有名だもんね。ほとんど研究室から出ないって」
「それが昼の混雑した社食って」
「やったじゃん、猿の惑星」

2人がキャッキャはしゃいでいるのがなんだか遠い世界のことのような気がした。

今夜? 迎えに行く?
のいがいないと寂しい?

和泉さん、何かあったのかな。
やっぱり胸の奥が締め付けられる。

和泉さんの後姿が見えなくなるまで目で追っていたら、またも頭をぺしっと叩かれた。

「…アイツ。キスしてたんじゃねえのか」

ちょっとー、これ以上バカになったらどうしてくれんの。

「お前、ラーメンにしろよ」

奏くんが超絶不機嫌な声でなぜか偉そうに告げる。

「は?」
「今夜食事すんなら、ラーメン以外許さないからな!」

ええー、昼も夜もラーメン?
どんだけラーメン三昧…
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