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blue.38
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「し、…食事はラーメンでお願いしますっ」
わー、奏くんのバカ。
せっかく和泉さんが迎えに来てくれて、都会の街並みが似合うクールでスタイリッシュなデザインの、なんかカッコいい車に乗せてくれたのに。
緊張のあまり、余計なこと言っちゃったじゃんよ。
「…わかった」
でも和泉さんは優しく微笑んで、運転席から伸ばした手で私の頭を撫でた。
「じゃあ、デートの最初はラーメンな」
さらっと頷いて夜の明かりを顔に映しながらハンドルを操作する。
え。…い、今、デートって言った!?
いちいち心臓がバクバクしてしまう。
なんだか今日は予想外の甘いセリフが相次いで、自分の目と耳に自信が持てない。
言った? 言ったよね? 現実だよね?
運転する和泉さんの横顔をガン見していると、
「…あんま見るな。照れる」
和泉さんが前を向いたまま片手で私の両目をふさいだ。
ちょ、…っ
どうした!? なんか、可愛いんですけどっ
自然と笑みが浮かんでしまって、目の前に置かれた和泉さんの大きな手を握りしめると、
「手伝ってくれたお礼をしたいんだ。のいのおかげで次の発表の目途がついた」
和泉さんが優しく握り返してくれた。
ちょっと、涙が出そうになった。
『あおくんは、私に希望をくれた』
和泉さん。使えない私のこと、救ってくれてありがとう。
もし。もしも。万が一。
私に出来ることがあるのなら。
きっと何でもするからね。
「うわぁ、きれい―――っ」
運ばれてきたラーメンを見て、思わず声を上げてしまった。
和泉さんと入ったラーメン屋さんは、こじんまりしたカフェのような佇まいで、空色のテント屋根が張られていた。
店内もカジュアルレストランのような内装で、断然女性客が多い。
店員さんお勧めの「ベジタブルソバ」を注文してみると、色鮮やかなラーメンが運ばれてきてテンションが上がってしまった。
スープにも麺にも野菜が使われていて、トッピングも色とりどりの野菜が乗っている。
美味しいし、ヘルシーだし、やったよ、奏くん!
ラーメン万歳!
なぜか奏くんに勝った気分で、あつあつの麺を口いっぱいに頬張っていると、前に座る和泉さんがすごく優しい顔をして見ていたので、慌てて噛んで飲み込んだ。
そうだ。早食いは封印。
「すごく美味しいですね」
麺は2本ずつ。スープはレンゲで音を立てずに。髪は耳にかけて手で顔を扇ぐ。
行け、のい。やればできる子!
「のい? どうした?」
いや、頑張ってたら麺がのびてきた。
「なんもないっす」
もういいや、どうせあおくんには幼少期のサル丸出しの私を見られてるんだから。
開き直って豪快に頂くことにした。
いくらカッコよく洗練された大人な男の人に成長したと言っても、
「めっちゃ美味しかった!」
「うん。そうだな」
このくらいで幻滅したりしない、…はず。
わー、奏くんのバカ。
せっかく和泉さんが迎えに来てくれて、都会の街並みが似合うクールでスタイリッシュなデザインの、なんかカッコいい車に乗せてくれたのに。
緊張のあまり、余計なこと言っちゃったじゃんよ。
「…わかった」
でも和泉さんは優しく微笑んで、運転席から伸ばした手で私の頭を撫でた。
「じゃあ、デートの最初はラーメンな」
さらっと頷いて夜の明かりを顔に映しながらハンドルを操作する。
え。…い、今、デートって言った!?
いちいち心臓がバクバクしてしまう。
なんだか今日は予想外の甘いセリフが相次いで、自分の目と耳に自信が持てない。
言った? 言ったよね? 現実だよね?
運転する和泉さんの横顔をガン見していると、
「…あんま見るな。照れる」
和泉さんが前を向いたまま片手で私の両目をふさいだ。
ちょ、…っ
どうした!? なんか、可愛いんですけどっ
自然と笑みが浮かんでしまって、目の前に置かれた和泉さんの大きな手を握りしめると、
「手伝ってくれたお礼をしたいんだ。のいのおかげで次の発表の目途がついた」
和泉さんが優しく握り返してくれた。
ちょっと、涙が出そうになった。
『あおくんは、私に希望をくれた』
和泉さん。使えない私のこと、救ってくれてありがとう。
もし。もしも。万が一。
私に出来ることがあるのなら。
きっと何でもするからね。
「うわぁ、きれい―――っ」
運ばれてきたラーメンを見て、思わず声を上げてしまった。
和泉さんと入ったラーメン屋さんは、こじんまりしたカフェのような佇まいで、空色のテント屋根が張られていた。
店内もカジュアルレストランのような内装で、断然女性客が多い。
店員さんお勧めの「ベジタブルソバ」を注文してみると、色鮮やかなラーメンが運ばれてきてテンションが上がってしまった。
スープにも麺にも野菜が使われていて、トッピングも色とりどりの野菜が乗っている。
美味しいし、ヘルシーだし、やったよ、奏くん!
ラーメン万歳!
なぜか奏くんに勝った気分で、あつあつの麺を口いっぱいに頬張っていると、前に座る和泉さんがすごく優しい顔をして見ていたので、慌てて噛んで飲み込んだ。
そうだ。早食いは封印。
「すごく美味しいですね」
麺は2本ずつ。スープはレンゲで音を立てずに。髪は耳にかけて手で顔を扇ぐ。
行け、のい。やればできる子!
「のい? どうした?」
いや、頑張ってたら麺がのびてきた。
「なんもないっす」
もういいや、どうせあおくんには幼少期のサル丸出しの私を見られてるんだから。
開き直って豪快に頂くことにした。
いくらカッコよく洗練された大人な男の人に成長したと言っても、
「めっちゃ美味しかった!」
「うん。そうだな」
このくらいで幻滅したりしない、…はず。
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