Blue Bird ―初恋の人に再会したのに奔放な同級生が甘すぎるっ‼【完結】

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「時々意識も戻っているみたいで、早ければ今日にもICUから出られそうだよ」

「秋く―――――んっ」

爽やかに笑う秋くんにしがみついて泣いてしまった。

良かった。
奏くんがどこにも行かないでくれて。
戻って来てくれて本当に良かった。

「だから大丈夫だって言っただろ。奏くんが俺たちを置いていくわけない」

私を抱きしめてあやしてくれた秋くんの声も少し震えていた。

奏くん。
戻って来てくれてありがとう。
本当にありがとう。

もうどこにも行かないでね。
私を置いていかないでね。

『俺、お前のこと好きだった』

奏くん。
私、奏くんのこと、…

秋くんの清潔感あふれるチェックのシャツをさんざん涙で汚してしまったけれど、秋くんは全然怒らなかった。

「チワワ優しい。意外と肉食だけど…」

安心して思ったことがそのまま口から漏れてしまったらしく、

「両親、さっき面会出来て安心してるから、挨拶しとく? 婚約者だろ」

上から大型チワワににっこり睨み下ろされた。
いや。笑顔なのに目が怖いっていうね…

「ちなみにアメリアは両親公認だから。出遅れてるよ、コザル」

わー、秋くんっ

「肉食チワワってホントのこと言ってごめんなさい―――っ」
「…それ、むしろ強調してるだろ」



夕方過ぎに、また秋くんが病室に来てくれた。

「奏くん、一般病棟に移ったよ」

肉食チワワが女神に見えた。
秋くんが言い終わらないうちにベッドから飛び降りて走り出した。

「うっきゃっき―――っ」

とたんに、秋くんに確保された。

「待て、コザル。病室知らないだろ」

…うっきー。

秋くんに首ねっこをつかまれたまま、大人しく付いていくことにする。

夕食の片付けとか、清掃とか、お見舞いの方々とかで、割と人が多い病院の通路を抜け、エレベーターに乗り込むとなんだか緊張してきた。

奏くんに会える。
奏くんに。

それだけで胸がいっぱいになる。

エレベーターの鏡に映っている自分が、病院の部屋着姿ですっぴんの山ザル丸出しだってことは、見ないことにした。

なんでもいい。
奏くんに会えるなら。

と、思ったけど。

「これ、奏くんの婚約者」

ちょっと待て、チワワ―――――っ

奏くんの病室は完全個室で、通路にも人影がなく、とにかく静かな病棟にあった。
病室の扉も重厚感のある木製で、もはやドキドキ最高潮の私を置いて、秋くんが事もなげに開けるから慌てて後に続いたら、ご両親がいらして、…

目が合って頭を下げた途端、秋くんがしれっと言い放ったのだった。
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