Blue Bird ―初恋の人に再会したのに奔放な同級生が甘すぎるっ‼【完結】

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「このままじゃペルシャにやられちゃうんです――っ! ヤツをかわして会いに行くには今しかないんです―――っ!」

仕方がないので犯行を全面的に自供したところ、結城医師は私を上から下までじっと見て、やや口の端をもたげてから頷いた。

「…確かにペルシャには負けそうだな」

正直過ぎか!

「…分かった。5分だけだぞ」

でも、面会の許可をくれた。さすが美形、わかってらっしゃる。

「ありがとうございます!」

結城医師と親愛の握手を交わして、先生の気が変わらないうちに奏くんの病室まで超高速で駆け込んだ。50M 6’07” コザル部門首位(のい調べ)。

し――――っ

うるさすぎるドアに突っ込んでから、フットライトだけの暗い病室を進む。
暗さに慣れた目に、ベッドに横たわって静かに眠っている奏くんが映った。

奏くん。

胸の奥がぎゅっとする。

薄暗がりに奏くんのきれいな顔が浮かぶ。

柔らかな髪。滑らかな肌。
長いまつ毛。高い鼻。桜色の唇。

そっと手を伸ばすと、規則正しい呼吸の気配を感じて、涙が出た。

奏くん。

もう胸がいっぱいで、静かに手を戻そうとしたら、

「…夜這いか」

寝てるとばかり思っていた奏くんが目を開けて、私の腕をつかんだ。

「か、…なで、…」

私を見つめる奏くんの瞳はやっぱりアース。
宇宙に浮かぶ地球みたいな美しくて不思議な青と淡褐色の瞳。

その瞳をふっと緩ませて、

「よ、…っと」

奏くんが私の腕をつかんだままベッドの上で上体を起こした。

「奏くん!? 動いていいの?」

慌てる私をもう一方の手で軽くはたく。

「バーカ、…」

そのままその手を背中に滑らせて私を抱き寄せると、その胸の中に優しく包み込んでくれた。

「お前が泣いてんのに寝てられるわけないだろ」

病院の糊の利いたシーツの匂い。清々しい若葉の香り。
シャツごしの硬い胸板。感じる体温。伝わる鼓動。
抱きしめてくれる力強い腕。背中を撫でる優しい手のひら。

「だって、…奏くんが、…奏くんが―――――っ…!!」

確かに奏くんがここにいる。
温かく息をして動いて抱きしめてくれる。
私を見て声を聞かせて笑ってくれる。

これ以上幸せなことはないと思った。
世界で一番大切で愛しい奏くんの腕の中。

奏くんが生きていてくれて本当に良かった。

たがが外れたように泣き続けて声も枯れて鼻水も半端ないことになってしまった私を、奏くんは黙ったまま時々背中を撫でながら、ずっと大切そうに抱きしめてくれていた。
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