Blue Bird ―初恋の人に再会したのに奔放な同級生が甘すぎるっ‼【完結】

remo

文字の大きさ
89 / 124

blue.88

しおりを挟む
「はああ。それでプリンス奏は和泉王子を捜す旅に出た、と」
「いやあ、素敵。黒魔王を退治して姫の元に帰ってくる、と」

お久しぶりの社食です。
本日のAランチ定食は、銀だら西京焼きです。うましっ

和泉さんが辞めてしまうという半端ないダメージを被った我が東島建設(株)は、どことなく活気がなかった。

研究所の所長はショックで寝込んでるらしいし、経営陣も和泉さんの穴を埋める人材を探すのに躍起になっているっぽい。

「姫じゃなくてサルでしょうよ」

和泉さんの代わりなんて。
誰にもできないだろうけど。

「ああ、あれね。青い鳥は実は自分のすぐそばにいたっていう」
「猿の惑星は実は未来の地球だったっていう」

しかしながら、ミオちゃんとサリちゃんの容赦なさは本日も健在。

「奏くんの青い鳥は、お父さんのVRだったんだって」

あの日見せてくれたあおくんの魔法は、お父さんが仕事で作っていたVR技術を持ち出したものだったらしい。
実は和泉さんは奏くんのお父さんに影響を受けてVR開発に携わるようになったって言うから、和泉さんのデモンストレーションを見てあおくんだって思ったのも無理はない、よね。

「いやいや、それはダメでしょう。初恋の人間違えるとか」
「そうそう。それは完全にアウトでしょう」

ミオちゃんとサリちゃんに冷たく突き放されて、銀だらがしょっぱい。

「反省したら和泉さんはこっちに回してね」
「そうよそうよ、早く秋の代わりを連れてきて」
「結局そこか、サリ」
「背に腹は代えられぬ」

ミオちゃんとサリちゃんがいつも通りで安心する。

奏くん、ウィンエンターテイメントにお父さんも連れて行くって言ってた。
私も行きたいって言ったら「足手まといだから止めろ」って言われたんだけど。

…大丈夫だよね?

「本宮、お帰り。あんたが作った和泉さんの記事、刊行されたよ」

お昼休みを終えて広報課に戻ると、机の上に社内広報が置かれていた。

「よく出来てるよ」

橙子さんが私の頭をわしわしとかき回して誉めてくれた。

表紙は勿論、和泉さんの憂いを含んだ美顔。

『特集 和泉 碧 Ao Izumi
バーチャルリアリティー界の新星。
今最も話題の若き天才エンジニア。』

和泉さん。
和泉さんが見せてくれたのも、私にとってはやっぱり幸せの青い鳥だった。

今、どこで何をしているんだろう。
今朝出社前に和泉さんのマンションに寄ってみたけど、
応答がなくて、誰もいないみたいだった。
璃乙くんも一緒なんだろうか。

元気でいてくれるならそれだけでいいとも思うけど、
でも、やっぱり、会いたい。

『離すの惜しいな』

こめかみに触れた和泉さんの熱い唇。
和泉さんがいないと寂しい。

「本宮さん、先日はありがとうございました」

定時になると、退社準備を整えた木下さんがやってきた。

「碧さん、見つかりそうですか?」
「うん、…うーん。どうかなぁ…」

奏くんが絶対連れてきてくれるって言ったから、見つけてくれると思うんだけど。

「そういえば、木下さん。ウィンエンターテイメントの地下って行ったことありますか?」

某国の軍事設備があるはずだけど、何も見つからないって言ってた。

「…ありますけど、普通に研究室があるだけですよ」
「絶対立ち入り禁止の部屋とかは?」
「特にありませんでしたけど。…対人兵器の開発研究をしてたって報道を見て、私もびっくりしました。そんな設備、なかったと思うんですよね」

本当は隠し部屋みたいなのがあって、でもVRのバリアを張っていて表向きは何にもないみたいに見えるってことなのかな。

完全に現実との区別がつかない、って、…VRってそこまで進化してるのか。

久々に残業して、森先輩に安定のエナジードリンクを頂いて、忙しそうな橙子さんを見送って、フロアが閑散として、ビルの外が真っ暗になっても、…

奏くんから何の連絡もなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

数合わせから始まる俺様の独占欲

日矩 凛太郎
恋愛
アラサーで仕事一筋、恋愛経験ほぼゼロの浅見結(あさみゆい)。 見た目は地味で控えめ、社内では「婚期遅れのお局」と陰口を叩かれながらも、仕事だけは誰にも負けないと自負していた。 そんな彼女が、ある日突然「合コンに来てよ!」と同僚の女性たちに誘われる。 正直乗り気ではなかったが、数合わせのためと割り切って参加することに。 しかし、その場で出会ったのは、俺様気質で圧倒的な存在感を放つイケメン男性。 彼は浅見をただの数合わせとしてではなく、特別な存在として猛烈にアプローチしてくる。 仕事と恋愛、どちらも慣れていない彼女が、戸惑いながらも少しずつ心を開いていく様子を描いた、アラサー女子のリアルな恋愛模様と成長の物語。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

処理中です...