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blue.90
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地下に降りると急速に暗くなり、非常灯だけが足元を照らした。
徐々に暗闇に慣れた目を凝らすと、
書庫、資料室、倉庫などが通路の左右に並び、ドアには鍵がかけられていた。
いつの間にか武邑さんは暗視装置を装着しており、
入れないドアの向こうの様子をうかがっているようだった。
武邑さんが無言のまま首を振り、地下一階の通路を静かに歩く。
目を凝らし耳をそばだてながら、次々と立ち並ぶ部屋の様子を確認する。
生ぬるい空気。乾燥した埃の匂い。
武邑さんの息遣いがが聞こえるほど静まり返った地下室。
誰かがいる気配はまるで感じられない。
壁やドアに手を触れてみたけれど、これが幻想とはとても思えない。
「下に行ってみよう」
武邑さんに続いて地下二階への階段を降りる。
地下二階は一階よりも天井が低く、地下特有の息苦しさを感じる。
ホール、会議室、研究室、倉庫、…同じように非常灯だけの通路に続いて静まり返った部屋が並ぶ。
武邑さんと確認しながら進むけれど、木下さんが言ったとおり、特に怪しい感じは何もない。
ただ暗いビルの地下というだけ。
なのに、なぜか胸騒ぎがする。
奏くんが退出したなら、連絡がつかないのはおかしい。
GPSがこのビルを指しているのなら、ここにいないのはおかしい。
ずっと壁を触りながら歩いて、一瞬違和感を感じた。
触ると確かに硬さも質感もある壁なのに、ほんの少しだけ熱気を感じる。
それに。ほんのわずかに。
偏頭痛のようなキリキリする感触がある。
「武邑さん、ここに何か、…」
言うと、武邑さんがすぐに近づいてきてくれて注意深く壁を観察し始めた。
「わずかに熱反応がある。この壁はVRなのかもしれない」
手で押しても動かない。確かにそこに存在するように見える。
この壁が、幻影?
武邑さんと一緒に力を込めて壁を押した時、小さな振動を感じた。
え。
「危ない! 早く‼」
即座に反応した武邑さんに手を引かれて、訳も分からず階段を駆け上がった。
駆け上がる途中で、何度か足元から突き上げるような振動を感じた。
バランスが取れない。
自分が走っているからなのか、地面が揺れているからなのかわからない。
一階にたどり着くと、エントランスに向かって走る人影がちらほら見えた。
「地震?」「地震なの?」
不安げな声と共に揺れがひどくなる。
「危ない!」「早く外へ‼」
警備員さんが誘導してくれて、武邑さんと一緒にエントランスから出た直後。
耳をつんざくような轟音と共に、とても立っていられない激しい衝撃を足元に感じ、爆風に吹き飛ばされた。
「爆発だ!」「逃げろ!」「崩れるぞ‼」
あちこちから悲鳴が聞こえる中、武邑さんが私を抱えて跳んだ。
地響き。破裂音。爆風。
立ち込める煙。砂塵。
視界は灰色に覆われて、上から瓦礫が降って来る。
道路に倒れ込んだ武邑さんが私の上に覆いかぶさった。
凄まじい爆音と身体がバラバラになりそうな衝撃に襲われた。
痛い。熱い。苦しい。
息を止めて地面に顔を埋めた。
…奏くん‼
徐々に暗闇に慣れた目を凝らすと、
書庫、資料室、倉庫などが通路の左右に並び、ドアには鍵がかけられていた。
いつの間にか武邑さんは暗視装置を装着しており、
入れないドアの向こうの様子をうかがっているようだった。
武邑さんが無言のまま首を振り、地下一階の通路を静かに歩く。
目を凝らし耳をそばだてながら、次々と立ち並ぶ部屋の様子を確認する。
生ぬるい空気。乾燥した埃の匂い。
武邑さんの息遣いがが聞こえるほど静まり返った地下室。
誰かがいる気配はまるで感じられない。
壁やドアに手を触れてみたけれど、これが幻想とはとても思えない。
「下に行ってみよう」
武邑さんに続いて地下二階への階段を降りる。
地下二階は一階よりも天井が低く、地下特有の息苦しさを感じる。
ホール、会議室、研究室、倉庫、…同じように非常灯だけの通路に続いて静まり返った部屋が並ぶ。
武邑さんと確認しながら進むけれど、木下さんが言ったとおり、特に怪しい感じは何もない。
ただ暗いビルの地下というだけ。
なのに、なぜか胸騒ぎがする。
奏くんが退出したなら、連絡がつかないのはおかしい。
GPSがこのビルを指しているのなら、ここにいないのはおかしい。
ずっと壁を触りながら歩いて、一瞬違和感を感じた。
触ると確かに硬さも質感もある壁なのに、ほんの少しだけ熱気を感じる。
それに。ほんのわずかに。
偏頭痛のようなキリキリする感触がある。
「武邑さん、ここに何か、…」
言うと、武邑さんがすぐに近づいてきてくれて注意深く壁を観察し始めた。
「わずかに熱反応がある。この壁はVRなのかもしれない」
手で押しても動かない。確かにそこに存在するように見える。
この壁が、幻影?
武邑さんと一緒に力を込めて壁を押した時、小さな振動を感じた。
え。
「危ない! 早く‼」
即座に反応した武邑さんに手を引かれて、訳も分からず階段を駆け上がった。
駆け上がる途中で、何度か足元から突き上げるような振動を感じた。
バランスが取れない。
自分が走っているからなのか、地面が揺れているからなのかわからない。
一階にたどり着くと、エントランスに向かって走る人影がちらほら見えた。
「地震?」「地震なの?」
不安げな声と共に揺れがひどくなる。
「危ない!」「早く外へ‼」
警備員さんが誘導してくれて、武邑さんと一緒にエントランスから出た直後。
耳をつんざくような轟音と共に、とても立っていられない激しい衝撃を足元に感じ、爆風に吹き飛ばされた。
「爆発だ!」「逃げろ!」「崩れるぞ‼」
あちこちから悲鳴が聞こえる中、武邑さんが私を抱えて跳んだ。
地響き。破裂音。爆風。
立ち込める煙。砂塵。
視界は灰色に覆われて、上から瓦礫が降って来る。
道路に倒れ込んだ武邑さんが私の上に覆いかぶさった。
凄まじい爆音と身体がバラバラになりそうな衝撃に襲われた。
痛い。熱い。苦しい。
息を止めて地面に顔を埋めた。
…奏くん‼
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