92 / 124
blue.91
しおりを挟む
「…のいちゃん? 大丈夫?」
どのくらい経ったのか、出来る限り身体を縮めて衝撃に耐え、固く目を閉じて爆風と振動が収まるのを待った。
私に覆いかぶさって衝撃から守ってくれた武邑さんが、背中の上で身動きし身体を退かせると暗かった視界が少し開けた。けれど、まだ周囲には灰色の煙が立ち込めている。
頭から砂塵をかぶり、吸い込んでしまったおかげで鼻や口がむずがゆい。
頭を振って砂だらけの顔を袖で拭った。
「ありがとうございます」
武邑さんが起き上がるのに手を貸してくれた。
武邑さんがかばってくれたおかげで身体を動かしても特に痛いところはなかった。
「ひどいな、…」
折れた木やタイルや割れたガラスなど、周りに瓦礫が散乱していた。
ウィンエンターテイメントのビルが一部倒壊し、露出した柱の元に崩れた外壁やコンクリートの山が出来ている。
火の手は見えなかったが、黒い煙がもうもうと上がっている。
突然の飛来物に周辺の道路は大混乱に陥っていた。
消防車と救急車のサイレンが響く。
人々を誘導したりけが人を救出したり瓦礫の下敷きになった人を助け起こしたりする作業が始められていた。
「…地震、じゃないですよね?」
倒壊しているのはウィンエンターテイメントのビルだけだ。
「うん。…ビルの地下で何か激しい爆発が起こったんだと思う」
地下で。激しい爆発。
「…奏くん」
心臓をえぐり取られたような恐怖を感じて、倒壊したビルの瓦礫に駆け寄った。
奏くんは、このビルの地下にいた。
まさかまだ、この中にいる…?
「奏くんっ‼」
「のいちゃん、危ない」
武邑さんに腕をつかまれて阻まれた。
「まだ倒壊の危険がある。近づいちゃダメだ」
そんな。だって、…
武邑さんが悲痛に顔を歪め、
「救助活動に行ってくる。のいちゃんは安全なところに居て」
言い残すと駆けつけた消防と警察の中に合流していった。
足元の地面が抜け落ちたみたいに力が入らなくてその場にへたり込む。
そんな。
奏くんがこの倒壊したビルの下にいるなんて、そんなの嫌だ…‼
どのくらい経ったのか、出来る限り身体を縮めて衝撃に耐え、固く目を閉じて爆風と振動が収まるのを待った。
私に覆いかぶさって衝撃から守ってくれた武邑さんが、背中の上で身動きし身体を退かせると暗かった視界が少し開けた。けれど、まだ周囲には灰色の煙が立ち込めている。
頭から砂塵をかぶり、吸い込んでしまったおかげで鼻や口がむずがゆい。
頭を振って砂だらけの顔を袖で拭った。
「ありがとうございます」
武邑さんが起き上がるのに手を貸してくれた。
武邑さんがかばってくれたおかげで身体を動かしても特に痛いところはなかった。
「ひどいな、…」
折れた木やタイルや割れたガラスなど、周りに瓦礫が散乱していた。
ウィンエンターテイメントのビルが一部倒壊し、露出した柱の元に崩れた外壁やコンクリートの山が出来ている。
火の手は見えなかったが、黒い煙がもうもうと上がっている。
突然の飛来物に周辺の道路は大混乱に陥っていた。
消防車と救急車のサイレンが響く。
人々を誘導したりけが人を救出したり瓦礫の下敷きになった人を助け起こしたりする作業が始められていた。
「…地震、じゃないですよね?」
倒壊しているのはウィンエンターテイメントのビルだけだ。
「うん。…ビルの地下で何か激しい爆発が起こったんだと思う」
地下で。激しい爆発。
「…奏くん」
心臓をえぐり取られたような恐怖を感じて、倒壊したビルの瓦礫に駆け寄った。
奏くんは、このビルの地下にいた。
まさかまだ、この中にいる…?
「奏くんっ‼」
「のいちゃん、危ない」
武邑さんに腕をつかまれて阻まれた。
「まだ倒壊の危険がある。近づいちゃダメだ」
そんな。だって、…
武邑さんが悲痛に顔を歪め、
「救助活動に行ってくる。のいちゃんは安全なところに居て」
言い残すと駆けつけた消防と警察の中に合流していった。
足元の地面が抜け落ちたみたいに力が入らなくてその場にへたり込む。
そんな。
奏くんがこの倒壊したビルの下にいるなんて、そんなの嫌だ…‼
0
あなたにおすすめの小説
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
求婚されても困ります!~One Night Mistake~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「責任は取る。僕と結婚しよう」
隣にイケメンが引っ越してきたと思ったら、新しく赴任してきた課長だった。
歓迎会で女性陣にお酒を飲まされ、彼は撃沈。
お隣さんの私が送っていくことになったんだけど。
鍵を出してくれないもんだから仕方なく家にあげたらば。
……唇を奪われた。
さらにその先も彼は迫ろうとしたものの、あえなく寝落ち。
翌朝、大混乱の課長は誤解していると気づいたものの、昨晩、あれだけ迷惑かけられたのでちょーっとからかってやろうと思ったのが間違いだった。
あろうことか課長は、私に求婚してきたのだ!
香坂麻里恵(26)
内装業SUNH(株)福岡支社第一営業部営業
サバサバした性格で、若干の世話焼き。
女性らしく、が超苦手。
女子社員のグループよりもおじさん社員の方が話があう。
恋愛?しなくていいんじゃない?の、人。
グッズ収集癖ははない、オタク。
×
楠木侑(28)
内装業SUNH(株)福岡支社第一営業部課長
イケメン、エリート。
あからさまにアプローチをかける女性には塩対応。
仕事に厳しくてあまり笑わない。
実は酔うとキス魔?
web小説を読み、アニメ化作品をチェックする、ライトオタク。
人の話をまったく聞かない課長に、いつになったら真実を告げられるのか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる