【完結】君への祈りが届くとき

remo

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Ⅰ.あかり

05.

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「手、…大きい」

鳴瀬が隣に座ることに慣れ始めた放課後、
小指を絡める前に、私の手をつかんだ鳴瀬がつぶやいた。

反射的に手を振り払ってしまった私を、鳴瀬が驚いたように見る。

私は自分の手が嫌い。
大きくて、嫌い。

小さいころからピアノを習っていて、ピアノの先生にはすごくいいことだって言われるけど、いいと思ったことなんて一度もない。

華奢な細い指が欲しかった。
身長も、もっと小さければよかった。
髪も、茶色くて柔らかければよかった。

ミオリみたいに、可愛い女の子が良かった。

鳴瀬の顔を見れない。
唇を噛む。

「俺のが、でかいけど」

鳴瀬が私の手を取る。
私が手を引っ込められないように、ちょっと強引につかむ。

手のひらを合わせてきた。

鳴瀬はすごくきれいな顔立ちなのに、手のひらが大きくて、指は節ばって長い。
比べると、大きいと言われる私の手よりも、もっと大きい。

鳴瀬が包み込むように、指の間に指を絡める。
つないだ手に、力がこめられる。

「お前の手、…安心する」

どうして鳴瀬といると、泣きたくなるんだろう。
どうして鳴瀬の手が、優しいと感じるんだろう。

自分の手が女の子みたいに見えた。

ナンデ、ワタシニ、カマウノ?

知りたくて、知りたくなくて。

隣で寝てるこの人は、気まぐれなんだと思う。
群がる女子がたくさんいて、毎日とっかえひっかえ遊んでいるって聞く。
可愛い身なりの女子たちが、腕にぶら下がっているのを見かける。
誰が彼女かわからないけど、多分、私とは違う世界にいる。

わかっているのに、つないだ手を離せない。

健やかな寝顔の鳴瀬は怖くない。
オレンジの頭も着崩した制服も怖くない。

傷害事件とか心中事件とか、
鳴瀬を取り巻く不穏なうわさは、嘘なんじゃないかと思える。
ただの普通の高校1年生に見える。

馬鹿な私は、自分に触れる鳴瀬の手が、優しいと勘違いして。
今も部活に励んでいるであろう彼氏のことを、忘れる。

はたから見たら、なんて似合わない組み合わせなんだろう。
真面目で融通が効かなくて可愛げのない私は、
大胆に自分を貫いて周りを惹きつける鳴瀬には合わない。

わかっているけど。

「さんきゅ」
少しかすれて甘く響く鳴瀬の声は心地良い。

異空間の特別な時間に。
鳴瀬がくれる魔法の時間に。

あの日、受験票と一緒に捨てた私の心が
不思議と共鳴するのを感じていた。

ずっと優等生と言われ続けて、親や先生の期待に応えてきた私が、
高校受験の日、わざと受験票を捨てて遅刻した。

本当は聖人と同じ特進クラスに入学するはずだったのに、普通クラスになったのは、そんな理由。

でも、2年生になる時に特進クラスに編入すればいいと言われている。
小心者の私の抵抗は、中途半端なまま、終わっていた。
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