【完結】君への祈りが届くとき

remo

文字の大きさ
8 / 75
Ⅰ.あかり

06.

しおりを挟む
「なぁ、あんた、マサトの彼女なんだってな?」
「マサト、猫っ可愛がりしてるらしいじゃん」

その日、図書室にやってきたのは、鳴瀬ではなかった。
見たことのない3年生の男子が3人、背後から私を囲む。

「ちょっとさぁ、俺たちと一緒に来てよ」

嫌な感じの笑い声。
やばいと思って、逃げ出そうと思ったときはすでに遅く、
後ろから口をふさがれて、身体を拘束された。

図書室内に人気はない。
必死にもがく私の抵抗なんて、まるで物ともせず、奥の書庫まで引きずり込まれた。

「怖くないよ~」
「俺たち優しいし~」

背後から口と腕を押さえつけられ、前から足の上に乗りかかられた。
身体を動かすことができず、声も出せない。
必死で首を振ると、髪をつかまれて、一人が至近距離に顔を近づけてきた。

「手間かけさすんじゃねえよ」

身体中を恐怖が駆け巡る。
この人たち、本気だ。

や、だ…!

震えが止まらず、涙がにじむ。

制服のブラウスがボタンごと引きちぎられた。

「きれいな身体してるじゃん」
「けっこう胸あるんだ」
「マサトくんとはどんなふうにヤッてるの~?」

乱暴に胸をつかまれる。
下着がずらされて外気が触れる。

やだ。
やだ、やだ…!

「へ~、可愛いピンク」

男たちが舌なめずりをして、2人がかりで胸に触れる。
ざらついた手の感触に怖気が走る。
吐き気が込み上げるけれど、恐怖で身体が動かない。

「おい、早くして、俺にもやらせろよ」

背後の男が苛立たし気な声を出す。
怖くて悲しくて気持ち悪くて、涙があふれる。
今この瞬間に気を失えたらいいのに。

いっそ、舌を噛み切ろうかと思ったとき、

「うわぁっ!」

突然、身体から男たちの重みが消えた。

涙の膜の向こうに見えたのは、…

「なんだよ、お前!」

先輩たちを容赦なく殴り倒しているオレンジ色の頭。

「お、まえっ、1年のくせに生意気なんだよ!」

狭い書庫に、罵倒と殴り合う音、耳をふさぎたくなるような肉体や骨がぶつかり合う音が響き渡る。

3年生3人を相手に、そのきれいな顔を歪め、冷たく目を光らせて、鳴瀬が足とこぶしを振り回していた。

恐怖に身をすくめ、ただ泣いているだけの無力な私の前に、先輩たちが転がされる。

『傷害事件を起こして中学を転校…』

「こいつ、あれだ!少年院帰りとかいう1年の鳴瀬だよっ」
「くっそ、覚えてろよっ!!」

3年生が書庫に血の跡を残したまま、身体を引きずるようにして図書室を後にした。

それを見送った鳴瀬が、荒い息をつきながら私を見る。
情けなくて恥ずかしくて、消えてなくなりたい。
こんな姿、鳴瀬に見られたくない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

橘若頭と怖がり姫

真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。 その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。 高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。

15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~

深冬 芽以
恋愛
 交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。  2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。  愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。 「その時計、気に入ってるのね」 「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」 『お揃いで』ね?  夫は知らない。  私が知っていることを。  結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?  私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?  今も私を好きですか?  後悔していませんか?  私は今もあなたが好きです。  だから、ずっと、後悔しているの……。  妻になり、強くなった。  母になり、逞しくなった。  だけど、傷つかないわけじゃない。

青春リフレクション

羽月咲羅
青春
16歳までしか生きられない――。 命の期限がある一条蒼月は未来も希望もなく、生きることを諦め、死ぬことを受け入れるしかできずにいた。 そんなある日、一人の少女に出会う。 彼女はいつも当たり前のように側にいて、次第に蒼月の心にも変化が現れる。 でも、その出会いは偶然じゃなく、必然だった…!? 胸きゅんありの切ない恋愛作品、の予定です!

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

優しい雨が降る夜は

葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン 無自覚にモテる地味子に 余裕もなく翻弄されるイケメン 二人の恋は一筋縄ではいかなくて…… 雨降る夜に心に届いた 優しい恋の物語 ⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡ 風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格 雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…

処理中です...