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Ⅲ.あかり
05.
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「帰ってきたんだな」
鳴瀬の姿が見えなくなっても、聖人はその方角を見つめたままだった。
「アイツと付き合うの?」
静かに向けられた目が、街灯と月明かりに揺れている。
聖人を大切だと思うなら、本当のことをちゃんと話したほうがいい。
「聖人。私、鳴瀬のことを失いたくない。とても大切で、そばにいたいと思ってる」
聖人から目をそらさずに、震える声を叱咤して、告げた。
聖人は長い間黙ったままで、夏の湿気を含んだ風がまとわりついて離れていった。
「あかりには合わないよ」
やっと口を開いた聖人は、地面に向かってつぶやいた。
「俺、待ってるから」
顔を上げた聖人は、痛そうに瞳を揺らして、私に手を伸ばしかけ、途中で力を失ったように脇に落とした。
聖人のことも、大切に思ってる。
そう告げたら、もっと聖人を傷つけるような気がして、口に出来なかった。
選ぶということは、何かを捨てるということだろうか。
「あーちゃん、お帰り~。今、聖人さん来てなかった?上がってもらえばよかったのに」
聖人を見送って、家に入ると、ミオリが飛んできた。
「最近、一緒じゃなかったから、何かあったのかって心配してたよ。良かった、元に戻ったんだね」
「ミオ、あのね、…」
鳴瀬のそばにいたいという願いは、もう聖人とはいられないということ。
聖人を傷つけて、ミオリも傷つけるということ。
それでも私は。
もう、鳴瀬を失いたくない。
「聖人とは、もう付き合えないの」
言葉にした瞬間、聖人の優しく触れてくれた手や、キスや、笑顔や、真剣なまなざしが、浮かんで消えた。
「…うそ」
凍りついたようにミオリが部屋に向かう足を止めた。
「…なんで」
振り返ったミオリの眼にみるみる涙が溜まっていった。
私が答えずにいると、
「今朝のことと、関係あるの?あーちゃん、聖人さんのこと、裏切ったの?」
ミオリの瞳から珠のような大粒の涙がこぼれ落ちた。
「あーちゃん、…ひどいよっ」
ミオリが階段を駆け上がって大きな音を立てて部屋のドアを閉めた。
…ひどいって。
そんなこと、わかってる。
「あかり、遅かったじゃない。…何かあったの?」
「ううん、遅くなってごめんなさい」
母の横をすり抜けるようにして2階に上がった。
「ミオ。…ごめんね」
ミオリの部屋に声をかけたけれど、返事はなかった。
部屋に入って、ドアにもたれる。
目を閉じると伸ばしかけて止まった聖人の腕が浮かんだ。
傷つけていることは、わかってる。
それでも、私は。
『…好きだよ』
鳴瀬がいてくれることが奇跡だから。
誰かを好きになったら、イイコでなんか、いられない。
鳴瀬の姿が見えなくなっても、聖人はその方角を見つめたままだった。
「アイツと付き合うの?」
静かに向けられた目が、街灯と月明かりに揺れている。
聖人を大切だと思うなら、本当のことをちゃんと話したほうがいい。
「聖人。私、鳴瀬のことを失いたくない。とても大切で、そばにいたいと思ってる」
聖人から目をそらさずに、震える声を叱咤して、告げた。
聖人は長い間黙ったままで、夏の湿気を含んだ風がまとわりついて離れていった。
「あかりには合わないよ」
やっと口を開いた聖人は、地面に向かってつぶやいた。
「俺、待ってるから」
顔を上げた聖人は、痛そうに瞳を揺らして、私に手を伸ばしかけ、途中で力を失ったように脇に落とした。
聖人のことも、大切に思ってる。
そう告げたら、もっと聖人を傷つけるような気がして、口に出来なかった。
選ぶということは、何かを捨てるということだろうか。
「あーちゃん、お帰り~。今、聖人さん来てなかった?上がってもらえばよかったのに」
聖人を見送って、家に入ると、ミオリが飛んできた。
「最近、一緒じゃなかったから、何かあったのかって心配してたよ。良かった、元に戻ったんだね」
「ミオ、あのね、…」
鳴瀬のそばにいたいという願いは、もう聖人とはいられないということ。
聖人を傷つけて、ミオリも傷つけるということ。
それでも私は。
もう、鳴瀬を失いたくない。
「聖人とは、もう付き合えないの」
言葉にした瞬間、聖人の優しく触れてくれた手や、キスや、笑顔や、真剣なまなざしが、浮かんで消えた。
「…うそ」
凍りついたようにミオリが部屋に向かう足を止めた。
「…なんで」
振り返ったミオリの眼にみるみる涙が溜まっていった。
私が答えずにいると、
「今朝のことと、関係あるの?あーちゃん、聖人さんのこと、裏切ったの?」
ミオリの瞳から珠のような大粒の涙がこぼれ落ちた。
「あーちゃん、…ひどいよっ」
ミオリが階段を駆け上がって大きな音を立てて部屋のドアを閉めた。
…ひどいって。
そんなこと、わかってる。
「あかり、遅かったじゃない。…何かあったの?」
「ううん、遅くなってごめんなさい」
母の横をすり抜けるようにして2階に上がった。
「ミオ。…ごめんね」
ミオリの部屋に声をかけたけれど、返事はなかった。
部屋に入って、ドアにもたれる。
目を閉じると伸ばしかけて止まった聖人の腕が浮かんだ。
傷つけていることは、わかってる。
それでも、私は。
『…好きだよ』
鳴瀬がいてくれることが奇跡だから。
誰かを好きになったら、イイコでなんか、いられない。
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