【完結】君への祈りが届くとき

remo

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Ⅲ.あかり

06.

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「ーーー…俺」

もしもかかって来なければ、かけようと思っていた、電話。
宝物みたいな、鳴瀬の番号。

変わらずに、1:43に電話が震え、耳に届いた鳴瀬の深い声が私を抱きしめてくれた。

「ーーー…うん」

ともすれば、泣いてしまいそうで、結局、変わりばえのしない相槌しか打てなかった。

「あかり」

だけど。
この電話は間違いなく私に宛てられたもので。
そこに円香さんはいなくて。

そのことが。
鳴瀬がささやきみたいに私の名前を呼んでくれることが、
たまらなく嬉しくて。

「鳴瀬が好き」

ずっと、相槌しか打てなかったから、
ずっと、何も伝えられなかったから、
馬鹿みたいに同じ言葉ばかり繰り返してしまう。

電話の向こうから困ったような沈黙が広がり、不安が込み上げた。

迷惑しているのかも。

鳴瀬の家まで押しかけたり。
馬鹿みたいに「好き」を繰り返したり。
泣いたり、して。

「…なるせ」

沈黙に耐えきれなくて鳴瀬を呼んだら、

「…うん。おやすみ、あかり」

優しい声が耳元でささやいた。

通話が切れても、携帯電話を離せなかった。

鳴瀬のこと、知っているわけじゃない。
一緒に過ごしたことも数えるほどしかない。

だけど。
胸が痛くなるくらい鳴瀬でいっぱいになってしまう。

鳴瀬はいつも。
たくさんのことに傷ついている気がする。
孤独の淵に立っているような気がする。

あのきれいな見た目に隠れて、
本当はいつも、泣いているような気がする。

『みんなあいつに惹かれる。みんな、あいつのことばかりだ。
…それでも、あいつはいつも、一人ぼっちみたいな顔してる』

鳴瀬のことが嫌いだと真輝さんは言った。
でも本当は気づいてほしいんじゃないかと思う。

ここにいること。そばにいること。

鳴瀬は。
目を向ければ、そこにあるものに気づかずに、深い闇の中をさまよっているような気がする。

だから、迷惑だとしても。
そばにいたい。

もう、行かないでほしいよ。
一人で行かないで。

鳴瀬を想うと、胸の奥がヒリヒリする。
どうしようもなく、泣きたくなる。

お願いだから。
もう誰にも鳴瀬が傷つけられませんように。

そう願った翌日の学校で、鳴瀬が退学すると噂されていた。

居ても立ってもいられずに、鳴瀬の教室に行ってみたけれど、鳴瀬の姿はなかった。

代わりに、好奇と嫉妬の入り混じったような視線に刺された。

「とんだ優等生だよね」
「取り入っちゃってさ」

聞こえよがしに話す悪意ある声を振り払って、職員室に向かった。

学校は、居心地がいいわけじゃないけれど、鳴瀬に出会えた大切な場所だから。
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