22 / 41
4章.唯一ロンギング
01.
日曜日は朝から上天気だった。
待ち合わせの駅に早めに行ったのに、もう創くんが来ていた。私を待っている創くんを見たら、何だか胸がいっぱいになって、しばらく声をかけられずに眺めてしまった。
高校生の時に、校外学習でテーマパークに行ったことがある。
創くんは引率の先生の一人で、一緒に被り物をしたり、アトラクションに乗ったり、写真を撮ったり、食べ歩いたりしたけれど、あくまで教師と生徒だった。修学旅行にも一緒に行った。同じ飛行機に乗って、マリンブルーの海を見て、史跡を巡ったり、旅館で温泉に入ったり、部屋に遊びに行ったりもしたけれど、あくまで学校行事だった。
「つー? おはよ」
創くんに近づきたかった。幼なじみでも生徒でもなく、
「着いたんなら声かけろよ」
ずっと、1人の女の子としてそばにいきたかった。
私に気づいた創くんが笑顔になって私の方に歩いてきた。前に立つと、私の頭に手をのせて、「行こうか」当たり前みたいに手を取った。
節くれだった男っぽい創くんの指。大きくて力強くて優しい音色を奏でる手。叶音ちゃんを守って叶音ちゃんを愛した跡が今も残る、創くんの手。
「今日は天気良さそうだから、ちょっと遠出しようと思って」
創くんは海が見れて、お散歩、ショッピング、イベント、夜景と贅沢に楽しめるスポットを選んでくれていた。
ずっと、この手が私に伸ばされることを願ってた。
それだけをずっとずっと夢に見ていた。
創くんが振り向いてくれるなら何でもする。創くんのためなら何だってできる。本当に本気でそう思っていた。
『創くんが好きです』
制服最後の写真は、頬に涙の痕がたくさん残っている。
創くんと手をつないだまま電車で桜木町まで揺られた。
海の街を潮風に吹かれながら歩く。
タワーや高層ビル、レンガ造りの歴史的建造物が海に映える。ショッピングモールをフラフラしてみたり、おしゃれなカフェで休憩したり、停泊している大きな船に乗ってみたり、博物館や美術館に立ち寄ったり。69階の展望フロアからは街と海をぐるりと一望出来て、はしゃいでいるうちにあっという間に時間が過ぎた。
保護者でも引率でもなく、恋人の距離で創くんが隣にいる。
中華街で肉まんを食べ歩いて、「歩き疲れたね」と笑った頃にはすっかり陽も落ち、港町の象徴的な観覧車がライトアップされていて、街の夜景がきれいに見えた。
「休憩がてら、乗るか」
観覧車に乗ると、幻想的なイルミネーションと夜の海が美しすぎて、この小さな密空間に創くんと2人だけでいることが夢なんじゃないかと思えてきた。創くん相手にこんな理想のデート、私の脳内が捏造した幻なんじゃないか。
「つぼみ、…」
隣に創くんの気配を感じて、振り返ると唇に創くんを感じた。
「好きだよ」
夢オチなんじゃないかな。
創くんの穏やかに緩んだ瞳にイルミネーションと一緒に私が映っている。
「ずっと、応えられなくてごめん」
創くんの手が頬に触れて、耳を撫でる。
「あいつのことちゃんと消化するまでは、ダメだと思ってた。中途半端な気持ちでお前に手を出すのだけはダメだって」
私を見つめる創くんの瞳がゆらゆら揺れる。
「あの時、ちゃんとお前を受け止めなかったこと、死ぬほど後悔してる。まだダメなんて、…こんなに大事だったのに。失くしてから気付くなんてバカだよな」
一瞬、自嘲気味な笑いを浮かべた創くんは、そのまま髪の間に手を差し入れると、私を引き寄せて胸に強く抱きしめた。
創くんの少し高い体温を感じる。潮風と創くんの匂いが混ざる。
少し速いテンポで動く心臓の音がする。
「つぼみが好きだよ」
創くんの低い声が、奏でるピアノのように少し切ない響きを持って耳に落ちた。
待ち合わせの駅に早めに行ったのに、もう創くんが来ていた。私を待っている創くんを見たら、何だか胸がいっぱいになって、しばらく声をかけられずに眺めてしまった。
高校生の時に、校外学習でテーマパークに行ったことがある。
創くんは引率の先生の一人で、一緒に被り物をしたり、アトラクションに乗ったり、写真を撮ったり、食べ歩いたりしたけれど、あくまで教師と生徒だった。修学旅行にも一緒に行った。同じ飛行機に乗って、マリンブルーの海を見て、史跡を巡ったり、旅館で温泉に入ったり、部屋に遊びに行ったりもしたけれど、あくまで学校行事だった。
「つー? おはよ」
創くんに近づきたかった。幼なじみでも生徒でもなく、
「着いたんなら声かけろよ」
ずっと、1人の女の子としてそばにいきたかった。
私に気づいた創くんが笑顔になって私の方に歩いてきた。前に立つと、私の頭に手をのせて、「行こうか」当たり前みたいに手を取った。
節くれだった男っぽい創くんの指。大きくて力強くて優しい音色を奏でる手。叶音ちゃんを守って叶音ちゃんを愛した跡が今も残る、創くんの手。
「今日は天気良さそうだから、ちょっと遠出しようと思って」
創くんは海が見れて、お散歩、ショッピング、イベント、夜景と贅沢に楽しめるスポットを選んでくれていた。
ずっと、この手が私に伸ばされることを願ってた。
それだけをずっとずっと夢に見ていた。
創くんが振り向いてくれるなら何でもする。創くんのためなら何だってできる。本当に本気でそう思っていた。
『創くんが好きです』
制服最後の写真は、頬に涙の痕がたくさん残っている。
創くんと手をつないだまま電車で桜木町まで揺られた。
海の街を潮風に吹かれながら歩く。
タワーや高層ビル、レンガ造りの歴史的建造物が海に映える。ショッピングモールをフラフラしてみたり、おしゃれなカフェで休憩したり、停泊している大きな船に乗ってみたり、博物館や美術館に立ち寄ったり。69階の展望フロアからは街と海をぐるりと一望出来て、はしゃいでいるうちにあっという間に時間が過ぎた。
保護者でも引率でもなく、恋人の距離で創くんが隣にいる。
中華街で肉まんを食べ歩いて、「歩き疲れたね」と笑った頃にはすっかり陽も落ち、港町の象徴的な観覧車がライトアップされていて、街の夜景がきれいに見えた。
「休憩がてら、乗るか」
観覧車に乗ると、幻想的なイルミネーションと夜の海が美しすぎて、この小さな密空間に創くんと2人だけでいることが夢なんじゃないかと思えてきた。創くん相手にこんな理想のデート、私の脳内が捏造した幻なんじゃないか。
「つぼみ、…」
隣に創くんの気配を感じて、振り返ると唇に創くんを感じた。
「好きだよ」
夢オチなんじゃないかな。
創くんの穏やかに緩んだ瞳にイルミネーションと一緒に私が映っている。
「ずっと、応えられなくてごめん」
創くんの手が頬に触れて、耳を撫でる。
「あいつのことちゃんと消化するまでは、ダメだと思ってた。中途半端な気持ちでお前に手を出すのだけはダメだって」
私を見つめる創くんの瞳がゆらゆら揺れる。
「あの時、ちゃんとお前を受け止めなかったこと、死ぬほど後悔してる。まだダメなんて、…こんなに大事だったのに。失くしてから気付くなんてバカだよな」
一瞬、自嘲気味な笑いを浮かべた創くんは、そのまま髪の間に手を差し入れると、私を引き寄せて胸に強く抱きしめた。
創くんの少し高い体温を感じる。潮風と創くんの匂いが混ざる。
少し速いテンポで動く心臓の音がする。
「つぼみが好きだよ」
創くんの低い声が、奏でるピアノのように少し切ない響きを持って耳に落ちた。
あなたにおすすめの小説
絶交した幼馴染と大学の合コンで再会した。
孤独な蛇
恋愛
中学生の浅野春樹は上級生と喧嘩騒動を起こしたことがあった。
その上、目つきが悪く地毛は茶髪のため不良少年のような扱いを受けて学校では孤立していた。
そんな中、幼馴染の深瀬志穂だけは春樹のことをいつも気遣ってくれていた。
同じ高校に行こうと声を掛けてくれる志穂の言葉に応えたい一心で受験勉強にも力を入れていた。
春樹にとって、学校で孤立していることは問題ではなかった。
昔から志穂が近くにいてくれるから……。
しかし、3年生なってから志穂の態度がよそよそしくなってきた。
登下校も別々になり、学校で話しかけてくることも無くなった。
志穂の心が自分から離れていってしまっている気がした春樹は焦っていた。
彼女と話がしたい。笑った顔が見たい。
志穂と一緒に帰ろうと、彼女が部活動を行っている体育館へ向かったのだが……。
そこで春樹が耳にしたのは、自分の悪口を言って部活の友達と楽しそうにしている志穂の声だった。
その瞬間、春樹の中で志穂に対する想いや信頼は……消滅した。
半年間、俺の妻になれ〜幼馴染CEOのありえない求婚から始まる仮初の溺愛新婚生活〜 崖っぷち元社畜、会社が倒産したら玉の輿に乗りました!?
とろみ
恋愛
出勤したら会社が無くなっていた。
高瀬由衣(たかせゆい)二十七歳。金ナシ、職ナシ、彼氏ナシ。ついでに結婚願望も丸でナシ。
明日までに家賃を用意できなければ更に家も無くなってしまう。でも絶対田舎の実家には帰りたくない!!
そんな崖っぷちの由衣に救いの手を差し伸べたのは、幼なじみで大企業CEOの宮坂直人(みやさかなおと)。
「なぁ、俺と結婚しないか?」
直人は縁談よけのため、由衣に仮初の花嫁役を打診する。その代わりその間の生活費は全て直人が持つという。
便利な仮初の妻が欲しい直人と、金は無いけど東京に居続けたい由衣。
利害の一致から始まった愛のない結婚生活のはずが、気付けばいつの間にか世話焼きで独占欲強めな幼なじみCEOに囲い込まれていて――。
フッてくれてありがとう
nanahi
恋愛
【25th Anniversary CUP】にて、最終ランキング3位に入りました。投票してくださった皆様、読んでくださった皆様、ありがとうございました!
「子どもができたんだ」
ある冬の25日、突然、彼が私に告げた。
「誰の」
私の短い問いにあなたは、しばらく無言だった。
でも私は知っている。
大学生時代の元カノだ。
「じゃあ。元気で」
彼からは謝罪の一言さえなかった。
下を向き、私はひたすら涙を流した。
それから二年後、私は偶然、元彼と再会する。
過去とは全く変わった私と出会って、元彼はふたたび──
たとえ夜が姿を変えても ―過保護な兄の親友は、私を逃がさない―
佐竹りふれ
恋愛
重なる吐息、耳元を掠める熱、そして——兄の親友の、隠しきれない独占欲。
19歳のジャスミンにとって、過保護な兄の親友・セバスチャンは、自分を子供扱いする「第二の兄」のような存在だった。
しかし、初めてのパーティーの夜、その関係は一変する。
突然降ってきた、深く、すべてを奪うような口づけ。
「焦らず、お前のペースで進もう」
そう余裕たっぷりに微笑んだセバスチャン。
けれど、彼の言う「ゆっくり」は、翌朝には早くも崩れ始めていた。
学内の視線、兄の沈黙、そして二人きりのアパート――。
外堀が埋まっていくスピードに戸惑いながらも、ジャスミンは彼が隠し持つ「男」の顔に、抗えない好奇心を抱き始める。
「……どうする? 俺と一緒に、いけないことするか?」
余裕の仮面を被るセバスチャンに、あどけない顔で、けれど大胆に踏み込んでいくジャスミン。
理性を繋ぎ止めようとする彼を、翻弄し、追い詰めていくのは彼女の方で……。
「ゆっくり」なんて、ただの建前。
一度火がついた熱は、誰にも止められない。
兄の親友という境界線を軽々と飛び越え、加速しすぎる二人の溺愛ラブストーリー。
溺婚
明日葉
恋愛
香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。
以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。
イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。
「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。
何がどうしてこうなった?
平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?
仮面王の花嫁
松雪
恋愛
婚約者を腹違いの妹に奪われ、新しい相手も見つからず修道院に行く覚悟を決めたルチア。修道女となるため髪を切った日の夜、王城から「国王がルチアを妻に望んでいる」という書簡を持った使者がやって来た。
しかし、従兄弟であり恋仲だったニールが国王のせいで死に至った過去を持つルチアは、国王からの求婚を喜べずーー。
溺愛のフリから2年後は。
橘しづき
恋愛
岡部愛理は、ぱっと見クールビューティーな女性だが、中身はビールと漫画、ゲームが大好き。恋愛は昔に何度か失敗してから、もうするつもりはない。
そんな愛理には幼馴染がいる。羽柴湊斗は小学校に上がる前から仲がよく、いまだに二人で飲んだりする仲だ。実は2年前から、湊斗と愛理は付き合っていることになっている。親からの圧力などに耐えられず、酔った勢いでついた嘘だった。
でも2年も経てば、今度は結婚を促される。さて、そろそろ偽装恋人も終わりにしなければ、と愛理は思っているのだが……?
【完結】付き合ってもいないのに、幼なじみの佐藤がプロポーズしてきた
ぽぽよ
恋愛
「俺らさ、結婚しない?」
三十二歳、独身同士。
幼なじみの佐藤が、たこ焼きパーティの最中に突然言い出した。
付き合ってもないのに。
夢見てた甘いプロポーズじゃないけれど、佐藤となら居心地いいし、給料もあるし、嫁姑問題もないし、性格も知ってる。
断る理由が、ない。
こうして、交際0日で結婚することが決まった。
「とりあえず同棲すっか」
軽いノリで決まってゆく未来。
ゆるっとだらっと流れていく物語。
※本編は全7話。
※スパダリは一人もいません笑