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屋上は大変な人だかりになっていた。
「ちょっと、どきな。通しなさい!」
その集団を蹴散らして進んでいくマキちゃんの後を、卯月を抱いて着いていく。
鷹峰くんてば、無駄に行動力を発揮しないで欲しい。穂月はなんか浮世離れしてて、現代高校生のやんちゃな喧嘩とかには、全然関わったことなくて、…
「おお、すげ―――――っ!!」「やば、かわしたっ」
何重にも取り巻く観客からは、なんかすごい歓声が上がっていて、試合の応援席みたいに熱狂している。その人垣を押し除けてなんとか進んだ、その先に。
「ちちうえ、…いけめんでござる」
殺陣のように舞う、穂月がいた。
見惚れるほど優雅なのに、一部の隙もない。軽やかに木刀をかわし、間合いを詰め、飛び退る。果敢で、華麗で、目が離せない。生徒たちが熱狂して見入ってしまうのも納得できる。静かに、強い。気迫と緊迫。
「…クソ、参った」
「「「おおお―――――っ」」」
圧巻の剣捌きで、穂月が木刀の切先を倒れ込んだ鷹峰くんの喉元に突きつけ、鷹峰くんは木刀を放り投げて仰向けに寝転んだ。
そうだ、穂月は、本物の太刀を持っていた。
今はうちのクローゼットの奥深くに眠っているけど、精巧な造りで鈍く凄みのある輝きを放つやたら重たい刀剣。
そして、穂月は、無駄なものが一つもない引き締まった身体に、細かい傷跡がたくさん付いていた。本物の戦場で戦うべくして育てられた身体。
鷹峰くん、軽率に過ぎたよ。
穂月は、現代高校生の喧嘩には不慣れだけど、刀剣を扱う得体のしれない侍なんだった、…―――――
「すげー、穂月」「剣道とかやってたの?」「もしくは空手?」「なんか流浪の剣士みたいだった、…!!」「リアル剣心!!」
観客が大盛り上がりで沸き返っている。
「大丈夫か、鷹峰?」
マキちゃんが鷹峰くんに近寄って行ったので、慌てて着いて行った。
「鷹峰くん、大丈夫??」
鷹峰くんは仰向けのまま不貞腐れた顔を向ける。
「…全然。アイツ全部、寸止めだもん」
汗だくで息を切らしてはいるものの、確かに、血や傷の跡はどこにもない。
「あ―――――、カッコ悪っっ! アイツ何者? なえちゃんのなに??」
鷹峰くんが地面にひっくり返ったまま大声で叫んで、不機嫌を隠そうともせず、私の方をじっと見た。
「え、…」
ここぞとばかりに、鷹峰くん以外にも、屋上にいる全員からの注目を感じる。
「えっ、…と、だから、遠い親戚の、…」
「夫婦だ。なえに手を出すな」
我ながら言い訳くさい言い訳を私が答える前に、木刀を携えて鷹峰くんを見下ろしたまま、穂月がきっぱり言い切った。
「え?」「は?」
「「「夫婦~~~~~~っっ???」」」
当然のことながら、屋上に群がっている生徒たちはどよめき、大絶叫が放課後の学校にこだました。
「…ボロ出しまくりじゃん」
マキちゃ―――ん。突っ込みじゃなくてフォローを下さいっっ
「ちょっと、どきな。通しなさい!」
その集団を蹴散らして進んでいくマキちゃんの後を、卯月を抱いて着いていく。
鷹峰くんてば、無駄に行動力を発揮しないで欲しい。穂月はなんか浮世離れしてて、現代高校生のやんちゃな喧嘩とかには、全然関わったことなくて、…
「おお、すげ―――――っ!!」「やば、かわしたっ」
何重にも取り巻く観客からは、なんかすごい歓声が上がっていて、試合の応援席みたいに熱狂している。その人垣を押し除けてなんとか進んだ、その先に。
「ちちうえ、…いけめんでござる」
殺陣のように舞う、穂月がいた。
見惚れるほど優雅なのに、一部の隙もない。軽やかに木刀をかわし、間合いを詰め、飛び退る。果敢で、華麗で、目が離せない。生徒たちが熱狂して見入ってしまうのも納得できる。静かに、強い。気迫と緊迫。
「…クソ、参った」
「「「おおお―――――っ」」」
圧巻の剣捌きで、穂月が木刀の切先を倒れ込んだ鷹峰くんの喉元に突きつけ、鷹峰くんは木刀を放り投げて仰向けに寝転んだ。
そうだ、穂月は、本物の太刀を持っていた。
今はうちのクローゼットの奥深くに眠っているけど、精巧な造りで鈍く凄みのある輝きを放つやたら重たい刀剣。
そして、穂月は、無駄なものが一つもない引き締まった身体に、細かい傷跡がたくさん付いていた。本物の戦場で戦うべくして育てられた身体。
鷹峰くん、軽率に過ぎたよ。
穂月は、現代高校生の喧嘩には不慣れだけど、刀剣を扱う得体のしれない侍なんだった、…―――――
「すげー、穂月」「剣道とかやってたの?」「もしくは空手?」「なんか流浪の剣士みたいだった、…!!」「リアル剣心!!」
観客が大盛り上がりで沸き返っている。
「大丈夫か、鷹峰?」
マキちゃんが鷹峰くんに近寄って行ったので、慌てて着いて行った。
「鷹峰くん、大丈夫??」
鷹峰くんは仰向けのまま不貞腐れた顔を向ける。
「…全然。アイツ全部、寸止めだもん」
汗だくで息を切らしてはいるものの、確かに、血や傷の跡はどこにもない。
「あ―――――、カッコ悪っっ! アイツ何者? なえちゃんのなに??」
鷹峰くんが地面にひっくり返ったまま大声で叫んで、不機嫌を隠そうともせず、私の方をじっと見た。
「え、…」
ここぞとばかりに、鷹峰くん以外にも、屋上にいる全員からの注目を感じる。
「えっ、…と、だから、遠い親戚の、…」
「夫婦だ。なえに手を出すな」
我ながら言い訳くさい言い訳を私が答える前に、木刀を携えて鷹峰くんを見下ろしたまま、穂月がきっぱり言い切った。
「え?」「は?」
「「「夫婦~~~~~~っっ???」」」
当然のことながら、屋上に群がっている生徒たちはどよめき、大絶叫が放課後の学校にこだました。
「…ボロ出しまくりじゃん」
マキちゃ―――ん。突っ込みじゃなくてフォローを下さいっっ
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