50 / 92
iiyori.06
05.
しおりを挟む
「そこにその、なえ様をお連れしたら、晴信様はご自分に対する反逆とお受け取りになるでしょう。実際、家臣の中には晴信様のやり方に不満を持つ者も多く、晴信様はいずれ穂月様が家臣と共謀して反旗を翻すのではないかと疑心暗鬼になっているのです」
なるほど。
中学生に実の母を処刑させるとかお世継ぎを産めとか、晴信最悪って思うけど、その親と全面戦争になったら、穂月の家は二分され、穂月は実の父も、父に付いている家臣たちも討たなきゃならなくなるわけで、出来ればもうこれ以上、穂月につらい殺生をして欲しくない。
「大丈夫だよ、穂月。大根と人参もいい感じに洗えるから」
任せてっと舌を出すと、
「阿呆」
超絶不機嫌な穂月にその舌を引っ張られた。
「いは、…い、むっ、…っ」
そのまま、指先が舌先に変わり、ちょっと怒ったみたいな穂月にめちゃくちゃ奥まで差し入れられて、深く深くかき混ぜられた。絡まる。ほどける。甘い。苦しい。心地良い。響く。弾ける。もっと、…
「穂月様。なえ様を毎夜、穂月様の臥所にお連れするとお約束します。女中としてお城に入られた方が晴信様に目を付けられることもなく、ご正室やご側室からの恨みつらみをも買わず、なえ様も健やかに過ごせるかと」
…やばい。腰抜けた。
穂月の深いキスに息も絶え絶えの私を、穂月はぎゅううっと強く抱きしめた。
「約束だ、鷹朋。なえが来なかったら俺が行く」
「え、それ女中にした意味ないやつ、…」
鷹朋さんがぶつぶつ言うのには構わず、穂月は私を抱きしめたまま、耳に唇を寄せた。
「なえ。お前は俺の妻だ」
「…うん」
「誰が何と言おうとお前だけだ」
「…うん」
穂月の言葉と吐息が私の耳朶を溶かし、身体に沁み込んで細胞を震わせる。
穂月の胸から目を上げると、穂月の怖いくらい強い瞳が真っ直ぐに私を射抜いた。その強さに息が止まりそうになる。
「分かってるのか」
「…うん」
頷いたら、そのまま髪に手を差し入れて引き寄せ、穂月はもう一度私を強く強く抱きしめた。
…穂月。
やっぱり私、穂月を置いてはいけない。
きっと帰る方法を見つけるから、一緒に未来に帰ろう、…
「あの、穂月様。城内では穂月様の居室以外でなえ様に触れることはお控えくださいね。即バレですからね」
「…うるさい」
なんか苦笑している鷹朋さんと、なんとか穂月を説得して、私は鷹朋さんご紹介の女中として志田城で雇ってもらうことになった。
なるほど。
中学生に実の母を処刑させるとかお世継ぎを産めとか、晴信最悪って思うけど、その親と全面戦争になったら、穂月の家は二分され、穂月は実の父も、父に付いている家臣たちも討たなきゃならなくなるわけで、出来ればもうこれ以上、穂月につらい殺生をして欲しくない。
「大丈夫だよ、穂月。大根と人参もいい感じに洗えるから」
任せてっと舌を出すと、
「阿呆」
超絶不機嫌な穂月にその舌を引っ張られた。
「いは、…い、むっ、…っ」
そのまま、指先が舌先に変わり、ちょっと怒ったみたいな穂月にめちゃくちゃ奥まで差し入れられて、深く深くかき混ぜられた。絡まる。ほどける。甘い。苦しい。心地良い。響く。弾ける。もっと、…
「穂月様。なえ様を毎夜、穂月様の臥所にお連れするとお約束します。女中としてお城に入られた方が晴信様に目を付けられることもなく、ご正室やご側室からの恨みつらみをも買わず、なえ様も健やかに過ごせるかと」
…やばい。腰抜けた。
穂月の深いキスに息も絶え絶えの私を、穂月はぎゅううっと強く抱きしめた。
「約束だ、鷹朋。なえが来なかったら俺が行く」
「え、それ女中にした意味ないやつ、…」
鷹朋さんがぶつぶつ言うのには構わず、穂月は私を抱きしめたまま、耳に唇を寄せた。
「なえ。お前は俺の妻だ」
「…うん」
「誰が何と言おうとお前だけだ」
「…うん」
穂月の言葉と吐息が私の耳朶を溶かし、身体に沁み込んで細胞を震わせる。
穂月の胸から目を上げると、穂月の怖いくらい強い瞳が真っ直ぐに私を射抜いた。その強さに息が止まりそうになる。
「分かってるのか」
「…うん」
頷いたら、そのまま髪に手を差し入れて引き寄せ、穂月はもう一度私を強く強く抱きしめた。
…穂月。
やっぱり私、穂月を置いてはいけない。
きっと帰る方法を見つけるから、一緒に未来に帰ろう、…
「あの、穂月様。城内では穂月様の居室以外でなえ様に触れることはお控えくださいね。即バレですからね」
「…うるさい」
なんか苦笑している鷹朋さんと、なんとか穂月を説得して、私は鷹朋さんご紹介の女中として志田城で雇ってもらうことになった。
0
あなたにおすすめの小説
「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」
透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。
そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。
最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。
仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕!
---
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
理想の男性(ヒト)は、お祖父さま
たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。
そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室?
王太子はまったく好みじゃない。
彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。
彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。
そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった!
彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。
そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。
恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。
この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?
◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。
本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。
R-Kingdom_1
他サイトでも掲載しています。
灰かぶりの姉
吉野 那生
恋愛
父の死後、母が連れてきたのは優しそうな男性と可愛い女の子だった。
「今日からあなたのお父さんと妹だよ」
そう言われたあの日から…。
* * *
『ソツのない彼氏とスキのない彼女』のスピンオフ。
国枝 那月×野口 航平の過去編です。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる