73 / 92
iiyori.09
01.
しおりを挟む
す、…すごいっ。これが浮遊霊。
いや、この風に飛ばされそうな感じ。バンバン風を浴びてる実感。これが実体浮遊というやつか。
え、すごい。かなりすごい。
初めて自分の身体だけで空に浮いてしまって、もはやすごいしか出てこない。足元に何もなく空をふわふわ漂う感じは、若干の恐怖を伴うものの、不思議で爽快。泳ぐように空を切って移動したり、高低を変えることも出来る。魂と実体の繋がりとか、時間と空間の関係とか難しいことは分からないけど、…便利だ。
三姫はこの便利な能力を一人で堪能していたのか。
ていうか、こんなことが出来るのは、つまり、三姫の中に過去に飛ばされた三宮さんの霊魂が入ってるってことなのか、…??
果てなく続く城下町を眺めながら、実体浮遊に成功した興奮と喜びを嚙みしめ、あっちこっち思うままに漂って浮遊のコツをつかみ、
よし、穂月に会いに行こう。
と、決意した。
地理関係が全く分からないけど、上空に浮遊しながら、眼下を見下ろし、大体の見当をつけて移動する。上空を浮遊すると移動が速い。城下に続く森や山を越え、谷を渡ると、戦の陣営が張られているのが見えた。恐らくあの谷が陣の谷で、志田の連合軍と羽間の合同軍が対峙している。ということは、向こうの羽間の陣営の中に穂月がいるってことかな?
下降してみると、羽間軍の陣営には数多くの天幕が張られ、幕の上には家紋のような旗がはためいて、所々にかがり火が焚かれ、見張りの兵士がずらりと列を成している。
「ん? 空から何かっ!」
「敵襲か!?」
天幕の大きさに身分が表れているとしたら、穂月は比較的大きめの幕の中にいるんじゃないかと近づいて探していると、火の明かりに照らし出されてしまったのか、敵兵に気づかれ、矢を射かけられ、飛んできた矢が着物の肩口をかすめた。
やっば、…っ
慌てたら方向感覚を失ってしまい、頭と足が逆さまになりながら、空中をぐるぐる回転する。
「何やつっ!?」
「鳥か!?」「妖怪か!?」
「いや、人だっ」「敵の空中作戦だっ」
「一斉射撃、用意っ」
「射よっ!!」
やばいやばい。
訓練された軍隊に敵と認定され、瞬く間につがえられた矢が、次々に放たれる。凄まじい数の矢が空中に飛んできて、恐ろしく至近距離をひゅんひゅん矢がかすめていく。
やばいて――――――っ
よけなきゃ当たるし、当たったら落ちるし、やばいのは分かるのに、パニックでどう動いていいか分からず、慣れない浮遊で無駄に空中をぐるぐる回るばかり。
「い、…っ!!」
痛い――――――っっ
「よし、当たったっ!!」「こっちだ、落ちるぞっ!!」
なんか太もも辺りに飛んできた矢が刺さり、ものすごい痛みと衝撃に頭が真っ白になった。無駄に回っていた空中回転が止まり、地面に急降下していく。
穂月ぃいいい~~~~~っ、どこ―――――――――っ
こんなところで訳の分からん女が敵軍に捕まったら、犯されるか殺されるか絶対ろくな目に遭わない。迂闊に敵陣に近づいた己の浅はかさを呪いながら、地面に叩きつけられる瞬間を覚悟して目を瞑った。
いや、この風に飛ばされそうな感じ。バンバン風を浴びてる実感。これが実体浮遊というやつか。
え、すごい。かなりすごい。
初めて自分の身体だけで空に浮いてしまって、もはやすごいしか出てこない。足元に何もなく空をふわふわ漂う感じは、若干の恐怖を伴うものの、不思議で爽快。泳ぐように空を切って移動したり、高低を変えることも出来る。魂と実体の繋がりとか、時間と空間の関係とか難しいことは分からないけど、…便利だ。
三姫はこの便利な能力を一人で堪能していたのか。
ていうか、こんなことが出来るのは、つまり、三姫の中に過去に飛ばされた三宮さんの霊魂が入ってるってことなのか、…??
果てなく続く城下町を眺めながら、実体浮遊に成功した興奮と喜びを嚙みしめ、あっちこっち思うままに漂って浮遊のコツをつかみ、
よし、穂月に会いに行こう。
と、決意した。
地理関係が全く分からないけど、上空に浮遊しながら、眼下を見下ろし、大体の見当をつけて移動する。上空を浮遊すると移動が速い。城下に続く森や山を越え、谷を渡ると、戦の陣営が張られているのが見えた。恐らくあの谷が陣の谷で、志田の連合軍と羽間の合同軍が対峙している。ということは、向こうの羽間の陣営の中に穂月がいるってことかな?
下降してみると、羽間軍の陣営には数多くの天幕が張られ、幕の上には家紋のような旗がはためいて、所々にかがり火が焚かれ、見張りの兵士がずらりと列を成している。
「ん? 空から何かっ!」
「敵襲か!?」
天幕の大きさに身分が表れているとしたら、穂月は比較的大きめの幕の中にいるんじゃないかと近づいて探していると、火の明かりに照らし出されてしまったのか、敵兵に気づかれ、矢を射かけられ、飛んできた矢が着物の肩口をかすめた。
やっば、…っ
慌てたら方向感覚を失ってしまい、頭と足が逆さまになりながら、空中をぐるぐる回転する。
「何やつっ!?」
「鳥か!?」「妖怪か!?」
「いや、人だっ」「敵の空中作戦だっ」
「一斉射撃、用意っ」
「射よっ!!」
やばいやばい。
訓練された軍隊に敵と認定され、瞬く間につがえられた矢が、次々に放たれる。凄まじい数の矢が空中に飛んできて、恐ろしく至近距離をひゅんひゅん矢がかすめていく。
やばいて――――――っ
よけなきゃ当たるし、当たったら落ちるし、やばいのは分かるのに、パニックでどう動いていいか分からず、慣れない浮遊で無駄に空中をぐるぐる回るばかり。
「い、…っ!!」
痛い――――――っっ
「よし、当たったっ!!」「こっちだ、落ちるぞっ!!」
なんか太もも辺りに飛んできた矢が刺さり、ものすごい痛みと衝撃に頭が真っ白になった。無駄に回っていた空中回転が止まり、地面に急降下していく。
穂月ぃいいい~~~~~っ、どこ―――――――――っ
こんなところで訳の分からん女が敵軍に捕まったら、犯されるか殺されるか絶対ろくな目に遭わない。迂闊に敵陣に近づいた己の浅はかさを呪いながら、地面に叩きつけられる瞬間を覚悟して目を瞑った。
0
あなたにおすすめの小説
「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」
透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。
そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。
最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。
仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕!
---
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
理想の男性(ヒト)は、お祖父さま
たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。
そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室?
王太子はまったく好みじゃない。
彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。
彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。
そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった!
彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。
そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。
恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。
この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?
◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。
本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。
R-Kingdom_1
他サイトでも掲載しています。
灰かぶりの姉
吉野 那生
恋愛
父の死後、母が連れてきたのは優しそうな男性と可愛い女の子だった。
「今日からあなたのお父さんと妹だよ」
そう言われたあの日から…。
* * *
『ソツのない彼氏とスキのない彼女』のスピンオフ。
国枝 那月×野口 航平の過去編です。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる