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iiyori.10
04.
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「え―――っと。感動の再会シーンに水を差して悪いんだけど。菜苗、5分くらい寝てただけだからね」
「正確には4分23秒。三宮さんもほぼ同時間で目覚めました」
頼れる養護教諭の真木鈴華ことマキちゃんと、教え子の女子生徒・坂下沙里さんが、私たちの運命の再会に容赦なく割り込み、
「つまり菜苗は刺されて寝てた5分くらいの間に、過去の記憶を取り戻してきたってこと?」
「過去というか、前世の記憶みたいなものですかね?」
取っ散らかったままの状況整理に乗り出した。
「え、私、寝てたの??」
「そらもうぐっすりと」
「ていうか、5分??」
「4分23秒です」
「早くない???」
ちょっと待ってよ。
都切丸で刺されて飛ばされた霊魂で体験してきた、穂月となえの戦国一大絵巻物語はそんな夢オチみたいな軽々しい感じなの??
「マ、…マキちゃんがおマキさんで、鷹峰くんが鷹朋さんで、雪だるまマモルが本物の達磨だったっていうのに??」
この時を超えたミラクル感とか、内から湧き上がる得も言われぬ感動は、私の一人芝居だっての??
「時切丸が見せた残像かもしれぬな」
多分結構ショックな顔をしていたんであろう、私を慰めるように穂月が背中をポンポン撫でた。
そうだよ、みんな。命がけの時空飛行を居眠り扱いして、温度差がひどいよ。
でも、穂月だけは感動を分かち合ってくれてる気がする。
穂月は過去の記憶を持ったまま時空を超えてきたからなのかな? だとしたら、最初に再開した時、感極まった感じの穂月を頭がおかしい扱いして警察呼ぼうとした私って、…最低じゃん。
「まあ、確かに」「不思議な刀だったね」
「不思議というか不気味」「消えちゃったもんね」
穂月の言葉にマキちゃんと坂下さん、そして、ぼんやりと放心状態の三宮さんをかかえている鷹峰くんも同意した。
「時切丸、消えたの?」
言われてみれば、刺されたはずの胸は全く痛くないし、傷跡もないし、刀自体もどこにもない。
「こう、吸い込まれるようにね」
「確かに刺さった気がしたけどね」
そうか。
私と三宮さんの霊魂は時切丸と一緒に時空を超えたんだ。向こうでの時間の流れとこっちでの時間の流れは違うのかもしれない。そもそも時空を切断するなんて、自分が経験しなきゃ信じられない。
「あの、…あたし、何を?」
何だか不思議な感慨に呆然としていたら、同じくぼんやりとしていた三宮さんが鷹峰くんの膝から降りて辺りを見回した。
「あなたはそこにいるちんけな年増を『偽物』扱いして刀で刺した後、気を失って倒れてたの」
もはや懐かしい響きですらある。ちんけな年増。
いや、マキちゃん。そこは「寝てた」で統一しようよ。
「偽物、…?」
小首を傾げる三宮さんには確かに三姫の面影がある。
魂が抜けるほど穂月に焦がれて、でも最終的には納得して晴信と行った三姫。穂月を思う気持ちは、本物に違いない。
「我こそが、穂月の運命の『なえ』で、そこでイチャイチャしているなえちゃんセンセ―は偽物だって」
鷹峰くんのイチャイチャに若干の非難を感じる。
穂月独裁の志田城とは違って、ここは健全な学び舎でしたね、…
「なえ? …あたし、恵奈、だけど」
三宮さんが長いまつ毛を瞬かせて、眩しそうに穂月を見つめた。
「は?」「え?」「なっ?」
誰もが固まる中、鷹峰くんが吹いた口笛に乗って、
「桜百合学園高校1年、三宮恵奈、16歳。好きな言葉は『顔がよければすべてよし』です」
三宮恵奈さんがにっこり笑う。
あんた、なえ、ちゃうやんけ――――――っ
「正確には4分23秒。三宮さんもほぼ同時間で目覚めました」
頼れる養護教諭の真木鈴華ことマキちゃんと、教え子の女子生徒・坂下沙里さんが、私たちの運命の再会に容赦なく割り込み、
「つまり菜苗は刺されて寝てた5分くらいの間に、過去の記憶を取り戻してきたってこと?」
「過去というか、前世の記憶みたいなものですかね?」
取っ散らかったままの状況整理に乗り出した。
「え、私、寝てたの??」
「そらもうぐっすりと」
「ていうか、5分??」
「4分23秒です」
「早くない???」
ちょっと待ってよ。
都切丸で刺されて飛ばされた霊魂で体験してきた、穂月となえの戦国一大絵巻物語はそんな夢オチみたいな軽々しい感じなの??
「マ、…マキちゃんがおマキさんで、鷹峰くんが鷹朋さんで、雪だるまマモルが本物の達磨だったっていうのに??」
この時を超えたミラクル感とか、内から湧き上がる得も言われぬ感動は、私の一人芝居だっての??
「時切丸が見せた残像かもしれぬな」
多分結構ショックな顔をしていたんであろう、私を慰めるように穂月が背中をポンポン撫でた。
そうだよ、みんな。命がけの時空飛行を居眠り扱いして、温度差がひどいよ。
でも、穂月だけは感動を分かち合ってくれてる気がする。
穂月は過去の記憶を持ったまま時空を超えてきたからなのかな? だとしたら、最初に再開した時、感極まった感じの穂月を頭がおかしい扱いして警察呼ぼうとした私って、…最低じゃん。
「まあ、確かに」「不思議な刀だったね」
「不思議というか不気味」「消えちゃったもんね」
穂月の言葉にマキちゃんと坂下さん、そして、ぼんやりと放心状態の三宮さんをかかえている鷹峰くんも同意した。
「時切丸、消えたの?」
言われてみれば、刺されたはずの胸は全く痛くないし、傷跡もないし、刀自体もどこにもない。
「こう、吸い込まれるようにね」
「確かに刺さった気がしたけどね」
そうか。
私と三宮さんの霊魂は時切丸と一緒に時空を超えたんだ。向こうでの時間の流れとこっちでの時間の流れは違うのかもしれない。そもそも時空を切断するなんて、自分が経験しなきゃ信じられない。
「あの、…あたし、何を?」
何だか不思議な感慨に呆然としていたら、同じくぼんやりとしていた三宮さんが鷹峰くんの膝から降りて辺りを見回した。
「あなたはそこにいるちんけな年増を『偽物』扱いして刀で刺した後、気を失って倒れてたの」
もはや懐かしい響きですらある。ちんけな年増。
いや、マキちゃん。そこは「寝てた」で統一しようよ。
「偽物、…?」
小首を傾げる三宮さんには確かに三姫の面影がある。
魂が抜けるほど穂月に焦がれて、でも最終的には納得して晴信と行った三姫。穂月を思う気持ちは、本物に違いない。
「我こそが、穂月の運命の『なえ』で、そこでイチャイチャしているなえちゃんセンセ―は偽物だって」
鷹峰くんのイチャイチャに若干の非難を感じる。
穂月独裁の志田城とは違って、ここは健全な学び舎でしたね、…
「なえ? …あたし、恵奈、だけど」
三宮さんが長いまつ毛を瞬かせて、眩しそうに穂月を見つめた。
「は?」「え?」「なっ?」
誰もが固まる中、鷹峰くんが吹いた口笛に乗って、
「桜百合学園高校1年、三宮恵奈、16歳。好きな言葉は『顔がよければすべてよし』です」
三宮恵奈さんがにっこり笑う。
あんた、なえ、ちゃうやんけ――――――っ
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