戦国男子高校生に言い寄られてます!?【完結】

remo

文字の大きさ
86 / 92
iiyori.10

05.

しおりを挟む
「『脱ぎ置く衣を形見と見給へ。月の出でたらむ夜は、見おこせ給へ。
見捨て奉りてまかる、空よりも落ちぬべき心地する。』

(脱ぎ置く着物を形見と御覧下さい。月が出るような夜は、こちらをご覧下さい。
お見捨て申しあげて参りますのは、空からも落ちてしまいそうな気持ちがします。)

かっ、…かぐや姫、切な~~~~~っ」

戦国時代で命がけの逃避行を繰り広げたような気がするのも夢のまた夢。

現代に戻った実感を噛みしめる間もなく、非情にも次の授業が始まるチャイムが鳴り響き、マキちゃんに「職務を全うしろ」と、保健室から放り出されて、3時間目の教壇に立っている、わけだけど。

かぐや姫が切な過ぎて泣ける。

大切な人を置き去りにしなきゃならなくて、しかも、それを忘れちゃうっていう。なんてっ、…なんて悲しいお別れなんだろう、…っっ

私は戦国に穂月のことを置いてきた挙句、穂月のことを忘れてしまった。

でも、穂月は会いに来てくれた。

これって、竹取の翁が月にジャンプアップしてかぐや姫に会いに行くくらいの奇跡じゃん。

なんて、なんてアメ――――ジング!!

教卓に突っ伏して号泣している私を見る教室生徒の目は冷ややかだ。

「…ねえ、今日実践問題集解くんじゃないの?」
「なんで急に竹取物語??」「なんで号泣??」

うちの可愛いピュアボーイズ&ガールズたちもこの若さで悲しいお別れや奇跡の恋を経験したりしてるんだろうか。

「ううう、…別れって辛いよね、…みんな大人ね」

更に涙に暮れていると、

「なえちゃんセンセ―、振られたの?」
「隠し子の志田穂月に?」
「メオトっていう名の叔母と甥の関係って聞いたけど」
「ホントはこっそりさらってきた隠し子で」
「超絶美人で可愛い恋人が奪い返しに来たんでしょ??」

生徒たちが口々に私と穂月の関係を追及し始めた。

…うん。取っ散らかってるな。
自業自得とはいえ、穂月との関係を適当に誤魔化してきたから、すっかり明後日の方向に転がってるわ。

「…振られてません。超絶美人の女の子は間違ってこの学校に来ちゃっただけで、今ちゃんと送り届けてます」

結論から言って、三宮恵奈さんは、何も覚えていなかった。

穂月のことも。なえのことも。
戦国の世で共に過ごしたと言っていたことも。
証明するために私を時切丸で刺したことも。

「こんなカッコイイ人、見たら絶対忘れないし」

三宮さんが穂月を見つめる目には、新たに強烈なロマンスの芽生えを感じさせたけど、ともかくも、どうして自分が他校の保健室にいたのかさえよく分からないようだった。

「時切丸に憑かれていたのかもしれぬな」

思いを断つために、私も三宮さんも時切丸に呼ばれたのかもしれない。
三姫の思いが浄化されたから、私たちは元に戻されたのかもしれない。

本当のところは、よく分からないけど、

「怖いんで、家まで送って欲しいな」

と、穂月に擦り寄る三宮さんを、デキる養護教諭のマキちゃんが今頃ばっちり送り届けてくれている、はず。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」

透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。 そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。 最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。 仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕! ---

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

理想の男性(ヒト)は、お祖父さま

たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。 そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室? 王太子はまったく好みじゃない。 彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。 彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。 そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった! 彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。 そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。 恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。 この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?  ◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。 本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。 R-Kingdom_1 他サイトでも掲載しています。

灰かぶりの姉

吉野 那生
恋愛
父の死後、母が連れてきたのは優しそうな男性と可愛い女の子だった。 「今日からあなたのお父さんと妹だよ」 そう言われたあの日から…。 * * * 『ソツのない彼氏とスキのない彼女』のスピンオフ。 国枝 那月×野口 航平の過去編です。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...