70 / 98
番外編.My sunshine *澪 21歳
あなたがいないと、世界が曇る。④
しおりを挟む
「黎の好きな子が、誤解しちゃうよ?」
子どものパパ役も買って出てくれたので、
あまりにも申し訳なくてそれを止めたら、黎は少しだけ寂しそうに笑った。
「ちょうどいいんだよ。俺、ちゃんと付き合えないし、キスできないしな」
黎はそりゃあモテていて、山のように女の子たちが寄ってきていたけれど、
誰とも真剣に付き合っていないようだった。
その理由は聞かなかったけど、高校生の時に初めてしたデザインに関係があるような気がする。
どんなに請われても商品化しない、幻のデザインと言われているあの図案を、黎は今も大切に持っている。
本当の父親の名前を一字もらって「斗哉」と名付けた子どもは、
黎に愛されてすくすく育った。
黎のミニチュアみたいで、生意気で可愛くて、黎みたいな大人になってほしい、と思う。
あれから、先生には一度も会っていない。
「…会いたい?」
連絡を絶って、それまでの人間関係を全て切ったのに、先生は黎の元に行き着いたらしい。
「会いたいなら、…」
黎に聞かれたけど、首を横に振った。
『…鳥濱優斗議員、初入閣。地元や幅広い世代から圧倒的な支持を受ける優斗議員は、第2次内閣改造の目玉として国民の期待が高まっています』
もう、二度と会わなくていい。
健康で、仕事と家庭を大切にして、あの少年みたいな瞳をずっと持ち続けていてほしい。
先生には感謝しかない。
あの時、私の孤独を埋めてくれたのは確かに先生だった。
黎のデザイン事務所を手伝いながら、日々穏やかに、斗哉と静かに暮らしていた私の前に、
「澪っ‼ 待たせてごめん。結婚しよっ‼」
5年ぶりに、唐突に瑛多が現れた。
再会の第一声がそれ。
相変わらず快活でバカで笑顔で。
私を泣かせる、私の太陽。
「一人にしてごめんな。外国チームとの契約が終わって、日本のチームと契約したから。もう俺、ちゃんと澪を支えられるから」
何にも変わっていない。
私は罪を犯して汚れ切って、違う男の子どもがいるのに。
「澪はずっと俺の世界一だよ。何があっても変わらない。澪が好きだよ。澪だけが好きだよ」
瑛多は私の過去を探ろうとはしなかった。
私に幻滅した風でもなく、斗哉の存在もあっさり受け入れた。
「斗哉、俺、お前のお父さんになっていい?」
「パパのがカッコイイ。パパのがセンスもイイ」
斗哉は、気に入った人にはなぜか物言いが辛らつになる。
「ダサおじ?」
「お前――っ、ちっちゃい黎みたいな顔して可愛すぎるだろう‼」
笑顔で抱きしめる瑛多に斗哉はすんなり懐いた。
太陽みたいに温かい瑛多を拒める人なんていない。
いないけど、…
「俺、引っ越すから。瑛多と仲良くな」
私が自分を許せなくて瑛多に素直になれないのに、黎がさっさとマンションを出て行ってしまった。
私、ずるすぎる。
黎にも瑛多にも迷惑しかかけてない。
「俺、澪なら何でもいいから。一緒にいよ? もう、絶対置いて行ったりしないから」
私がぐずぐずしているうちに、瑛多はどんどん私の中に入ってきて、
悩みや迷いを明るく照らす。
「えーた、パパよりかっこよくないからダメなんじゃない?」
「黎かぁ~。お前、そんな奴、この世にいないべ?」
「ボクはえーたでもいいけど」
「斗哉は素直でいい子だなっ」
楽しそうな瑛多と斗哉を見ていると、その優しさに甘えたくなる。
もしも許されるなら、瑛多の手を取りたくなる。
「…もう。自分を許してあげたら」
黎が本当に取り持ってくれて、今では両親も斗哉を可愛がってくれている。
私だけがこんなに幸せで、やっぱりずるい気がするんだけど、…
子どものパパ役も買って出てくれたので、
あまりにも申し訳なくてそれを止めたら、黎は少しだけ寂しそうに笑った。
「ちょうどいいんだよ。俺、ちゃんと付き合えないし、キスできないしな」
黎はそりゃあモテていて、山のように女の子たちが寄ってきていたけれど、
誰とも真剣に付き合っていないようだった。
その理由は聞かなかったけど、高校生の時に初めてしたデザインに関係があるような気がする。
どんなに請われても商品化しない、幻のデザインと言われているあの図案を、黎は今も大切に持っている。
本当の父親の名前を一字もらって「斗哉」と名付けた子どもは、
黎に愛されてすくすく育った。
黎のミニチュアみたいで、生意気で可愛くて、黎みたいな大人になってほしい、と思う。
あれから、先生には一度も会っていない。
「…会いたい?」
連絡を絶って、それまでの人間関係を全て切ったのに、先生は黎の元に行き着いたらしい。
「会いたいなら、…」
黎に聞かれたけど、首を横に振った。
『…鳥濱優斗議員、初入閣。地元や幅広い世代から圧倒的な支持を受ける優斗議員は、第2次内閣改造の目玉として国民の期待が高まっています』
もう、二度と会わなくていい。
健康で、仕事と家庭を大切にして、あの少年みたいな瞳をずっと持ち続けていてほしい。
先生には感謝しかない。
あの時、私の孤独を埋めてくれたのは確かに先生だった。
黎のデザイン事務所を手伝いながら、日々穏やかに、斗哉と静かに暮らしていた私の前に、
「澪っ‼ 待たせてごめん。結婚しよっ‼」
5年ぶりに、唐突に瑛多が現れた。
再会の第一声がそれ。
相変わらず快活でバカで笑顔で。
私を泣かせる、私の太陽。
「一人にしてごめんな。外国チームとの契約が終わって、日本のチームと契約したから。もう俺、ちゃんと澪を支えられるから」
何にも変わっていない。
私は罪を犯して汚れ切って、違う男の子どもがいるのに。
「澪はずっと俺の世界一だよ。何があっても変わらない。澪が好きだよ。澪だけが好きだよ」
瑛多は私の過去を探ろうとはしなかった。
私に幻滅した風でもなく、斗哉の存在もあっさり受け入れた。
「斗哉、俺、お前のお父さんになっていい?」
「パパのがカッコイイ。パパのがセンスもイイ」
斗哉は、気に入った人にはなぜか物言いが辛らつになる。
「ダサおじ?」
「お前――っ、ちっちゃい黎みたいな顔して可愛すぎるだろう‼」
笑顔で抱きしめる瑛多に斗哉はすんなり懐いた。
太陽みたいに温かい瑛多を拒める人なんていない。
いないけど、…
「俺、引っ越すから。瑛多と仲良くな」
私が自分を許せなくて瑛多に素直になれないのに、黎がさっさとマンションを出て行ってしまった。
私、ずるすぎる。
黎にも瑛多にも迷惑しかかけてない。
「俺、澪なら何でもいいから。一緒にいよ? もう、絶対置いて行ったりしないから」
私がぐずぐずしているうちに、瑛多はどんどん私の中に入ってきて、
悩みや迷いを明るく照らす。
「えーた、パパよりかっこよくないからダメなんじゃない?」
「黎かぁ~。お前、そんな奴、この世にいないべ?」
「ボクはえーたでもいいけど」
「斗哉は素直でいい子だなっ」
楽しそうな瑛多と斗哉を見ていると、その優しさに甘えたくなる。
もしも許されるなら、瑛多の手を取りたくなる。
「…もう。自分を許してあげたら」
黎が本当に取り持ってくれて、今では両親も斗哉を可愛がってくれている。
私だけがこんなに幸せで、やっぱりずるい気がするんだけど、…
0
あなたにおすすめの小説
愛想笑いの課長は甘い俺様
吉生伊織
恋愛
社畜と罵られる
坂井 菜緒
×
愛想笑いが得意の俺様課長
堤 将暉
**********
「社畜の坂井さんはこんな仕事もできないのかなぁ~?」
「へぇ、社畜でも反抗心あるんだ」
あることがきっかけで社畜と罵られる日々。
私以外には愛想笑いをするのに、私には厳しい。
そんな課長を避けたいのに甘やかしてくるのはどうして?
嘘をつく唇に優しいキスを
松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。
桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。
だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。
麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。
そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。
結婚相手は、初恋相手~一途な恋の手ほどき~
馬村 はくあ
ライト文芸
「久しぶりだね、ちとせちゃん」
入社した会社の社長に
息子と結婚するように言われて
「ま、なぶくん……」
指示された家で出迎えてくれたのは
ずっとずっと好きだった初恋相手だった。
◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌
ちょっぴり照れ屋な新人保険師
鈴野 ちとせ -Chitose Suzuno-
×
俺様なイケメン副社長
遊佐 学 -Manabu Yusa-
◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌
「これからよろくね、ちとせ」
ずっと人生を諦めてたちとせにとって
これは好きな人と幸せになれる
大大大チャンス到来!
「結婚したい人ができたら、いつでも離婚してあげるから」
この先には幸せな未来しかないと思っていたのに。
「感謝してるよ、ちとせのおかげで俺の将来も安泰だ」
自分の立場しか考えてなくて
いつだってそこに愛はないんだと
覚悟して臨んだ結婚生活
「お前の頭にあいつがいるのが、ムカつく」
「あいつと仲良くするのはやめろ」
「違わねぇんだよ。俺のことだけ見てろよ」
好きじゃないって言うくせに
いつだって、強引で、惑わせてくる。
「かわいい、ちとせ」
溺れる日はすぐそこかもしれない
◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌
俺様なイケメン副社長と
そんな彼がずっとすきなウブな女の子
愛が本物になる日は……
同窓会~あの日の恋をもう一度~
小田恒子
恋愛
短大を卒業して地元の税理事務所に勤める25歳の西田結衣。
結衣はある事がきっかけで、中学時代の友人と連絡を絶っていた。
そんなある日、唯一連絡を取り合っている由美から、卒業十周年記念の同窓会があると連絡があり、全員強制参加を言い渡される。
指定された日に会場である中学校へ行くと…。
*作品途中で過去の回想が入りますので現在→中学時代等、時系列がバラバラになります。
今回の作品には章にいつの話かは記載しておりません。
ご理解の程宜しくお願いします。
表紙絵は以前、まるぶち銀河様に描いて頂いたものです。
(エブリスタで以前公開していた作品の表紙絵として頂いた物を使わせて頂いております)
こちらの絵の著作権はまるぶち銀河様にある為、無断転載は固くお断りします。
*この作品は大山あかね名義で公開していた物です。
連載開始日 2019/10/15
本編完結日 2019/10/31
番外編完結日 2019/11/04
ベリーズカフェでも同時公開
その後 公開日2020/06/04
完結日 2020/06/15
*ベリーズカフェはR18仕様ではありません。
作品の無断転載はご遠慮ください。
紙の上の空
中谷ととこ
ライト文芸
小学六年生の夏、父が突然、兄を連れてきた。
容姿に恵まれて才色兼備、誰もが憧れてしまう女性でありながら、裏表のない竹を割ったような性格の八重嶋碧(31)は、幼い頃からどこにいても注目され、男女問わず人気がある。
欲しいものは何でも手に入りそうな彼女だが、本当に欲しいものは自分のものにはならない。欲しいすら言えない。長い長い片想いは成就する見込みはなく半分腐りかけているのだが、なかなか捨てることができずにいた。
血の繋がりはない、兄の八重嶋公亮(33)は、未婚だがとっくに独立し家を出ている。
公亮の親友で、碧とは幼い頃からの顔見知りでもある、斎木丈太郎(33)は、碧の会社の近くのフレンチ店で料理人をしている。お互いに好き勝手言える気心の知れた仲だが、こちらはこちらで本心は隠したまま碧の動向を見守っていた。
2人のあなたに愛されて ~歪んだ溺愛と密かな溺愛~
けいこ
恋愛
「柚葉ちゃん。僕と付き合ってほしい。ずっと君のことが好きだったんだ」
片思いだった若きイケメン社長からの突然の告白。
嘘みたいに深い愛情を注がれ、毎日ドキドキの日々を過ごしてる。
「僕の奥さんは柚葉しかいない。どんなことがあっても、一生君を幸せにするから。嘘じゃないよ。絶対に君を離さない」
結婚も決まって幸せ過ぎる私の目の前に現れたのは、もう1人のあなた。
大好きな彼の双子の弟。
第一印象は最悪――
なのに、信じられない裏切りによって天国から地獄に突き落とされた私を、あなたは不器用に包み込んでくれる。
愛情、裏切り、偽装恋愛、同居……そして、結婚。
あんなに穏やかだったはずの日常が、突然、嵐に巻き込まれたかのように目まぐるしく動き出す――
☘ 注意する都度何もない考え過ぎだと言い張る夫、なのに結局薬局疚しさ満杯だったじゃんか~ Bakayarou-
設楽理沙
ライト文芸
2025.5.1~
夫が同じ社内の女性と度々仕事絡みで一緒に外回りや
出張に行くようになって……あまりいい気はしないから
やめてほしいってお願いしたのに、何度も……。❀
気にし過ぎだと一笑に伏された。
それなのに蓋を開けてみれば、何のことはない
言わんこっちゃないという結果になっていて
私は逃走したよ……。
あぁ~あたし、どうなっちゃうのかしらン?
ぜんぜん明るい未来が見えないよ。。・゜・(ノε`)・゜・。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
初回公開日時 2019.01.25 22:29
初回完結日時 2019.08.16 21:21
再連載 2024.6.26~2024.7.31 完結
❦イラストは有償画像になります。
2024.7 加筆修正(eb)したものを再掲載
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる