架空戦記【匙は投げられた《第二次朝鮮半島動乱》】

どら焼きパンケーキ中佐

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開幕の章

【匙は投げられた〘第二次朝鮮半島動乱〙】開幕の章

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『日本国発 宛自衛艦隊司令長官 9月11日、、一二〇〇米国は北朝鮮に宣戦布告する。貴官らは集団的自衛権の行使に基づき米海軍に随伴し行動せよ。開戦と同時に政府は、防衛出動並びに国家存立危機事態を発令するものである。貴官らの幸運を祈る。 内閣総理大臣 防衛大臣 統合幕僚長』
『アメリカ合衆国発 宛在日・在韓米軍司令部 9・11同時多発テロの悲劇を我々は忘れていない。この日を我らは、テロ支援国家以上の脅威である看過することのできない国家、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)に対し、宣戦を布告するものである。北朝鮮に裁きの鉄槌を下す時が来た。北朝鮮に反撃の暇を与えてはならない。万が一の場合にも任務に忠実であることを忘れてはならない。諸君らの健闘を期待する。主よ我らを守りたまへ。なお、この作戦には海上自衛隊・自衛艦隊及び、陸上自衛隊・拉致被害者救出部隊も参戦する。』
「本日九月十一日、我が同盟国であるアメリカ合衆国が北朝鮮に宣戦を布告し、交戦状態となりました。これを受けて政府は、『国家存立危機事態』並びに『防衛出動』を発令致します。国民の皆様は偽の情報に惑わされないよう気をつけてください。これを受けて、海上自衛隊はすでに自衛艦隊を編成し、展開しております。政府そして自衛隊は国民の皆様の生命の安全と財産の保護をすべく活動しています。」
総理の冒頭会見から始まった日本国の防衛戦争はこの国を戦前でも戦後でもなく戦中に叩き落した。総理の言葉そのものが既にフェイクなのは明らかだった。が、『特定秘密保護法』『機密漏示罪』『共謀罪(テロ等準備罪)』の存在により、第三者情報の提供による電子情報の入手、警察によるメール発着信の履歴の取得、その内容の開示請求などの名目でSNSも取り締まりの対象となり、ラインやツイッターなどで事実の核心に迫る者はことごとく逮捕・勾留された。ネット民も自由奔放な発言をしていたが同様に逮捕・勾留された。その見せしめの効果はあった。国民の言論の自由は無きに等しくなろうとしていた。
新聞は政府広報の説明文を掲載してお茶を濁すしかなかった。国と汝の隣人による相互フォロー監視社会が構築されてしまったのである。
「9・11我々はテロリストどもに大切な人を奪われた。我々はこの悲劇を忘れてはいない。テロリストに屈してはならない。しかし、テロ支援国家である北朝鮮は度重なる挑発行為を繰り返し、ICBMの射程距離は一線を越えようとしている。我が国はかつて核を放った。その威力、被害、放射能の恐怖、すべて今日の友である日本国が教えてくれた。我々は北朝鮮による核戦争計画ならびにそれに伴う挑発外交に終止符を打つべく、本日、九月十一日、北朝鮮に宣戦布告するものである。我々は裁きの鉄槌を下すだろう。」
大統領の言葉に米国は揺れた。しかし国民は楽観的だった。なかには狂喜乱舞する者までいた。ベトナム戦争などを除いて、負けたことが無い上に太平洋戦争の日本海軍の小規模な爆撃以外本土を敵国に襲われたことはないからである。
「ロケットマンに何が出来るって?懺悔の祈りの中で自らの行いを悔やみながら死ぬことさ。だって言うだろ?身から出た錆って!」
米国男性は嘲笑気味に言った。
「みんな楽勝ムードで騒いでいるけど大丈夫なのかしら?アメリカのどこにでも落ちる可能性はあるのよ?ミサイルがどれだけ来るかもわからないのに。本当に男は単純ね。」米国女性の中には迫りつつある危機を危ぶむ声もあった。
「これで、我が社は大儲けだ。戦争はアメリカの錬金術さ!負けなければね!おっと、こんなことを某団体に聞かれたら我が社が傾いてしまう。自由の国だけど自由じゃないよね。我が社はアメリカの犬にライセンス契約で生産させて儲かればいいのさ。大統領は雇用を生んだのさ。」
米国軍需産業関係者は大喜びしていた。 
そして、悲劇は起きた。宣戦布告から二日後の九月十三日、アメリカの某州に北朝鮮の核は落ちたのである。 政府報道官は、
「人類史上最大の被害者数を出した。落下地点は機密事項であり明かすことはできない。」と発表した。アメリカは総動員で被害者の救出・救援活動・救援物資の提供や医療行為にあたったが場所の口外は禁じられた。場所は他ならぬ『ペンタゴン』だったからである。ホワイトハウスはその夜、声明を出した。
「何ということだ!このような兵器を使う、ならず者国家をいつ叩き潰す?そう!今すぐにだ!我が国は核にさらされた。しかしロケットマンと同じことはしない。何故か?アメリカだからだ。覚悟するがいいロケットマン!あの国は核戦争に踏み切ったことで自ら国を亡ぼすことを選んだのだ!」
 さかのぼること九月十一日、『オペレーション9・11』は実行された。予定通り米軍の戦略爆撃機による爆撃が始まった。手当たり次第に。その状況下、拉致被害者救出部隊は血眼になって拉致被害者を捜索した、複数人の救出と戦火の中で死亡した被害者、行方不明者の確認が成された。救出作戦の末、多数の自衛官が戦死、殉職となった。実戦での自衛隊公式戦死認定者となった。結果として多大な犠牲を払いながらも、日本の目標の一つであった、拉致被害者の救出は一応の成功をおさめた。しかし、その情報は日本政府の機密事項であった。
アメリカの誤算はそのあとにある。韓国軍とともに北朝鮮へ侵攻した米軍は板門店を越え平壌めがけて進軍。しかし、米軍はゲリラ戦術とは相性が悪い。ゲリラ戦術を駆使されたことにより、9月13日に北朝鮮による核ミサイル発射の隙を与えてしまったのだ。平壌にたどり着いた時には、平壌防衛特殊部隊によってさらに犠牲者が増え、北朝鮮軍に対する常識が実情とは異なることを知った。
北朝鮮はこの日の為に相当の準備を重ねてきたのである。そして、米韓主力を引き付けた北朝鮮は、党委員長の肝いりの核の矢を米国に放ったのである。
「今こそ忌まわしき米帝に我らの核の正義の矢を放つのだ!」
党委員長の号令と共に北朝鮮最大の軍事行動が開始された。まさに青天の霹靂であった。核の矢は日本を通過、Jアラートが鳴り響いた。
「またか。迷惑だよな。」
「まさか、核入りミサイルじゃないでしょ?」
日本国民の大半がオオカミ少年のオオカミが来たぞ!のパターンに陥っていた。危機感がまるでなかった。
だが、このJアラートはいつもとは違った。スマホ速報で「ミサイル日本通過。太平洋上を尚飛翔中。到達点は不明」と号外が表示され、それから数分後、ニュース速報が流れた。
「米国に核ミサイル落下」
途端にテレビ局は臨時特番を決め、報道番組を開始した。
「緊急事態により、ここからは特別報道番組をお送りします。只今入りました情報によると、米国に核ミサイルが落下した模様です。具体的な場所は明らかにされておりません。続報が入り次第お伝えいたします。」
「号外です!号外です!アメリカに核ミサイル落下です!」
ネットの速報も同様の情報を伝えた。しかし、続報が入ってこない。そのような中、ホワイトハウスは声明を出した。
「何ということだ!あのならず者国家のロケットマンが、最悪の核攻撃をした。この核攻撃を防げなかった私の責は戦後に問いてほしい。続けよう。そして我々は日本と同じ被爆国となった。我々は核の悲劇、惨状をまるで他人事のように考えてきた。それまでの核を落とされた側の感情と悲劇を知った。この核による攻撃が許されざるものであることは言うまでもない。しかし、我々はならず者国家と同じ、あのロケットマンと同じことはしない。私はロケットマンではない。私は、偉大なるアメリカ合衆国の大統領だ。そしてとうとう奴らは我々の恐ろしさを直接味わいたいようだ。既に本格的に展開している勇敢なる我が軍に更なる追加部隊を投入する。既に我々は一定の戦果を得ている。詳しくは報道官による発表を待ってほしい。」
アメリカは揺れた。どこに落ちたかの発表もなく、更なる部隊の増強。それらの情報を加味したらこの戦争はアメリカが想像していたよりも苦戦しているのではないか?と疑問視する声も聞こえてきた。
「国民の間で、どこに落ちたかで騒ぎになっている。国防長官はなんと言っている?」
「私を罷免してくださいと申し出ております。」
「馬鹿が!ペンタゴンに落ちた核攻撃を公に出来ない責任が奴の首一つで済むわけがないだろう!奴に伝えろ。北朝鮮を徹底的に殲滅しろ。核攻撃無しでな、と。エアフォース1を準備しろ。それから今すぐ日本にホットラインをする。準備急げ。」
しばらくして回線がつながった。
「総理、久しぶりだな。突然だが直で話をしよう。リョウテイでするような話だ。」
「公式会談の体で非公式の密談をされたいということですか?」
「察しがいい、総理。リョウテイは密談、迎賓館はパーティー、首脳会談はショーじゃないか。格好として首脳会談と会見はするが。本当に話したいことは非公開で非公式の密談だ。よろしく頼むよ。総理。」
ホットラインが切れた後、総理は呟いた。
「米国もてんてこ舞いだな。日本も戦中になった。もう平和ボケはできない。この戦争の着地点を誤ると取り返しがつかなくなる。そろそろ情報を国民に提供していこう。」
日本では、このタイミングで政府が閣議決定に基づき、自衛隊が拉致被害者救出部隊を派遣していたこと、国外での戦闘行為ではなく、あくまで邦人救出のための強硬的手段であったこと、武器等の使用は自衛隊員の生存権に基づくものであり、問題はないと公表した。
これに反発する向きもあったが、『暗黙の言論統制法』によって揉み消された。拉致被害者は救出されたと発表されたが、死亡者も確認されたとの発表もあった。行方不明者は捜索及び救出不可能とされた。
「政府・自衛隊と致しましてもとりわけ救出に当たった自衛隊員は懸命に救出にあたりました。救出活動において、自衛隊員に初の戦死殉職認定者が出ました。拉致被害者のご遺族並びに救出にあたった自衛隊員のご遺族には心よりお悔やみ申し上げます。全ての拉致被害者を救出できなかったことは痛恨の極みであります。残酷ですがこれが有事なのです。政府と致しましては今後、有事特例法や有事特措法の制定を急ぎ、今回の有事に立ち向かう所存でございます。国民の皆様の生命・財産を守りぬく。そのために私はシビリアンコントロールに於ける自衛隊の最高司令官として内閣総理大臣という立場で皆様の前にいるのであります。」
一方でアメリカは、核にさらされたにもかかわらず、戦意を失うことなく、むしろ激しい憎悪が戦意を高揚させていた。
「もうこれ以上落下地点を隠しても意味はないだろう。私の口から伝えよう。」
9月末、アメリカ内外から報道関係者が押し寄せた。そして、会見が始まった。米国大統領「今まで核の落下場所を伝えなかったのはそこが我が国の重要施設が含まれる場所だったからだ。そこにあるもの、それはペンタゴンだ。現在はべつの場所で極秘で活動中だ。今現在の臨時的施設の位置は勿論公表できないので承知してほしい。私は明後日、日本へ首脳会談に行くことにした。総理とこれからの方針について互いに確認する。」
「核の被害状況はどうなっているのですか?」
「いい質問だ。しかし答えられない。次。」
「大統領の判断ミスがこの事態を招いたと言われていますが?」
「それはフェイクだ。次。」
「今回の訪日の目的は?」
「それはまだ言えない。非常に高度な政治的なものとだけ言っておこう。次。」
このような調子で米国大統領の会見は終わった。
「やれやれ記者どもは同じようなことしか聞かない。あれではこちらも疲れる。補佐官、今後の日程は?」
「10月25日にエアフォース1の準備が整い日本へ行く日程となっています。」
「わかった。ロシア・中国への首脳会談の打診も怠るなよ。」

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