胡乱なるウーロン茶

たくばや

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錆びた鉄骨

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ここはイリノイ州、シカゴ。20世紀に入ったばかりのこの街では沢山の高層ビルが次々に建てられていた。1871年の「シカゴの大火」の後、雨後の筍の如く増え続ける鉄骨の高層ビル群。そして完成していくそのビル達の鉄骨を眺めるのが一番の趣味というまだ幼い少年がいた。その少年は完成したビルを見るよりも建築途中の剥き出しの鉄骨を非常に好んだ。来る日も来る日もビルの工事現場に通っては、おじさん達に怒られないように気を付けながら剥き出しの鉄骨を眺め続けた。ある時少年は特にお気に入りの一本の鉄骨を見つける。それからはその鉄骨を見るために毎日工事現場に通った。ビルが段々と完成に近づき鉄骨が見えなくなってしまった頃、父親の仕事の都合で少年はシカゴを離れることになった。鉄骨に対して異常なまでの執着を見せていた少年ではあったがそれも幼い子供のこと、引っ越してからはまたすぐに別のことに夢中になっていた。それから十数年の時が過ぎ青年となった彼は再びシカゴの地に舞い戻る。朧げな記憶にある街とはまた違い一段と増えている高層ビル群。景色は思い出と全く変わっていた。それを見た瞬間に彼は唐突にあの大好きだった鉄骨のことを思い出した。あの鉄骨は勿論見られないだろうが、完成したビルの姿を一目見たい。ほんの微かな記憶を辿り、辿り着いたその場所に果たしてその鉄骨は姿を現した。そのビルは中途半端に取り壊され、またしても剥き出しとなった鉄骨は雨風に晒され錆びていた。思わぬ再会ではあったが、彼は神に感謝した。変わり果てた姿とはいえまた鉄骨を見られたことを。そして自分は前に進まなくては。青年には夢があった。
その青年、かつて鉄骨を愛したその少年こそ後に世界で最も有名なアニメーションクリエイターとなるウォルトディズニーである。
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