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02:閑話
初見×2の1
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ここは貴族だけが通う学園。
そんな学園だけに、食堂で出される料理は腕の良いシェフが担当した手が込んだものが多く、味には一切不満がないメニューばかりだった。
確かに料理は美味しいのだが。
俺はいつも仏頂面で食事を取っていた。
料理を口に運び、ふと前の席を見る。
今日も変わらず空席だ。
気が付けばいつもこの席は空席だった。
どれだけ食堂が混んでいようが、この席に座る奴は居ない。
最初は俺が侯爵家の人間だから遠慮しているのかと思っていたが、どうやらそうではないらしい。なぜなら、クラスの友人は俺の隣には平気で座るのだ。ついでに言えば、正面以外の左右の席にも。
例えば三人で来たとしよう。それならばどちらかの前の席が開く事はあるかもしれない。それが常に俺の前だったのは偶然だとしてもいい。
ならば四人だったら?
普通に考えれば前の席はどちら側も埋まるだろう、しかし彼らは俺の前を空けて座りやがる。
いや待て、この空け方はおかしいだろう!?
数度指摘してみたのだが、彼らは不思議そうに首を傾げたが、結局その席に座る事は無かった。
もうしらん!
そんなある日。
この日は友人らが不在で、俺は一人で食事を取っていた。
軽く炙られた肉を切り分けてフォークで口に運ぶ、その時、ふと視線の先に影が落ちた。
チラと見れば、
目の前の空席に、初めて座わろうとする奴が居た!!
正直この時の興奮は、言葉に出来ない。
「ここ良いですか?」
と、高めの声で聞かれ、即答で「ああ」と答えてしまう。
俺は、ついに来たか! と喜んだのも束の間のこと。
望んだ奴でもなく、座った奴が女だった事で二重にガッカリした。
チッと舌打ちしてフォークを口に運ぶ。
肉を口に入れて、そう言えば、俺は誰だと思ったんだ? と首を傾げた。
女は俺の態度を見ても怯むことなく席に座っていた。
その態度に、俺はどうせまた糞女だろうと予想する。
そもそも侯爵家の嫡男の俺は、よく女から声を掛けられるのだ。それらの女は俺ではなく家を見て会話する、真面にお前ら猛禽類かよってほど貪欲で見境がない。
そんな奴らだから会話には身がないし意味も無い。だから喋りたくも無い。
意識が別方向へ飛んだのは一瞬の事で、女が勝手に自己紹介し始めた。
「初めましてアウグスト様、私はギュンツベルク子爵令嬢のディートリンデと申します」
ギュンツベルク子爵と言えば、先日ここで婚約破棄されてた令嬢だ。
あぁしっかりと覚えている、だから俺は「知ってるよ」と答えた。
なるほどな、と俺は納得した。要するに婚約者が居なくなったから、侯爵家の俺にアピールしにきたのだろう。
結局こいつもいつもの女と同じだ。
その後もディートリンデは淡々と話しかけてきた。
俺はそれに受け答えながら、彼女を観察する。
まず、目の下に隈がある令嬢は斬新だなと思った。食事もしっかり摂っていないのだろうか少々頬がこけているように思う。
時折眠いのか歯を食いしばるような仕草や目をしょぼしょぼと細めるのだ。
何だこいつ、寝不足なのか?
「私が知りたいのは、今年の春に入った転校生についてですわ」
転校生!?
……ブレンターノ伯爵家のモーリッツ!
春に転校して来てからこっち、何故か気になるあいつ。
言っておくが、俺にはそう言う趣味は断じてない!
でも何故か気になるのだ、何なんだあいつは!?
この悔しいと思う感情が理解出来ないから、俺は搾り出すように「あいつとは話したことが無い」と言った。
ディートリンデはその後も良く分からないことを聞いてくるが、俺も良く分からないなりに答えていた。
それにしてもディートリンデは不思議な令嬢だった。
もしかしてワザとかもしれないが、侯爵の俺に関する事は一切聞かないのだ。まるで俺自身を含め侯爵家にも興味がないかのような話しぶりだ。
俺はこのとき、色目を使わない女と言うのを始めて目の当たりにした。
目の前の寝不足で不健康そうな令嬢には女として魅力は感じない、しかし内面は不思議と嫌いではないと思っていた。さらにずっと空いていた空席を埋めてくれたということがとても嬉しく感じていた。
その後も良く分からない質問に答えると、結局彼女は席を後にした。
そんな学園だけに、食堂で出される料理は腕の良いシェフが担当した手が込んだものが多く、味には一切不満がないメニューばかりだった。
確かに料理は美味しいのだが。
俺はいつも仏頂面で食事を取っていた。
料理を口に運び、ふと前の席を見る。
今日も変わらず空席だ。
気が付けばいつもこの席は空席だった。
どれだけ食堂が混んでいようが、この席に座る奴は居ない。
最初は俺が侯爵家の人間だから遠慮しているのかと思っていたが、どうやらそうではないらしい。なぜなら、クラスの友人は俺の隣には平気で座るのだ。ついでに言えば、正面以外の左右の席にも。
例えば三人で来たとしよう。それならばどちらかの前の席が開く事はあるかもしれない。それが常に俺の前だったのは偶然だとしてもいい。
ならば四人だったら?
普通に考えれば前の席はどちら側も埋まるだろう、しかし彼らは俺の前を空けて座りやがる。
いや待て、この空け方はおかしいだろう!?
数度指摘してみたのだが、彼らは不思議そうに首を傾げたが、結局その席に座る事は無かった。
もうしらん!
そんなある日。
この日は友人らが不在で、俺は一人で食事を取っていた。
軽く炙られた肉を切り分けてフォークで口に運ぶ、その時、ふと視線の先に影が落ちた。
チラと見れば、
目の前の空席に、初めて座わろうとする奴が居た!!
正直この時の興奮は、言葉に出来ない。
「ここ良いですか?」
と、高めの声で聞かれ、即答で「ああ」と答えてしまう。
俺は、ついに来たか! と喜んだのも束の間のこと。
望んだ奴でもなく、座った奴が女だった事で二重にガッカリした。
チッと舌打ちしてフォークを口に運ぶ。
肉を口に入れて、そう言えば、俺は誰だと思ったんだ? と首を傾げた。
女は俺の態度を見ても怯むことなく席に座っていた。
その態度に、俺はどうせまた糞女だろうと予想する。
そもそも侯爵家の嫡男の俺は、よく女から声を掛けられるのだ。それらの女は俺ではなく家を見て会話する、真面にお前ら猛禽類かよってほど貪欲で見境がない。
そんな奴らだから会話には身がないし意味も無い。だから喋りたくも無い。
意識が別方向へ飛んだのは一瞬の事で、女が勝手に自己紹介し始めた。
「初めましてアウグスト様、私はギュンツベルク子爵令嬢のディートリンデと申します」
ギュンツベルク子爵と言えば、先日ここで婚約破棄されてた令嬢だ。
あぁしっかりと覚えている、だから俺は「知ってるよ」と答えた。
なるほどな、と俺は納得した。要するに婚約者が居なくなったから、侯爵家の俺にアピールしにきたのだろう。
結局こいつもいつもの女と同じだ。
その後もディートリンデは淡々と話しかけてきた。
俺はそれに受け答えながら、彼女を観察する。
まず、目の下に隈がある令嬢は斬新だなと思った。食事もしっかり摂っていないのだろうか少々頬がこけているように思う。
時折眠いのか歯を食いしばるような仕草や目をしょぼしょぼと細めるのだ。
何だこいつ、寝不足なのか?
「私が知りたいのは、今年の春に入った転校生についてですわ」
転校生!?
……ブレンターノ伯爵家のモーリッツ!
春に転校して来てからこっち、何故か気になるあいつ。
言っておくが、俺にはそう言う趣味は断じてない!
でも何故か気になるのだ、何なんだあいつは!?
この悔しいと思う感情が理解出来ないから、俺は搾り出すように「あいつとは話したことが無い」と言った。
ディートリンデはその後も良く分からないことを聞いてくるが、俺も良く分からないなりに答えていた。
それにしてもディートリンデは不思議な令嬢だった。
もしかしてワザとかもしれないが、侯爵の俺に関する事は一切聞かないのだ。まるで俺自身を含め侯爵家にも興味がないかのような話しぶりだ。
俺はこのとき、色目を使わない女と言うのを始めて目の当たりにした。
目の前の寝不足で不健康そうな令嬢には女として魅力は感じない、しかし内面は不思議と嫌いではないと思っていた。さらにずっと空いていた空席を埋めてくれたということがとても嬉しく感じていた。
その後も良く分からない質問に答えると、結局彼女は席を後にした。
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