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32:ヴェパー伯爵領④
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「初めまして、私はフリードリヒと申します。
お許しを頂くことなくリューディアと結婚した事を謝罪いたします」
「謝罪すればすべて許されるとでも?」
「お言葉ですが伯母様、わたしはすでに成人しています。
わたしの意思で結婚するのに伯母様のお許しを頂く必要はございません」
「ふうん。貴女が本当にそう思っているのならば、結婚した時にすぐにわたくしに知らせを送るべきだったわね」
「……えーと、そのぉ」
「ハァ……まったく貴女は昔から変わらないわね。
後ろめたいことがあるとすぐにそうやって口を閉ざすのね」
「でもわたしなりに考えて、少しでもお父様の借金の足しになればと……」
「馬鹿お仰い! 貴女が選んだ行いは奴隷と同じだわ。
その様な事をわたくしが許せると思って!?」
「失礼ですが私はリューディアを奴隷として扱った覚えは有りません」
「勘違いなさらないでフリードリヒ。あなたの事ではなくこれは一例として申しただけです。それに先ほどの様子から、幸いにもあなたは信頼できる人のようです。
しかしそれはたまたま運が良かっただけの事、もしも相手が違えば恐ろしいことになっていたはずです」
「なるほど確かにそうですね」
「フ、フリードリヒ様っ!?」
「いや折角の機会だ、一度ちゃんと叱られておく方がいいぞ」
「えーっ!?」
裏切り者ー!?
「フフフ。リューディア、とても良い夫を貰ったようですね。
では遠慮なく、言わせて貰いましょうか!」
伯母の目がくわっと見開いた。
そしてそのお説教はなんと晩御飯の寸前まで続いた……
わたしは伯母と共に食堂へ入った。
するとフリードリヒと伯父様がお酒を飲みながら何やら談笑していた。
お説教の途中でヤーコブに耳打ちされてどこに行ったかと思っていたが、まさかこんな所に居ようとは思わなかった。
それにしても二人の顔は真っ赤で、もうずいぶんの量を飲んでいるようだ。そんな二人の間には弟のアルフォンスが座っていて、皿の上のおつまみに手を伸ばしていた。
アルフォンスはお酒に酔っている二人よりも早く気づき、
「あっお姉様!」
と言いながらわたしに向かって走って来た。
「アルフォンス久しぶりね。
あら背が伸びたかしら?」
うんーと元気な返事を聞きつつ、
「久しぶりだねリューディア。お説教は終わったかい?」
その問いには答えずわたしは隣を歩いていた伯母を見た。
「残念ながらまだ言い足りませんが、あまり時間を喰うのも野暮でしょう。今回はこれくらいにしてあげます」
「じゃあ改めて、よく来たねリューディア」
「お久しぶりです伯父様」
「話を聞いたときは驚いたが、良い旦那さんを貰ったようで安心したよ」
「ええほんとうに。先ほどまでは自慢の旦那様でした」
「お、おいリューディア?」
「ふんだっ置いて逃げた癖に!」
狼狽するフリードリヒを見て伯父と伯母は声を出して笑った。
そして寝室。
「今日のリューディアはなんだか子供っぽい気がしたんだが気のせいか?」
「くぅぅ言わないでください。自分でもそう思っているんですから!」
「はははっ自覚ありか」
「恥ずかしながら伯母様たちに会った所為で、昔の気分に引きずられているようです」
「いつもの澄ましているのも悪くないが、そう言うリューディアも新鮮で良いな」
「澄ましてるって……」
「はははっそちらは自覚なしか」
「もう! 知りません!」
ふんとわたしが体を背けると、フリードリヒが背中から覆いかぶさってきて、すっかり彼の腕の中に納まった。
それからはまぁ、いつもの流れと言う奴で、フリードリヒはいつも通りとても情熱的で優しかった。
お許しを頂くことなくリューディアと結婚した事を謝罪いたします」
「謝罪すればすべて許されるとでも?」
「お言葉ですが伯母様、わたしはすでに成人しています。
わたしの意思で結婚するのに伯母様のお許しを頂く必要はございません」
「ふうん。貴女が本当にそう思っているのならば、結婚した時にすぐにわたくしに知らせを送るべきだったわね」
「……えーと、そのぉ」
「ハァ……まったく貴女は昔から変わらないわね。
後ろめたいことがあるとすぐにそうやって口を閉ざすのね」
「でもわたしなりに考えて、少しでもお父様の借金の足しになればと……」
「馬鹿お仰い! 貴女が選んだ行いは奴隷と同じだわ。
その様な事をわたくしが許せると思って!?」
「失礼ですが私はリューディアを奴隷として扱った覚えは有りません」
「勘違いなさらないでフリードリヒ。あなたの事ではなくこれは一例として申しただけです。それに先ほどの様子から、幸いにもあなたは信頼できる人のようです。
しかしそれはたまたま運が良かっただけの事、もしも相手が違えば恐ろしいことになっていたはずです」
「なるほど確かにそうですね」
「フ、フリードリヒ様っ!?」
「いや折角の機会だ、一度ちゃんと叱られておく方がいいぞ」
「えーっ!?」
裏切り者ー!?
「フフフ。リューディア、とても良い夫を貰ったようですね。
では遠慮なく、言わせて貰いましょうか!」
伯母の目がくわっと見開いた。
そしてそのお説教はなんと晩御飯の寸前まで続いた……
わたしは伯母と共に食堂へ入った。
するとフリードリヒと伯父様がお酒を飲みながら何やら談笑していた。
お説教の途中でヤーコブに耳打ちされてどこに行ったかと思っていたが、まさかこんな所に居ようとは思わなかった。
それにしても二人の顔は真っ赤で、もうずいぶんの量を飲んでいるようだ。そんな二人の間には弟のアルフォンスが座っていて、皿の上のおつまみに手を伸ばしていた。
アルフォンスはお酒に酔っている二人よりも早く気づき、
「あっお姉様!」
と言いながらわたしに向かって走って来た。
「アルフォンス久しぶりね。
あら背が伸びたかしら?」
うんーと元気な返事を聞きつつ、
「久しぶりだねリューディア。お説教は終わったかい?」
その問いには答えずわたしは隣を歩いていた伯母を見た。
「残念ながらまだ言い足りませんが、あまり時間を喰うのも野暮でしょう。今回はこれくらいにしてあげます」
「じゃあ改めて、よく来たねリューディア」
「お久しぶりです伯父様」
「話を聞いたときは驚いたが、良い旦那さんを貰ったようで安心したよ」
「ええほんとうに。先ほどまでは自慢の旦那様でした」
「お、おいリューディア?」
「ふんだっ置いて逃げた癖に!」
狼狽するフリードリヒを見て伯父と伯母は声を出して笑った。
そして寝室。
「今日のリューディアはなんだか子供っぽい気がしたんだが気のせいか?」
「くぅぅ言わないでください。自分でもそう思っているんですから!」
「はははっ自覚ありか」
「恥ずかしながら伯母様たちに会った所為で、昔の気分に引きずられているようです」
「いつもの澄ましているのも悪くないが、そう言うリューディアも新鮮で良いな」
「澄ましてるって……」
「はははっそちらは自覚なしか」
「もう! 知りません!」
ふんとわたしが体を背けると、フリードリヒが背中から覆いかぶさってきて、すっかり彼の腕の中に納まった。
それからはまぁ、いつもの流れと言う奴で、フリードリヒはいつも通りとても情熱的で優しかった。
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