23 / 29
幕間 ドキッとくる夏休み! パラソル下で磯を味わいましょう♪
01. まさかそこで出会うなんて、誰が想像できるんですか!
しおりを挟む
都心からかなり離れた、人けのないオーシャンアベニュー。
陽の光に反射し、白く輝く海の泡に儚い時の流れを感じながら、三人を乗せた一台の白いワゴン車が颯爽と走っていた。
内装は至ってシンプル、ながら旅行用のトランクが三つ積まれており、メンバープレートのひらがな部分は「わ」の文字。レンタカーだ。
「バンブーの知り合い、この辺で働いているんでしょ?」
一人、後部座席に座っているクミンがそういいながら、車窓越しに見える広大な海の景色を眺めていた。
服装はいつもの零細企業勤めのOLのような恰好ではなく、この日はポンパドールを下ろしたシンプルゆるふわなポニーテールが、彼女のピンクブラウンに似合うヘアスタイルである。服装はクリーム色のゆったりしたタックワイドパンツに、トップスには白いカットソーと袖が網レースのリネンジャケットを羽織った、動きやすさを重視した夏のマストアイテムで揃えられていた。
前席にはミントとバンブーの二人が座っていて、彼らもこの日は、普段の仕事やランニング時のモードから完全に切り離した着こなしであった。
ハンドルを握るミントは収縮性のある黒のテーラードパンツに、水色の半袖オープンカラーシャツが腕時計の色味と調和している。助手席のバンブーも紺のデニムパンツに、筋肉質のボディが冴える白のワイドフィットタフTという、非常にシンプルなファッションだ。
合同会社オレガノにとって貴重な夏休みであるこの時期、彼らはバンブーの紹介で、都会から離れた海岸沿いのホテルで二泊三日の休暇を満喫しにきたのであった。
「ハイ。友達のツバサくんネ? むかし、コロちゃんShockで仕事なくなっただから、こっちのホテル転勤したネ。彼、すっごいイイ人。ホテル安くしてもらった」
「その件は本当に助かったよ、恩に着る。しかし、本当に静かな所だな」
「だってしゃちょー、若い子タクサン、うるさい所あんま好きじゃない。ワタシ知ってル」
「くすっ」
と、クミンが後ろで静かに吹きだし笑いをする。
ミントの事は、小学校の頃の彼の姿を見ているから分かるのだろう。確かにミントは娯楽そのものには興味があるが、人の声が騒がしい所は昔から好まない性格だ。自分一人の内面世界に耽れるような音楽鑑賞や、リラックスできる開放的な空間に惹かれる傾向がある。
バンブーはその辺り熟知しているようで、今回ホテル勤めの知り合いにゴマ擦りをしたという経緯だ。そんなこんなで話しているうちに、彼らを乗せた車はこじんまりとした小さなホテルに到着したのであった。
「あ。これ、持っていかないと…!」
こうして所定の位置に駐車したワゴン車を降りる際、クミンは後部座席ドアのポケットに入れていた炭酸ジュースのペットボトルを手に取った。
この暑い時期、あっという間に灼熱地獄と化す車内に炭酸入りジュースのペットボトルを放置するのは危険だ。温度上昇で二酸化炭素が気化し、内圧上昇による膨張のすえ爆発を起こす危険があるからである。レンタカーなので、車内をそれで汚すわけにはいかなかった。
――――――――――
「ヘイ! ツバサくん、元気してタ~?」
「いらっしゃいませ。久しぶりだね、バンブーくん」
足を運んだホテルは、ごく普通のこじんまりとした壁紙に大理石柄のステッカーを貼った内装のレセプション。そこのフロントとして立っている、スポーツ狩りの頭が特徴の二十代男性であるツバサの元へ、バンブーが笑顔で挨拶をしたのであった。
「そちらは、お連れ様ですか?」
と、ツバサが機転を利かせるようにミントとクミンがいる方向へ手を差し伸べた。二人はうんと頷き、バンブーが嬉しそうに説明した。
「そう。二人、ワタシのフレンドね? いまサマーバケーションダカラ、今日ヨヤクした」
「かしこまりました。えー、鯨井様、空島様、竹田様の三名ですね。お待たせいたしました、鍵をお渡しします。ごゆっくり、お過ごし下さいませ」
そういって、ツバサがパソコンのキーボードを早打ちしてから、ミント達へ所定の部屋に入れる鍵を渡してきた。
鍵には大きなアクリルの長い色付きの透明棒がキーホルダーとしてついており、いかにも古き良き時代の懐かしさを思い出させる。そんなルームキーは紛失時にもすぐに見つけられる事から、昨今のカードリーダー式とは違う利便性と古典的な風情を感じさせるのだ。
「…あれ?」
その時、ミントとクミンの耳にそんな女性の独り言が聞こえてきた。
各自鍵を受けとり、自分の部屋へ荷物を置きに旅行用のトランクを転がしていた所に、聞き覚えのある声が響いたのだ。ミントもクミンもそちらへ目を向けると、
「あれ?」
二人とも、見覚えのある顔だった。黒髪ロングをクリップで一つにまとめた、化粧は少し控えめだけど目に力がある若い女性レセプションスタッフ。ミントは名前をあげた。
「…美紀さん?」
するとその「美紀」と呼ばれた女性も、自身が抱いた疑問がただの思い違いではないと気付いた安堵からか、僅かに安堵を浮かべた表情でミント達の元へ歩いてきた。
彼女は何を隠そう、少し前までミント達が経営する合同会社オレガノのレンタル彼女として勤務していた、元スタッフの一人その人であった。
(つづく)
陽の光に反射し、白く輝く海の泡に儚い時の流れを感じながら、三人を乗せた一台の白いワゴン車が颯爽と走っていた。
内装は至ってシンプル、ながら旅行用のトランクが三つ積まれており、メンバープレートのひらがな部分は「わ」の文字。レンタカーだ。
「バンブーの知り合い、この辺で働いているんでしょ?」
一人、後部座席に座っているクミンがそういいながら、車窓越しに見える広大な海の景色を眺めていた。
服装はいつもの零細企業勤めのOLのような恰好ではなく、この日はポンパドールを下ろしたシンプルゆるふわなポニーテールが、彼女のピンクブラウンに似合うヘアスタイルである。服装はクリーム色のゆったりしたタックワイドパンツに、トップスには白いカットソーと袖が網レースのリネンジャケットを羽織った、動きやすさを重視した夏のマストアイテムで揃えられていた。
前席にはミントとバンブーの二人が座っていて、彼らもこの日は、普段の仕事やランニング時のモードから完全に切り離した着こなしであった。
ハンドルを握るミントは収縮性のある黒のテーラードパンツに、水色の半袖オープンカラーシャツが腕時計の色味と調和している。助手席のバンブーも紺のデニムパンツに、筋肉質のボディが冴える白のワイドフィットタフTという、非常にシンプルなファッションだ。
合同会社オレガノにとって貴重な夏休みであるこの時期、彼らはバンブーの紹介で、都会から離れた海岸沿いのホテルで二泊三日の休暇を満喫しにきたのであった。
「ハイ。友達のツバサくんネ? むかし、コロちゃんShockで仕事なくなっただから、こっちのホテル転勤したネ。彼、すっごいイイ人。ホテル安くしてもらった」
「その件は本当に助かったよ、恩に着る。しかし、本当に静かな所だな」
「だってしゃちょー、若い子タクサン、うるさい所あんま好きじゃない。ワタシ知ってル」
「くすっ」
と、クミンが後ろで静かに吹きだし笑いをする。
ミントの事は、小学校の頃の彼の姿を見ているから分かるのだろう。確かにミントは娯楽そのものには興味があるが、人の声が騒がしい所は昔から好まない性格だ。自分一人の内面世界に耽れるような音楽鑑賞や、リラックスできる開放的な空間に惹かれる傾向がある。
バンブーはその辺り熟知しているようで、今回ホテル勤めの知り合いにゴマ擦りをしたという経緯だ。そんなこんなで話しているうちに、彼らを乗せた車はこじんまりとした小さなホテルに到着したのであった。
「あ。これ、持っていかないと…!」
こうして所定の位置に駐車したワゴン車を降りる際、クミンは後部座席ドアのポケットに入れていた炭酸ジュースのペットボトルを手に取った。
この暑い時期、あっという間に灼熱地獄と化す車内に炭酸入りジュースのペットボトルを放置するのは危険だ。温度上昇で二酸化炭素が気化し、内圧上昇による膨張のすえ爆発を起こす危険があるからである。レンタカーなので、車内をそれで汚すわけにはいかなかった。
――――――――――
「ヘイ! ツバサくん、元気してタ~?」
「いらっしゃいませ。久しぶりだね、バンブーくん」
足を運んだホテルは、ごく普通のこじんまりとした壁紙に大理石柄のステッカーを貼った内装のレセプション。そこのフロントとして立っている、スポーツ狩りの頭が特徴の二十代男性であるツバサの元へ、バンブーが笑顔で挨拶をしたのであった。
「そちらは、お連れ様ですか?」
と、ツバサが機転を利かせるようにミントとクミンがいる方向へ手を差し伸べた。二人はうんと頷き、バンブーが嬉しそうに説明した。
「そう。二人、ワタシのフレンドね? いまサマーバケーションダカラ、今日ヨヤクした」
「かしこまりました。えー、鯨井様、空島様、竹田様の三名ですね。お待たせいたしました、鍵をお渡しします。ごゆっくり、お過ごし下さいませ」
そういって、ツバサがパソコンのキーボードを早打ちしてから、ミント達へ所定の部屋に入れる鍵を渡してきた。
鍵には大きなアクリルの長い色付きの透明棒がキーホルダーとしてついており、いかにも古き良き時代の懐かしさを思い出させる。そんなルームキーは紛失時にもすぐに見つけられる事から、昨今のカードリーダー式とは違う利便性と古典的な風情を感じさせるのだ。
「…あれ?」
その時、ミントとクミンの耳にそんな女性の独り言が聞こえてきた。
各自鍵を受けとり、自分の部屋へ荷物を置きに旅行用のトランクを転がしていた所に、聞き覚えのある声が響いたのだ。ミントもクミンもそちらへ目を向けると、
「あれ?」
二人とも、見覚えのある顔だった。黒髪ロングをクリップで一つにまとめた、化粧は少し控えめだけど目に力がある若い女性レセプションスタッフ。ミントは名前をあげた。
「…美紀さん?」
するとその「美紀」と呼ばれた女性も、自身が抱いた疑問がただの思い違いではないと気付いた安堵からか、僅かに安堵を浮かべた表情でミント達の元へ歩いてきた。
彼女は何を隠そう、少し前までミント達が経営する合同会社オレガノのレンタル彼女として勤務していた、元スタッフの一人その人であった。
(つづく)
12
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
竜華族の愛に囚われて
澤谷弥(さわたに わたる)
キャラ文芸
近代化が進む中、竜華族が竜結界を築き魑魅魍魎から守る世界。
五芒星の中心に朝廷を据え、木竜、火竜、土竜、金竜、水竜という五柱が結界を維持し続けている。
これらの竜を世話する役割を担う一族が竜華族である。
赤沼泉美は、異能を持たない竜華族であるため、赤沼伯爵家で虐げられ、女中以下の生活を送っていた。
新月の夜、異能の暴走で苦しむ姉、百合を助けるため、母、雅代の命令で月光草を求めて竜尾山に入ったが、魔魅に襲われ絶体絶命。しかし、火宮公爵子息の臣哉に救われた。
そんな泉美が気になる臣哉は、彼女の出自について調べ始めるのだが――。
※某サイトの短編コン用に書いたやつ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる