オレガノ🌿 -Long Life-

Haika(ハイカ)

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第一章 その彼女、手料理あげればレンタルできます!

01. おいしい手料理を振る舞える男性って、いいですよね。

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 “俺”の“彼”女、略して「オレガノ」。
 レンタル彼女を利用するのに必要なのは、依頼者の手作り料理、一食分。

 そう。現金ではなく、手作り一食分。プランはたったそれだけだ。
 つまり、手料理さえ持ってきてくれれば、その彼女とは二時間までデートできる。
 果たして、そんなうまい・・・話があると思うだろうか? 驚くなかれ。答えは「YES」だ。


 昼下がり。西新宿の一角にある、小さな複合ビル。
 その中の三階をテナントに借りている、小さなお小遣いサイトの運営会社。グリーンハーブのイミテーションを壁にたくさん装飾した、合同会社オレガノの事務所だ。
 「先月のインセンティブ、三十五件かぁ。少ないなぁ」
 オレガノの若き代表取締役社長、鯨井くじらいみんとミントはそんな独り言をつぶやき、はぁと深い溜息をついた。
 まだ起業して経験も浅いゆえ、不安も大きいのだろう。黄土色のテーラードジャケットに白いシャツ、黒いデニム、そして黄緑色を基調とした革ベルトのシンプルな腕時計に合わせる様に前髪をセンター分けしたミントの色白い額が、僅かに眉間に皺を寄せていた。

 カランカラーン。

 出入口のドアにかけられた、レトロな木製の鈴が鳴る。
 一人の小柄で細身の男性が、二段重ねの半透明のタッパーを入れたレジ袋を持ち、この相談窓口へと訪れた。
 度が強い黒縁眼鏡に、長い前髪のショート、カーキのブルゾンに濃灰色のスキニージーンズ。背中には黒くて大きなリュックサックを背負っており、成人にしては少し幼く感じるその顔つきから、まるでプライベートでは電車の撮影を好んでいそうな印象がある。
 世間では、そんな見た目の弱者男性を「チー牛」なんていうらしいが、それはさておき持ってきた手料理は漂ってくる香りからして、とても美味しそうであった。
 ミントは機転を利かせ、すっと立ち上がった。

 「三時に予約した細田さんですね。お待ちしておりました」

 細田と呼ばれた男性が「あ、ど、どうも」と小さな声でたどたどしい返事をし、身を細める様にして来客用の椅子に腰かけ、タッパーの入った袋を窓口のテーブルに静かに置く。ミントはそれを穏やかな笑顔で受け取った。

 「そちらが、今回のプランでお持ちいただいた手料理で間違いないですか?」
 「あ、はい」
 「ありがとうございます。では先日ご説明しました通り、こちら一旦弊社でお預かりしますので、今から数分以内に本日の彼女をお連れ致します。それまでの間、あちらに充電コードとフリーwi-fiを設けていますので、どうぞご自由にご利用下さい」
 「あ、あぁ、はい。ありがとう、ございます」

 細田が、まるで鶏の様な首の動きで返答した。
 ミントはそんな細田の「慣れていない感満載」の振る舞いを背に、急いでその「手料理」を別室へ持っていった。

(つづく)
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