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第一章 その彼女、手料理あげればレンタルできます!
07. 最後は笑顔で「ごちそうさま」! お仕事お疲れ、また明日。
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「「いただきます」」
手を合わせ、手料理を御馳走する二人。
料理の見た目は決して派手ではないが、味は保証できる。
ほくほくの卵を一噛みする度に、じんわりと溢れる出汁が口いっぱいに広がるのだ。しつこくないシンプルな味だからこそ、白飯もどんどん進む。ときどき漬物も挟んでおく事で、程よい塩分補給とお口直しにもなる。
そうなると和食の中で唯一紛れ込んでいる洋食、トマトスープとの相性が少し気になるが、それもミントの手にかかれば心配無用。クミンがスープを口にし、わぁと笑顔になった。
「へぇ、卵料理と合うのね! おいしい」
「スープの上に、香りづけでほんの少しパセリとオレガノをふりかけたんだ。洋食でも、卵とトマトを使う料理にはアンチョビやハーブが使われることがあるから、今日のだし巻き卵にも合うかなと思ってね」
「なるほどね。食の異文化交流ってやつだ」
クミンからそういわれて悪い気がしないのだろう、ミントは嬉しそうに頷いた。
ところで、卵とトマトを使った洋食といえば「オムライス」を連想する人が多いと思うが、実はオムライスは日本発祥の料理だ。
その理屈でいけば、今回の料理も納得の組み合わせといえるだろう。
こうして二人は今夜の料理を完食。「ごちそうさま」と手を合わせ、後片づけへと移った。
食器洗いはクミンの担当だ。その間、ミントはテーブルを拭いたり、帰り支度を行う。
「料理できる人って羨ましいなー。私ったら、そういうのからっきしダメだからさ。家に帰ってもインスタントだけだし、これじゃあ、いつになっても実家に顔だせないや」
「まぁ、誰にだって得手不得手はあるから。クミンには『化学分析』という誇れるものがあるだろう? その出資があったからこそ、この会社を立ち上げる事もできた」
「私、それしか取り柄がないのよ? 物心ついた時から、ずーっと親に勉強しろ勉強しろ言われて育ったもの。ミントも、小学校は一緒だったから知ってるでしょ?」
ミントとクミンはもうすぐ三十路を迎える。共に独身で、縁談などほぼ皆無だ。
そうなると、少なくともクミンの実家は「娘はいつ結婚するんだ」といい、世間体を気にしている事だろう。ミントは僅かに落胆の表情を浮かべた。
――俺みたいに、料理を男がやるなんて家庭は、きっと御法度なんだろうな。
と。
カランカラ~ン。
「ヘイ。しゃちょーたち、いるネ。いい匂いするナァ」
その時、出入口から黄色のランニングジャージ姿にピンクのキャップを被った、あの大柄な黒人男性が入ってきた。バンブーだ。
その瞬間、ミント達は機転を利かせ「おかえり!」と笑顔で出迎える。
「このまま直帰だと思ったから、食べちゃったよ。バンブーの分がなくてごめんな」
「ダイジョブですヨ! あの彼女、大変だっただから見に来たネ」
「カリンさんなら帰ったよ。あとはレポートが届き次第、モニタリング情報を欲しがっている各出会い系サイトへと売り出し、ここの利益に繋げる。その方がカリンさん達に給料が入ると分かっているから、大丈夫だろう」
「つまり、それだけの見返りがあるって事よねー。あ! 話変わるけど、明日のレンタルって依頼者さん、遊園地へ連れて行きたいとか言ってなかった?」
と、ここは食器洗いを終えたクミンがきいた。ミントが思い出したのだろう、途端に苦笑いを浮かべる。
「言ってたなぁ。でも次の依頼者のあの感じ、バンブーをお化け屋敷に行かせる程は…」
「ファ!? ノー! 私、おばけダメ! 女の子ナイちゃう!」
なんて、あの時の激高とは想像もつかない程に怯えるバンブーを見て、ミント達は笑った。
そして部屋の電気を消し、その場を後にする。
最後は全員、笑顔で帰路についたのだった。
“俺”の“彼”女、略して「オレガノ」。
レンタル彼女を利用するのに必要なのは、依頼者の手作り料理、一食分。
そんな変わり種の商売を行っている、料理上手の社長と、出資者である化学分析技能士。
彼らは明日もまた、新たなレンタル彼女を紹介し、情報収集に明け暮れるのであった。
(第一章 完)
手を合わせ、手料理を御馳走する二人。
料理の見た目は決して派手ではないが、味は保証できる。
ほくほくの卵を一噛みする度に、じんわりと溢れる出汁が口いっぱいに広がるのだ。しつこくないシンプルな味だからこそ、白飯もどんどん進む。ときどき漬物も挟んでおく事で、程よい塩分補給とお口直しにもなる。
そうなると和食の中で唯一紛れ込んでいる洋食、トマトスープとの相性が少し気になるが、それもミントの手にかかれば心配無用。クミンがスープを口にし、わぁと笑顔になった。
「へぇ、卵料理と合うのね! おいしい」
「スープの上に、香りづけでほんの少しパセリとオレガノをふりかけたんだ。洋食でも、卵とトマトを使う料理にはアンチョビやハーブが使われることがあるから、今日のだし巻き卵にも合うかなと思ってね」
「なるほどね。食の異文化交流ってやつだ」
クミンからそういわれて悪い気がしないのだろう、ミントは嬉しそうに頷いた。
ところで、卵とトマトを使った洋食といえば「オムライス」を連想する人が多いと思うが、実はオムライスは日本発祥の料理だ。
その理屈でいけば、今回の料理も納得の組み合わせといえるだろう。
こうして二人は今夜の料理を完食。「ごちそうさま」と手を合わせ、後片づけへと移った。
食器洗いはクミンの担当だ。その間、ミントはテーブルを拭いたり、帰り支度を行う。
「料理できる人って羨ましいなー。私ったら、そういうのからっきしダメだからさ。家に帰ってもインスタントだけだし、これじゃあ、いつになっても実家に顔だせないや」
「まぁ、誰にだって得手不得手はあるから。クミンには『化学分析』という誇れるものがあるだろう? その出資があったからこそ、この会社を立ち上げる事もできた」
「私、それしか取り柄がないのよ? 物心ついた時から、ずーっと親に勉強しろ勉強しろ言われて育ったもの。ミントも、小学校は一緒だったから知ってるでしょ?」
ミントとクミンはもうすぐ三十路を迎える。共に独身で、縁談などほぼ皆無だ。
そうなると、少なくともクミンの実家は「娘はいつ結婚するんだ」といい、世間体を気にしている事だろう。ミントは僅かに落胆の表情を浮かべた。
――俺みたいに、料理を男がやるなんて家庭は、きっと御法度なんだろうな。
と。
カランカラ~ン。
「ヘイ。しゃちょーたち、いるネ。いい匂いするナァ」
その時、出入口から黄色のランニングジャージ姿にピンクのキャップを被った、あの大柄な黒人男性が入ってきた。バンブーだ。
その瞬間、ミント達は機転を利かせ「おかえり!」と笑顔で出迎える。
「このまま直帰だと思ったから、食べちゃったよ。バンブーの分がなくてごめんな」
「ダイジョブですヨ! あの彼女、大変だっただから見に来たネ」
「カリンさんなら帰ったよ。あとはレポートが届き次第、モニタリング情報を欲しがっている各出会い系サイトへと売り出し、ここの利益に繋げる。その方がカリンさん達に給料が入ると分かっているから、大丈夫だろう」
「つまり、それだけの見返りがあるって事よねー。あ! 話変わるけど、明日のレンタルって依頼者さん、遊園地へ連れて行きたいとか言ってなかった?」
と、ここは食器洗いを終えたクミンがきいた。ミントが思い出したのだろう、途端に苦笑いを浮かべる。
「言ってたなぁ。でも次の依頼者のあの感じ、バンブーをお化け屋敷に行かせる程は…」
「ファ!? ノー! 私、おばけダメ! 女の子ナイちゃう!」
なんて、あの時の激高とは想像もつかない程に怯えるバンブーを見て、ミント達は笑った。
そして部屋の電気を消し、その場を後にする。
最後は全員、笑顔で帰路についたのだった。
“俺”の“彼”女、略して「オレガノ」。
レンタル彼女を利用するのに必要なのは、依頼者の手作り料理、一食分。
そんな変わり種の商売を行っている、料理上手の社長と、出資者である化学分析技能士。
彼らは明日もまた、新たなレンタル彼女を紹介し、情報収集に明け暮れるのであった。
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