妹はロリドラゴン

シルル

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泣いてねーやい!

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どれだけ歩いただろうか。
少なくとも1時間は歩いてると思うんだが、景色は一向に変わらない。
ひたすら続く大草原。
並行して延々と広がる星空。
寒さだけが徐々に増していってる。

……目の前を黙って歩く少女、シヴァティアは寒くないんだろうか。

「なぁ、寒くないのか?」

訊いてみた。

「別に」
「いやいや、だってお前裸に上ジャージだ「別に」けだ、ろって、まあいいけどさ、大丈夫なんなら」
「ん」

大丈夫じゃなさそうだから訊いたんだけどな。
なぜそこで強がる。
肩、少し震えてるじゃねえか。

「…………」

しゃーねえか。
俺は小さく嘆息すると、ジャージ(下)に手をかけた。
下はトランクスだからセーフセーフ。
ギリギリで事案にはならない! ……はずだ!

「なに、してるの」
「待て話し合おう」

気がつけば、ズボン半ぬぎの俺をシヴァティアが冷ややかな視線で見下ろしていた。

「なにが違うの」
「何もかも、と言わざるをえない」
「なるほど。あなたの存在が間違いだった」
「待つんだ! 今のは俺の説明が悪かった!ワンモアチャンスプリーズ」
「わん、もあ……? ちょっとよくわからない。けどダメ」

圧倒的無慈悲!
名誉挽回のチャンスさえもらえなかった。
まずい、このままでは義妹(仮)の背後でズボンを下ろしていた変態になってしまう!
違うんだ! 
純粋にお前の事を心配したが故の脱衣なんだよ!
そう言いつのろうとした時だった。

「あそこ」

短く、それだけ言って、シヴァティアは真っ直ぐ正面を指差した。
その指がさし示す遥か前方。
見間違いじゃない。
ようやくの変化の訪れに、俺は僅かに笑みをうかべると、

「森だ」

そう言って、ズボンを引き上げたのだった。

■ ■ ■ ■ ■

森に入って更に歩いたところ。
まるで、ここで世界は終わっていると言わんばかりに、立ちはだかる崖。
左右どちらも平行線
上を見上げれば霞んで見える。
よもや、ここを登ると言うのではあるまいな、このドラゴンガールは。
考えただけで、思わず口元が痙攣する。

「こっち」

などと心配している俺を余所に今度は壁伝いに歩き出す。
あのお嬢さん、まだ歩くんです?
正直もうヘトヘトだよ。
足が棒のようだとはこのことだよ?

「もう少し」

あれ、顔に出てたか。
一度こっちを振り返ってそう言うと彼女は再びは歩き出した。

岩肌に隠れるように口を開けた洞窟にたどり着くまで、そう時間はかからなかった。

■ ■ ■ ■ ■

「マジか」

顔面を引きつらせながら思わずそう呟いてしまった。
いや、だってこの洞窟はヤバい。
視覚、嗅覚、感覚、直感その全てがレッドアラートを鳴らしている。
夜だから、なのかは分からないけど、入り口から1メートルほどが辛うじて見える状態。
その奥は完全に闇だ。

「なあシヴァティア。これ入っても大丈夫なんだよな。封印されてる裏ボス級のチートモンスターなんていないんだよな? お兄ちゃん超心配なんだけど」
「なに言ってるかわからない。でも大丈夫。このなか寒くない」

なぜか得意そうに『むふー』と息を吐くと、そのままトテトテと闇の奥へと進んでいく。
ぐぬぬ、仕方ないか。
脳みそで鳴り響くアラートを無理やりオフにして、洞窟へと踏み込んだ。
瞬間だった。
今までの凍えるような寒さが嘘みたいにおさまった。

「やっぱりファンタジーかよ」

まるで外との境界線に膜でも張られてるみたいだ。もしかして、結界とかだったりするんだろうか。
む、洞窟の外に手を出すとやっぱり寒いのな。

「どう」
「あー、うん。確かに寒くないな。少し生ぬるい感じだけど、まぁ我慢できなくも無いしな。とりあえず、ここが目指してた場所ってことでいいんだよな?」

コクリと頷くシヴァティア。
あぁ、長い道のりだった。
ようやく寒さから解放されたのはいいんだけど、もう体力とか足とかが限界に近い。

「とりあえず一休憩していいか。もうヘトヘトなんだよ」

もうムリ。
ノド乾いた。
おなか減った。
しんどい。
疲れた。
ぐぅ~ぎゅろろろろ。
どうやら、腹の虫もご立腹みたいだ。

かと言って食べ物なんて――、あった! あったぞ、そういえば!
マジか!
神様、いや俺よグッジョブ!
たしかポケットの中に――。

「じゃーん、チュッパチャップス~」

テレレ レッ テレー!(ネコ型ロボットの効果音)
疲れたときは糖分糖分!
ええい、とりにくいビニールめ。いっそこのまま食ってやろうか。
って、ああクソ、中途半端に破れあがって!

「いいにおい。なにそれ」
「あぁ、これは飴だよ。――って言っても分からないか」
「?」

ええい、わずらわしい。
もう力づくで剥いてくれるわ!

「あぁ~、うめえ~~~。疲れた体に染み渡る。やっぱチュッパはチェリー味だよなぁ~」
「甘い匂い、食べ物」
「そそ、食べ物。なんつーか、俺の故郷の味だな。シヴァティアも1個食べてみるか?」
「たべる」

即答かよ。
まぁ、ずっとモノほしそうに俺のチュッパ眺めてたからな~。
よだれ出てるし。
俺は苦笑しながらポケットから残りの二つを取り出と。

「さあ選ぶが良い。好きな方をやろう」
「むぅ」

瞳をキラキラさせながら、手の上のチュッパを真剣に覗き込むシヴァティア。
つんつんしたり、くんくんしたりと、まるで未知との遭遇だな。
あと、地味に手がしんどいから早め選んでほしいところ。

「おーい、決まったか~」
「むずかしい。どっちがおいしい?」
「ん~、どれどれ」

実を言うとチェリー以外の二つは適当に選んだから俺も味を知らないんだよね~。てへぺろ!
たしか3つで100円だったから残りは適当に買ったはず。
はて、俺のくじ運はいったいナニ味を引いたのだろうか。

【プリン味】
【ブルーベリー味】

お、マジか!
なかなか悪くない。

「すごく甘いのとちょっとスッパイ果物系、どっちがいい」
「すごくあまいの!」
「ほいよ。包装とってやるからちょっと待っとけ――、ほれ」

俺はそう言ってプリン味のほうをあげた。
俺はどっちかっていうとフルーツ系が好きだからブルーベリーが残ってくれた方がありがたい。
しかし、やっぱ女の子は甘い物好きなのはドラゴンでも変わらないのか。
もしかしたら世界の真理なのかもしれない。

「おおっ! おおおおっ!! なんとあまい!」

もごもご、ころころ。
ほっぺたを飴で膨らませながら、目を見開いて感動している。
まさかそんなに喜んでもらえるとは。

――この上機嫌、もらったッ!

「ほれほれ、このお兄様に言うことがあるだろ? ありがとう、おにいちゃんの一言が聞こえないんだが? ん~?」
「さようなら。みも知らぬ人」
「待って!? 俺を置いて奥に行かないで! 嘘だよね!? あれ、完全に姿見えないんだけど、そこにいるんだろ? お願いだから返事して!?」

俺の叫びは虚しく洞窟の奥へ響いていく。
無論、返事は無い。
あかん。
あかんわ工藤。これ完全に置いて行かれとるで!

「なんて服部してる場合じゃねえ! シヴァティア~、置いてかないでくれ~」

慌てて立ち上がろうとした、その時だった。

「……じーー」

暗闇からぬっと顔だけが出てきた。
いるのかよ!

「お、俺、置いていかれたのかと。もうダメかと、」
「泣くな。少年」

ば、バーロー! 
泣いてねーやい!
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