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ニ章
第四十五話 注射器
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ぐるぐる、ぐるぐると、平らになった森を駆け抜けるバギー
ヨツンヴァインの動きの隙を読み方向転換し
先程当てた左足へ駆け抜ける
「ハル!!!いまだ!!」
「はぁぁぁ!!!」
ザン という音、何かが砕け散る音。砕け散った物とは、先程アガレズによって作られた触手剣だった
「っだああ!やっぱかてぇな!!」
ハルをささえていたカイムがぼやく。同じ行為をしていたキクも舌打ちをして感情をあらわにする
そのとき
「ぎああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
「ーーっ!!!!おい!!くるぞ!」
叫び声、そして振り下ろされる巨人の大きな右手
「走れええええええ!!!」
普段冷静なアガレズも声を大にしてペダルを踏み込む
が、バギーの進みがいつもより遅い
「ーーっ!」
「おい!!どうした!?アガレズッ!!!来るぞって!!」
「……ガソリンが…無くなってきた」
「ガソリンってなんだ!!?」
「説明してる暇はー無い!!!」
バギーから身を乗り出すレベルでペダルを踏み込むが、対して速くなったわけでもない。
「っそおおおお!」
それでもすすむ、すすんでいく、自分達のライフは1
あの巨大で一度攻撃されただけで、生きては帰れない
ーが、ヨツンヴァインの右腕は、大きな影となってアガレズたちに立ちはだかった
「グオオオオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
「わ」
視界が濁る。世界が暗転し、吹き飛ぶ
ドゴオオオン…と、いう擬音がふさわしいだろうか
直撃…とまではいかないものの、舞い散る土埃にバギーは巻き込まれた。
「ぎいああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
ーーーーーーーーーーーー
「けほっ……げっ……」
数十秒後
岩裏からキクが身を乗り出した。
頭から血を流して半ば四つん這いのようにしている
(ここまで吹き飛ばされたおかげでヨツンヴァインの視界から外れることが出来たな、少し休憩だ…)
「一応…土砂に巻き込まれただけですんだとは言え…
おい!!生きてるか?!」
「ああ……いきてるさ…」
そういって、数メートル先の土砂の中からアガレズが身を捩らせはいでてきた
「お前は良いんだよカス!!どうせ生きてるからな!みんなは!」
「ふっ…恐らく大丈夫だろうさ、俺達はヨツンヴァインの右手やひび割れる岩に直撃したわけじゃない。近くの土砂に埋まってるはず。直に這い上がってくるさ」
「まぁ…それもそうか、…ってクルマは!?壊れたか!?」
「壊れてない、だが、壊れかけてはいる」
アガレズの指を指した方向へ視線を送ると砂埃だらけでボロボロのバギーが佇んでいた
「ーおそらく、あと少しの戦いだろう、この車が壊れた時、それは俺達の死を意味する」
「それはあと何分くらいなんだ?」
「……10分くらいかな?」
「はぁ!?」
「ーーむぐ、ぐうう~ー、」
「!?」
焦り声を上げるキクを遮るようにガラッと音がし、そこからカイムとハルが這い出てきた
「お、おう…近くにいたのか、」
「けほ…っけほっ、死ぬかど思ったぜ」
「よかった…みんな無事で…げほっ…」
「…これで、全員揃ったな、よし」
「…よしじゃねぇ!!ここからどうやって勝つんだよ!!クソが!!!」
「バギーの燃料…さえあれば…」
「ねえよそんなもん!!」
アガレズとキクがいつどのように口論をはじめる
確かにそうだ。バギーが使えない以上、うかつにヨツンヴァインに近付くことも出来ない。ここから先に勝てる手段など、万に一つも…
「…アガレズ」
「ん?」
何かを考えたらであろうハルが声を漏らす。
アガレズの目線はハルへ移動した
「あまり期待してないけど、何か策でもあるの?もしかして」
「……さぁ?ね、どうして?」
「だって、お前はさっきから…余裕そうだ」
アガレズが体をハルへ向ける
「………どうだろうね、確かに、策は無い事はない。ただ、それで勝てるとは思わない」
「!!」
ハルの予感は当たった。そしてアガレズは静かに懐から小さな注射器を取り出す。どこか、悲しそうな顔をしていた。
「ーこれを使う」
「それ、アデルに見せてたヤツ…?なんだ?その中の液体…」
「これを使えば、巨大化してヨツンヴァインの力を得ることができる、一時的にね」
「…まじかそれ、最初から使えよ…!」
「服用には命の危険が伴うんだ。器である肉体が足りてないと途端に四肢が爆散する」
アガレズが淡々と説明する、その様子をみて思ったことをカイムは少時期に口にした
「あ~、何かしらの理由で使うのが嫌なんだな?死にたくないとか」
「ふっ…そのとおりだ。死にたくない」
「だせぇな」
キクが一蹴する。
「ーー俺は死にたくないのさ。まだやりたいことが山のようにある。ヨツンヴァインを倒すことと俺の命を天秤にかけた時、俺は迷わず自分の命を選択する。
…おれは、こんなところで死ねないのさ、うん」
アガレズのきっぱりとした物言いに、全員がだまる。
「…じゃーあ、もう勝てねぇってことか?」
「いや、」
「は?」
アガレズはキノコ族達を指さして、ささやく
「……さて、交渉をしよう。アガレズ族と、キノコ族で。俺がこの注射器を使うか、君たちが死ぬかの、ね?」
ーーー透明な男はそう言って、静かににやけた
ヨツンヴァインの動きの隙を読み方向転換し
先程当てた左足へ駆け抜ける
「ハル!!!いまだ!!」
「はぁぁぁ!!!」
ザン という音、何かが砕け散る音。砕け散った物とは、先程アガレズによって作られた触手剣だった
「っだああ!やっぱかてぇな!!」
ハルをささえていたカイムがぼやく。同じ行為をしていたキクも舌打ちをして感情をあらわにする
そのとき
「ぎああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
「ーーっ!!!!おい!!くるぞ!」
叫び声、そして振り下ろされる巨人の大きな右手
「走れええええええ!!!」
普段冷静なアガレズも声を大にしてペダルを踏み込む
が、バギーの進みがいつもより遅い
「ーーっ!」
「おい!!どうした!?アガレズッ!!!来るぞって!!」
「……ガソリンが…無くなってきた」
「ガソリンってなんだ!!?」
「説明してる暇はー無い!!!」
バギーから身を乗り出すレベルでペダルを踏み込むが、対して速くなったわけでもない。
「っそおおおお!」
それでもすすむ、すすんでいく、自分達のライフは1
あの巨大で一度攻撃されただけで、生きては帰れない
ーが、ヨツンヴァインの右腕は、大きな影となってアガレズたちに立ちはだかった
「グオオオオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
「わ」
視界が濁る。世界が暗転し、吹き飛ぶ
ドゴオオオン…と、いう擬音がふさわしいだろうか
直撃…とまではいかないものの、舞い散る土埃にバギーは巻き込まれた。
「ぎいああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
ーーーーーーーーーーーー
「けほっ……げっ……」
数十秒後
岩裏からキクが身を乗り出した。
頭から血を流して半ば四つん這いのようにしている
(ここまで吹き飛ばされたおかげでヨツンヴァインの視界から外れることが出来たな、少し休憩だ…)
「一応…土砂に巻き込まれただけですんだとは言え…
おい!!生きてるか?!」
「ああ……いきてるさ…」
そういって、数メートル先の土砂の中からアガレズが身を捩らせはいでてきた
「お前は良いんだよカス!!どうせ生きてるからな!みんなは!」
「ふっ…恐らく大丈夫だろうさ、俺達はヨツンヴァインの右手やひび割れる岩に直撃したわけじゃない。近くの土砂に埋まってるはず。直に這い上がってくるさ」
「まぁ…それもそうか、…ってクルマは!?壊れたか!?」
「壊れてない、だが、壊れかけてはいる」
アガレズの指を指した方向へ視線を送ると砂埃だらけでボロボロのバギーが佇んでいた
「ーおそらく、あと少しの戦いだろう、この車が壊れた時、それは俺達の死を意味する」
「それはあと何分くらいなんだ?」
「……10分くらいかな?」
「はぁ!?」
「ーーむぐ、ぐうう~ー、」
「!?」
焦り声を上げるキクを遮るようにガラッと音がし、そこからカイムとハルが這い出てきた
「お、おう…近くにいたのか、」
「けほ…っけほっ、死ぬかど思ったぜ」
「よかった…みんな無事で…げほっ…」
「…これで、全員揃ったな、よし」
「…よしじゃねぇ!!ここからどうやって勝つんだよ!!クソが!!!」
「バギーの燃料…さえあれば…」
「ねえよそんなもん!!」
アガレズとキクがいつどのように口論をはじめる
確かにそうだ。バギーが使えない以上、うかつにヨツンヴァインに近付くことも出来ない。ここから先に勝てる手段など、万に一つも…
「…アガレズ」
「ん?」
何かを考えたらであろうハルが声を漏らす。
アガレズの目線はハルへ移動した
「あまり期待してないけど、何か策でもあるの?もしかして」
「……さぁ?ね、どうして?」
「だって、お前はさっきから…余裕そうだ」
アガレズが体をハルへ向ける
「………どうだろうね、確かに、策は無い事はない。ただ、それで勝てるとは思わない」
「!!」
ハルの予感は当たった。そしてアガレズは静かに懐から小さな注射器を取り出す。どこか、悲しそうな顔をしていた。
「ーこれを使う」
「それ、アデルに見せてたヤツ…?なんだ?その中の液体…」
「これを使えば、巨大化してヨツンヴァインの力を得ることができる、一時的にね」
「…まじかそれ、最初から使えよ…!」
「服用には命の危険が伴うんだ。器である肉体が足りてないと途端に四肢が爆散する」
アガレズが淡々と説明する、その様子をみて思ったことをカイムは少時期に口にした
「あ~、何かしらの理由で使うのが嫌なんだな?死にたくないとか」
「ふっ…そのとおりだ。死にたくない」
「だせぇな」
キクが一蹴する。
「ーー俺は死にたくないのさ。まだやりたいことが山のようにある。ヨツンヴァインを倒すことと俺の命を天秤にかけた時、俺は迷わず自分の命を選択する。
…おれは、こんなところで死ねないのさ、うん」
アガレズのきっぱりとした物言いに、全員がだまる。
「…じゃーあ、もう勝てねぇってことか?」
「いや、」
「は?」
アガレズはキノコ族達を指さして、ささやく
「……さて、交渉をしよう。アガレズ族と、キノコ族で。俺がこの注射器を使うか、君たちが死ぬかの、ね?」
ーーー透明な男はそう言って、静かににやけた
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