タケノコの里とキノコの山

たけ

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ニ章 

第六十一話  人の殺し方

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ここはアポロ村 大浴場

男達は石で分断された右側の湯にいるが今は関係ない

漆黒の色をした湯から腐乱臭のようなモノがただよう
  
その見た目と相反して、入ってみると全身がしゅわしゅわと
とろけていくような感覚に包まれた


「よく見ると赤黒い液体混ざってないか…?
ほんっと…見た目じゃ判断できねぇな…この村は、くせ~…」


「イアン~そんな分析なんて今はい~よ…あ~~~きもぢー」


「なんだレイ 羽根を伸ばして…こんな所で」


「……わかってるよ。でも、そんなこと気にしてても、今は何も起こらない」


「…」

ここ入っているのは、レイとイアン、あとはアポロ族が数名、全員と言葉が通じないので、話しかけて仲良くなるようなことはないが…


ちなみにアポロ族に服を着るという文化は存在しないようだ。アポロ族特有の身体中に黒いもやを抱いたような体が本体のようだ。生殖器や胸の膨らみなどは一切見受けられない




「そういえば…ヨツンヴァイン、どうやって倒したんだ?いや、なんとなく知ってるけど…私達は倒れてて、実際見たのはのはハルとアガレズとレイとニグだけだ」


「ん~ハルのあの力でゴリ押したってよりも、感情が爆発した?見たいな?」


「は?“俺達はかつぞ!“で勝てるような相手じゃないだろ…ニグはともかく」


「力以上に、ハルの想いが強かったんだ…あいつは自己犠牲精神の塊…他人の為にどこまでも強くなれる…もう人の死ぬところは見たくないって、言ってた、
本当に………格好良い新人」


「ほぉ…」


イアンは後ろで両手を組み肩まで浸かる


ハルの事を笑顔で話すレイはどこか、いつもの“一級“とは違う“人間“だった


「レイってさ………」





「? 」





「ーーーーーハルの事 好きなの?」



「……………………え」














「その話!!!!!聞かせてくれないかい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」



ドン とドアを開ける音が響き、そこにいた客達が音の鳴る方向をみる、


声の主はアガレズ…キノコ族の言語を喋っているということは、今の発言は自分たちに向けた言葉と推測できる


「ぎゃあああああああああ!?」



「アガレズ!!!??クソ男!!!!!!!!出てけゃ!!!!」


「ははっ…クソ男ォ?」



「ちょっ…まて、入ってくん…………」



イアンはそのとき周りのアポロ族が目に入る、全員、アガレズが入ってきたというのに、誰一人として動揺していない。



そのとき…ほぼ確定的な一つの推測をした



「………アポロ族に、性は存在しないのか?」



「……あ」


レイも納得し、アガレズや周りのアポロ族をみつめる。全員 体にちがいはなかった



「…………ははははは!そのとうり!よくきづいた!ちなみに君達は男女分けて入ったが、元々男湯女湯なんてものは存在しない!ただ混雑を防ぐために温泉を分断してるだけさ!!それを何食わぬ表情で男女別れて入って………く、ははははははは!!」


イアンは先程動揺していた自分たちが滑稽で仕方が無いといったようすで笑うアガレズに顔をしかめる


「………ち!そういうことかよ……いやでもお前の声完全に男の声だし………鳥肌立ってきた」




「それはそういうものさ、アポロ族に声は違いあれど、体にはなんの差もない。君達の言う“男“のようでもないし、女(きみたち)のように、“胸が膨らんでいたり、下腹部に毛が生えたりもしていない“」


「やっぱお前出てけやああああああああああああああああああああァ!!!!!!!!」



イアンが叫ぶのを無視し、ざぶんと温泉に浸かるアガレズ。


「ーーああ、良いものだね」


「よくねぇ!!せめて喋んな!鳥肌が止まらねぇんだよ!レイと話してたのに話す内容忘れたし!!」


「う……」



レイは焦った表情で目をそらす、思い出さないでくれ、といった様子である。


「なら、こちらから話題を振ってもいいかい?」


「……なんだよ」


そして、深い間の後、アガレズはゆっくりと口を開いた。


「……謝りたい」


「…?」



「ーーー俺達は、沢山の罪なき人間を殺した」



「……………」


途端、先ほどの盛り上がりがうそかのように沈黙が走る



「キノコ族やタケノコ族が争う姿を遠くから見て、俺達は“愚かな種族だ“とさげずんでいた

だから、君達を殺すのはアリを踏み潰すのと同等の行為だった…」



「…そうかよ、」


「でも、違った。肌の違いや生き方の違い…君達も俺達も、同じ人間だった。


ーーそれを、謝らせてほしい」



温泉の熱さが、遠のいていくような感覚になる。
ここで謝罪を受けるなんて、思ってもいなかったから、むしろイアンは怒りがこみ上げるほどだ

「謝っても…命は戻ってこ………」


「………私達も、学んだよ、
命の奪い方っていうのかな…ただ敵対して、殺してるだけじゃ…だめなんだって、アガレズとよ出会いで…知った。本当に殺すべき人間…その見分け方。学んでいきたいな」



レイは申し訳無さそうに心境を語る。アガレズは面食らったようにこちらを見ていた


イアンにはそれが理解できなかった。まるで
、キノコ族の人生をめちゃくちゃにしたキノコ族を、肯定しているようだったから


「レイ…そんなわけねぇ!キノコ族のせいで、悲しみに満ちた奴らが大勢いる、キノコ族をぶっころしてやらなきゃ、皆報われないだろうが!!」



イアンの言葉を聞いたレイは、悲しそうにうつむく。そしてそのまま声を発した

まるでその声は、自分を慰めるようだった


「イアンは……アデルに家族を殺されたんだよね… 



「………ぁあ!!」


「それで…本当にアデルを殺したら、それは報われるというの?生きて帰ってくるの?結果として、イアンの家族は…………幸せになるの?」


「……っ」


「ーー私はそれを、学んでいきたい」





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