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I make study plan
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大学のオリエンテーションで履修について説明を受けた嵐は、教室の席に座ったまま頭を抱えていた。
「よくわかんないよぉ」
単位制、自分で決めなければならない履修科目、卒業に必要な単位の種類と量、先日まで高校でかっちりと決められた授業を受けてきた嵐は、どの単位をどう取ればいいのか、全くもって整理出来ていなかった。
そして、そうやって頭を悩ませているのは、嵐だけではない。
入学式の日に仲良くなった友達で隣に座っている唯を始め、この教室にいる新入生達の七割くらいは、途方に暮れていた。
「嵐ちゃん、どうしよう。なるべく同じ授業取ろうねって言ったけどさ」
「うん。わからないよ」
嵐と唯は、困った顔をしてお互いを見詰め合った。
履修届は二週間後には出さないといけないと言われたけれど、どれだけ時間があっても決められそうになかった。
嵐はどうすればいいのかと、履修要綱のページをめくりながら、さっき受けた説明を脳で反芻する。
確か、相談をしながら決めるといいと言っていた。友達とか、先輩とか。
でも入学したばかりで部活やサークルの勧誘もまだ受けていない自分達に、知り合いの先輩なんて――。
「あ、せんぱい」
知り合いとまでは言えないかもしれないけれど、一度話したことのある先輩ならいると、嵐は思い出した。
「唯ちゃん、教えてくれる先輩、いるかも」
「え、ほんと?」
嵐は頷き、唯の手を取って一緒に立ち上がる。
目指すは二十階にあるゼミ室だ。
嵐は記憶頼りに歩いたルートを辿って、目的の部屋に向かう。
掲げられたプレートは『英語文化研究室 ゼミ室』と書かれている。この研究室は嵐の通う文学部の中では随一と言っていいくらい人気の教授が担当しているのだと、同学年のみんなが話しているのを聞いたばかりだった。
嵐はドアをノックしてみる。
少し間を置いて、一人の男子学生が内側からドアを開けてくれた。ざわざわと室内の会話が嵐と唯の立つ廊下に漏れて出て来る。
「はい、何か用?」
「あの、真先輩か、梓先輩はいますか?」
「桐谷か瀬利先輩? おーい! 桐谷ー! お前に客ー!」
嵐に応対してくれた先輩は、振り返って声を張り上げてくれた。
「ん? 僕?」
奥の方の椅子に座っていたその人は、不思議そうな顔をしながらもドアへと向かって来てくれた。
それは間違いなく、あの日に、都会の景色を見せてくれた優しい先輩に間違いなくて、嵐はほっと一安心する。
「あれ、こないだの。えっと、嵐ちゃん、だよね?」
「はいっ!」
真が名前を覚えてくれていたので、嵐は一先ず胸を撫で下ろした。
「なんだよ、真。こんなかわいい子といつ知り合ったんだよ」
「研究室に真面目に来てたらいいことがあるんだよ」
真は始めに応対してくれた先輩と軽口を叩いてから、ドアからするりと出てきて、ぱたんと閉めてしまった。
「どうしたの?」
真に訊ねられて、嵐はごくんと唾を飲み込んだ。
急に来てしまったから緊張で咄嗟に声が出ない。
履修要綱を抱き締める腕に籠った力が、嵐の胸を弛ませる。
後ろからは唯の不安そうな視線が突き刺さるような感じまでして、嵐はここに来てすっかり怖じ気付いてしまった。
不思議そうに言葉を発さない嵐を見ていた真だったが、その視線が嵐の抱く冊子に行き着いた。
「あ、履修の説明を聞いたところなのかな?」
真が水を向けてくれて、嵐はこくんと頷いた。
真は視線を嵐の後ろに並んで立っていた唯にも向ける。
「それで、よくわからなくて、訊きに来た?」
「め……はい、その、他に知っている人もいないから……」
迷惑だったかもしれない、と嵐は今更ながら尻込みする。
けれど真はにこやかに笑って、その不安を取り除いてくれた。
「いいよ、教えてあげる。ちょっと待ってて」
真は一度部屋の中へと戻って行った。
ぱたんと目の前で閉じたドアの音が緊張の糸を切って、嵐は体をふらつかせた。
「わ、嵐ちゃん、だいじょうぶ?」
唯が慌てて嵐の肩を支えてくれて、嵐は足を踏ん張り直すことが出来た。
「うん。よかったよぉ」
「ありがとう、嵐ちゃん、勇気を出して聞いてくれて」
はにかみながらお礼を言ってくれる唯に、嵐は、真にお願い出来てよかったと喜びを噛みしめる。
ちょうどそこに、真がまたドアを開けて現れた。手には何か紙を持っている。
「お待たせ。この部屋はうるさいから、別の教室使おうか?」
二人は真の後に着いて行って、空き教室に潜り込んだ。
そこで真が一人、嵐と唯が二人並んで、向い合せに席に座る。
「はい、これ、使って」
真が二人に差し出したのは、履修要綱の最後のページになる申請書のコピーだった。月曜日から金曜日までと特別授業の一枠が横並びになって列を作り、一限から六限までの授業コマが行を作っている。
「いきなり提出用のに書くと直せないから、コピーを取って書き込むといいよ。コマにあてはめながら考えた方が、わかりやすいからね」
早速、経験者の知恵を授けてもらって、嵐と唯が揃って目を輝かせる。
「そっか、コピーなら書いたり消したりして汚しても問題ないですもんね!」
唯は肩を弾ませて、自分の理解を真に伝えた。
真が、そうだよ、と頷いて話を進める。
「で、まずは必修科目があるでしょ? そこを埋めていく」
「必修……あ、必ず取らないといけないやつ」
嵐はオリエンテーションで説明された内容を思い出して、必修科目が掲載されたページを開いて貰った紙に書き込んでいく。
一年生の前期では必修科目だけで七つも枠が埋まってしまった。
「あとは、選択必修と選択から好きなのを取ればいいんだけど、それぞれ卒業に必要な単位数があるだろう? だいたいそれを七で割った単位数を取るようにするといいよ」
「七で割るんですか?」
首を傾げて問い返す唯に、真は頷いた。
「大学は四年間で、うちは前期後期制、八回履修登録をするんだ。でも、四年の後期とかいうぎりぎりまで単位を残すと卒業できなくなるかもしれないから、余裕を持って取ったほうがいい」
なるほど、と嵐は心の中で頷いた。
それから真はオリエンテーションで教えてもらったことや、オリエンテーションでは教えてくれなかったことを、一つ一つ教えながら、二人が履修計画を書き込むのをチェックしてくれた。
「授業の割り振りは、月曜から金曜まで均等に割り振って毎日大学に来るか、オフの日を作って他の曜日に詰め込むかだね。バイトをたくさんしなきゃいけないなら、オフを作った方がいいけど、そのために授業を受ける曜日を偏らせるのは大変になるよ」
嵐は真に首を振った。
両親からの仕送りもあるし、住まいは灯理と折半だし、そんなに慌ててバイトをする必要はなかった。いつかは小遣い稼ぎでやならきゃとも思うけど、切羽詰まってる訳ではない。
唯もバイトはするつもりでも、嵐と授業を合わせるのを優先してくれた。夜や土日で働くので大丈夫と、時給を電卓アプリで計算しているのを見て、嵐は自分よりも大人っぽいとちょっと憧れを抱いたりもしてた。
「ふふ、こっちだと高校生でもバイトするのが普通だから、時給の計算は慣れてるんだよ」
「めっ。あたしの高校、バイト禁止だった」
「地方だと、まだまだバイトは厳しいみたいだよね。僕の友達も似たようなこと言ってるやついるよ」
何はともあれ。
嵐と唯は、結局全部の授業を丸被りにして履修計画を完成させた。真にもチェックをしてもらって、問題ないとのお墨付きだ。
「ありがとうございました、先輩」
「真さん、ありがとうございます」
後輩二人に頭を下げられて、真も満更でもないと微笑を浮かべる。
「お役に立ててよかったよ。またいつでも頼ってよ」
「ふふ、わたし、先輩がいるなら、このゼミに入りたいかもしれません」
唯が冗談めかしながら言うのを聞いて、嵐はゼミのこともまた考えないといけないんだなとぼんやりと考える。
でも、まずは今日作った履修をしっかりと体に馴染ませる方が先だ。
文学部のゼミ決定は、一年の終わりになる。それまでにこの大学で何を勉強して卒業していくか決めなきゃいけないんだと思うと、嵐は全然時間がないように思えて、けれどまだ上手く自覚が持てなくて、ちょっぴり不安が残るのだった。
「よくわかんないよぉ」
単位制、自分で決めなければならない履修科目、卒業に必要な単位の種類と量、先日まで高校でかっちりと決められた授業を受けてきた嵐は、どの単位をどう取ればいいのか、全くもって整理出来ていなかった。
そして、そうやって頭を悩ませているのは、嵐だけではない。
入学式の日に仲良くなった友達で隣に座っている唯を始め、この教室にいる新入生達の七割くらいは、途方に暮れていた。
「嵐ちゃん、どうしよう。なるべく同じ授業取ろうねって言ったけどさ」
「うん。わからないよ」
嵐と唯は、困った顔をしてお互いを見詰め合った。
履修届は二週間後には出さないといけないと言われたけれど、どれだけ時間があっても決められそうになかった。
嵐はどうすればいいのかと、履修要綱のページをめくりながら、さっき受けた説明を脳で反芻する。
確か、相談をしながら決めるといいと言っていた。友達とか、先輩とか。
でも入学したばかりで部活やサークルの勧誘もまだ受けていない自分達に、知り合いの先輩なんて――。
「あ、せんぱい」
知り合いとまでは言えないかもしれないけれど、一度話したことのある先輩ならいると、嵐は思い出した。
「唯ちゃん、教えてくれる先輩、いるかも」
「え、ほんと?」
嵐は頷き、唯の手を取って一緒に立ち上がる。
目指すは二十階にあるゼミ室だ。
嵐は記憶頼りに歩いたルートを辿って、目的の部屋に向かう。
掲げられたプレートは『英語文化研究室 ゼミ室』と書かれている。この研究室は嵐の通う文学部の中では随一と言っていいくらい人気の教授が担当しているのだと、同学年のみんなが話しているのを聞いたばかりだった。
嵐はドアをノックしてみる。
少し間を置いて、一人の男子学生が内側からドアを開けてくれた。ざわざわと室内の会話が嵐と唯の立つ廊下に漏れて出て来る。
「はい、何か用?」
「あの、真先輩か、梓先輩はいますか?」
「桐谷か瀬利先輩? おーい! 桐谷ー! お前に客ー!」
嵐に応対してくれた先輩は、振り返って声を張り上げてくれた。
「ん? 僕?」
奥の方の椅子に座っていたその人は、不思議そうな顔をしながらもドアへと向かって来てくれた。
それは間違いなく、あの日に、都会の景色を見せてくれた優しい先輩に間違いなくて、嵐はほっと一安心する。
「あれ、こないだの。えっと、嵐ちゃん、だよね?」
「はいっ!」
真が名前を覚えてくれていたので、嵐は一先ず胸を撫で下ろした。
「なんだよ、真。こんなかわいい子といつ知り合ったんだよ」
「研究室に真面目に来てたらいいことがあるんだよ」
真は始めに応対してくれた先輩と軽口を叩いてから、ドアからするりと出てきて、ぱたんと閉めてしまった。
「どうしたの?」
真に訊ねられて、嵐はごくんと唾を飲み込んだ。
急に来てしまったから緊張で咄嗟に声が出ない。
履修要綱を抱き締める腕に籠った力が、嵐の胸を弛ませる。
後ろからは唯の不安そうな視線が突き刺さるような感じまでして、嵐はここに来てすっかり怖じ気付いてしまった。
不思議そうに言葉を発さない嵐を見ていた真だったが、その視線が嵐の抱く冊子に行き着いた。
「あ、履修の説明を聞いたところなのかな?」
真が水を向けてくれて、嵐はこくんと頷いた。
真は視線を嵐の後ろに並んで立っていた唯にも向ける。
「それで、よくわからなくて、訊きに来た?」
「め……はい、その、他に知っている人もいないから……」
迷惑だったかもしれない、と嵐は今更ながら尻込みする。
けれど真はにこやかに笑って、その不安を取り除いてくれた。
「いいよ、教えてあげる。ちょっと待ってて」
真は一度部屋の中へと戻って行った。
ぱたんと目の前で閉じたドアの音が緊張の糸を切って、嵐は体をふらつかせた。
「わ、嵐ちゃん、だいじょうぶ?」
唯が慌てて嵐の肩を支えてくれて、嵐は足を踏ん張り直すことが出来た。
「うん。よかったよぉ」
「ありがとう、嵐ちゃん、勇気を出して聞いてくれて」
はにかみながらお礼を言ってくれる唯に、嵐は、真にお願い出来てよかったと喜びを噛みしめる。
ちょうどそこに、真がまたドアを開けて現れた。手には何か紙を持っている。
「お待たせ。この部屋はうるさいから、別の教室使おうか?」
二人は真の後に着いて行って、空き教室に潜り込んだ。
そこで真が一人、嵐と唯が二人並んで、向い合せに席に座る。
「はい、これ、使って」
真が二人に差し出したのは、履修要綱の最後のページになる申請書のコピーだった。月曜日から金曜日までと特別授業の一枠が横並びになって列を作り、一限から六限までの授業コマが行を作っている。
「いきなり提出用のに書くと直せないから、コピーを取って書き込むといいよ。コマにあてはめながら考えた方が、わかりやすいからね」
早速、経験者の知恵を授けてもらって、嵐と唯が揃って目を輝かせる。
「そっか、コピーなら書いたり消したりして汚しても問題ないですもんね!」
唯は肩を弾ませて、自分の理解を真に伝えた。
真が、そうだよ、と頷いて話を進める。
「で、まずは必修科目があるでしょ? そこを埋めていく」
「必修……あ、必ず取らないといけないやつ」
嵐はオリエンテーションで説明された内容を思い出して、必修科目が掲載されたページを開いて貰った紙に書き込んでいく。
一年生の前期では必修科目だけで七つも枠が埋まってしまった。
「あとは、選択必修と選択から好きなのを取ればいいんだけど、それぞれ卒業に必要な単位数があるだろう? だいたいそれを七で割った単位数を取るようにするといいよ」
「七で割るんですか?」
首を傾げて問い返す唯に、真は頷いた。
「大学は四年間で、うちは前期後期制、八回履修登録をするんだ。でも、四年の後期とかいうぎりぎりまで単位を残すと卒業できなくなるかもしれないから、余裕を持って取ったほうがいい」
なるほど、と嵐は心の中で頷いた。
それから真はオリエンテーションで教えてもらったことや、オリエンテーションでは教えてくれなかったことを、一つ一つ教えながら、二人が履修計画を書き込むのをチェックしてくれた。
「授業の割り振りは、月曜から金曜まで均等に割り振って毎日大学に来るか、オフの日を作って他の曜日に詰め込むかだね。バイトをたくさんしなきゃいけないなら、オフを作った方がいいけど、そのために授業を受ける曜日を偏らせるのは大変になるよ」
嵐は真に首を振った。
両親からの仕送りもあるし、住まいは灯理と折半だし、そんなに慌ててバイトをする必要はなかった。いつかは小遣い稼ぎでやならきゃとも思うけど、切羽詰まってる訳ではない。
唯もバイトはするつもりでも、嵐と授業を合わせるのを優先してくれた。夜や土日で働くので大丈夫と、時給を電卓アプリで計算しているのを見て、嵐は自分よりも大人っぽいとちょっと憧れを抱いたりもしてた。
「ふふ、こっちだと高校生でもバイトするのが普通だから、時給の計算は慣れてるんだよ」
「めっ。あたしの高校、バイト禁止だった」
「地方だと、まだまだバイトは厳しいみたいだよね。僕の友達も似たようなこと言ってるやついるよ」
何はともあれ。
嵐と唯は、結局全部の授業を丸被りにして履修計画を完成させた。真にもチェックをしてもらって、問題ないとのお墨付きだ。
「ありがとうございました、先輩」
「真さん、ありがとうございます」
後輩二人に頭を下げられて、真も満更でもないと微笑を浮かべる。
「お役に立ててよかったよ。またいつでも頼ってよ」
「ふふ、わたし、先輩がいるなら、このゼミに入りたいかもしれません」
唯が冗談めかしながら言うのを聞いて、嵐はゼミのこともまた考えないといけないんだなとぼんやりと考える。
でも、まずは今日作った履修をしっかりと体に馴染ませる方が先だ。
文学部のゼミ決定は、一年の終わりになる。それまでにこの大学で何を勉強して卒業していくか決めなきゃいけないんだと思うと、嵐は全然時間がないように思えて、けれどまだ上手く自覚が持てなくて、ちょっぴり不安が残るのだった。
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