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「違うんです! 話を聞いてください!」
部屋から出ようとした彼女の腰に少女は抱きついてそう言った。
「あれがユーコの占いのやり方なんです!」
「タロットカードなのに?」
相談に来た彼女、塩野リョウは眉間にしわを寄せた。
リョウは姉の影響で少なからずタロットカードのことは知っていた。タロットカードとは大アルカナと小アルカナからなる、主に占いに使われるカードである。普通のトランプよりもひと回り大きい。それぞれの絵柄に意味を持ち、決まった順番に並べることで占い結果を読み取ることができるのだ。
つまり、「ユーコちゃん」のやり方は全くもってタロット占いとは言えないものであった。
「そりゃそうですよ。これはユーコのオリジナルなんですから」
彼女は抱き着いたまま頬をぷくっと膨らませた。
「これだから『無垢な人しか来たらだめ』って噂流しておいたのに!」
「どういうこと?」
「……『無垢な人』って言っておけば、タロット知ってる人は来ないと思ったんです。だって絶対怒られるから」
「別に、怒ってはいないけど」
しかしリョウはため息をついた。相談したいことはあったが、果たして彼女は力になってくれるのだろうか。そんな不安な気持ちを感じ取ったのか、腰にしがみついた少女はにっこりと笑う。
「ユーコのお悩み解決率は百パーセントですよ! ささ、とりあえずお座りください」
少女は意気揚々と椅子をセッティングする。駄目で元々だから、と呟くとリョウはすすめられるがまま椅子に腰かけた。
「まずは自己紹介からですね。改めて初めまして、私は1年A組の五十嵐・U・コーネリア、略して『ユーコ』です。この資料室を借りて自習したり探偵したりしてます!」
ユーコは得意げに胸を張った。リョウもまた「私は2年B組の塩野リョウ。初めまして」と応え、差し出された手をにぎった。
「それで、ご相談はどういった内容ですか?」
「ペンを探してほしいの」
ペン、とユーコはくり返した。彼女の顔にありありと浮かんでいる「そんなに特別なペンなのだろうか」という問いに答えるように、リョウは「いつも使っていたシャープペンシルを見つけてほしい」と改めて言った。
「見た目はどんな?」
「普通のだよ。水色で、大学のロゴが入ってる。お姉ちゃんがオープンキャンパスでもらってきたシャーペンなの」
姉は「お土産だよ」と言ってリョウにくれたのだ。それは恐らく冗談で、ただ渡すだけでは味気ないからと言ってみただけのセリフだったはずだ。リョウもそれは分かっていた。
「でももらったとき、すごくワクワクしたんだ。ペン自体はどこにでも売ってる普通のやつだけど、大学の名前が入ってるだけですごく特別に感じて」
だからリョウはそのシャープペンシルをいつも使っていた。書き心地もよく、お気に入りだった。ところが今日になって姿を消してしまったのである。
「無くなったと気づいたのはいつですか?」
「5時間目。授業で使おうと思ったら筆箱に入ってなくて」
「その前の授業では手元にあったんですか?」
「うん、ノート取るのに使ったから間違いないよ。筆箱にも入れたと思ってたけど、いまいち覚えてないかも」
ユーコは「なるほど!」と言って両手を叩いた。
「シャープペンシルの捜索依頼、確かに承りました! このユーコちゃんと『めてお』がパパっと解決してみせましょう!」
「『めてお』って何?」
「タロットの名前です」
「名前つけてるんだ」
部屋から出ようとした彼女の腰に少女は抱きついてそう言った。
「あれがユーコの占いのやり方なんです!」
「タロットカードなのに?」
相談に来た彼女、塩野リョウは眉間にしわを寄せた。
リョウは姉の影響で少なからずタロットカードのことは知っていた。タロットカードとは大アルカナと小アルカナからなる、主に占いに使われるカードである。普通のトランプよりもひと回り大きい。それぞれの絵柄に意味を持ち、決まった順番に並べることで占い結果を読み取ることができるのだ。
つまり、「ユーコちゃん」のやり方は全くもってタロット占いとは言えないものであった。
「そりゃそうですよ。これはユーコのオリジナルなんですから」
彼女は抱き着いたまま頬をぷくっと膨らませた。
「これだから『無垢な人しか来たらだめ』って噂流しておいたのに!」
「どういうこと?」
「……『無垢な人』って言っておけば、タロット知ってる人は来ないと思ったんです。だって絶対怒られるから」
「別に、怒ってはいないけど」
しかしリョウはため息をついた。相談したいことはあったが、果たして彼女は力になってくれるのだろうか。そんな不安な気持ちを感じ取ったのか、腰にしがみついた少女はにっこりと笑う。
「ユーコのお悩み解決率は百パーセントですよ! ささ、とりあえずお座りください」
少女は意気揚々と椅子をセッティングする。駄目で元々だから、と呟くとリョウはすすめられるがまま椅子に腰かけた。
「まずは自己紹介からですね。改めて初めまして、私は1年A組の五十嵐・U・コーネリア、略して『ユーコ』です。この資料室を借りて自習したり探偵したりしてます!」
ユーコは得意げに胸を張った。リョウもまた「私は2年B組の塩野リョウ。初めまして」と応え、差し出された手をにぎった。
「それで、ご相談はどういった内容ですか?」
「ペンを探してほしいの」
ペン、とユーコはくり返した。彼女の顔にありありと浮かんでいる「そんなに特別なペンなのだろうか」という問いに答えるように、リョウは「いつも使っていたシャープペンシルを見つけてほしい」と改めて言った。
「見た目はどんな?」
「普通のだよ。水色で、大学のロゴが入ってる。お姉ちゃんがオープンキャンパスでもらってきたシャーペンなの」
姉は「お土産だよ」と言ってリョウにくれたのだ。それは恐らく冗談で、ただ渡すだけでは味気ないからと言ってみただけのセリフだったはずだ。リョウもそれは分かっていた。
「でももらったとき、すごくワクワクしたんだ。ペン自体はどこにでも売ってる普通のやつだけど、大学の名前が入ってるだけですごく特別に感じて」
だからリョウはそのシャープペンシルをいつも使っていた。書き心地もよく、お気に入りだった。ところが今日になって姿を消してしまったのである。
「無くなったと気づいたのはいつですか?」
「5時間目。授業で使おうと思ったら筆箱に入ってなくて」
「その前の授業では手元にあったんですか?」
「うん、ノート取るのに使ったから間違いないよ。筆箱にも入れたと思ってたけど、いまいち覚えてないかも」
ユーコは「なるほど!」と言って両手を叩いた。
「シャープペンシルの捜索依頼、確かに承りました! このユーコちゃんと『めてお』がパパっと解決してみせましょう!」
「『めてお』って何?」
「タロットの名前です」
「名前つけてるんだ」
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