【筋トレ中毒のシャブ屋】

Cozyもみっこ花子

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第10パケ 「2日で2億を動かす男じゃ!」

【筋トレ中毒のシャブ屋】

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第10パケ【筋トレ中毒のシャブ屋】


「2日で2億を動かす男じゃ!」



~トミーに気軽に預けた1億入りのクーラーボックスが無くなった。トミーを責める訳にもいかず、恐怖と絶望感に襲われながら…~




トミーの豪邸から、とぼとぼと徒歩で店に向かう。余りの身体の震えと、朦朧とする意識の中、運転が正常にできる気がしなかった。 

【じっさいには‘月偏’の漢字はとても少なく、その中で有名なのが‘朦朧’です。ですから、‘胸’や‘股’や‘腰’は私の好物…やなくて‘にくづき偏’となります。また小学校で学習しなかった私が驚いたのは、偏は左側で、旁は右側を言うんですね】


店に着く頃には嗚咽が酷くなり、もうこの先どうなっても良いと自棄な気持ちにかたよっていた。


【‘嗚咽’の‘嗚’は口+烏です。‘着信音が鳴る’の方は口+鳥ですね。SUNTORY烏龍茶が有名になるまでは、かなりの確率で烏龍茶を鳥+龍+茶と書く人がいました】



その時、例の権堂メールの着信音が鳴った。
反射的に頭の天辺(てっぺん)から爪先にまで鋭い電気が入った。


(嗚呼…。いっそ電気ショックで死にたい…)


恐る恐るメールフォルダを開くと、そこには今朝会う客への指示が届いていた。 


(そうやったわ…。5人のお客さん、一億もあるのがバレない様に、時間差で来るんやったなぁ。急いで断らなあかん!!)


(いや、待てよ…。断った所で、この先の解決にはならへんやん。マズイなぁ…。どないしよ、どないしよ)


権堂に正直に話せば、恐らく闇に葬られるだろう。話さなくても数日の内にバレてしまうだろう。引き延ばしても月末の振込みが無ければお仕舞いだ… 


頭を抱えて、考えに考え抜いた挙げ句、俺はトミーの豪邸に再び舞い戻った。 


「あんなぁ…」

「あんなぁ…トミー…」


トミーが言う。 

「何さ、またあれか?尾崎の台詞でも叫びたいんやろ?」


「ちゃうて…。その…。あの…。」


「早く言えよ。やっぱりクーラーボックス買って欲しいんだろ?構わないよ」


俺は大きく息を吸い込むと一気に言い放った。

「あんなぁ!大したことあらへんねん!1億、10分以内に貸してや!」


流石のトミーも、やはり驚いた様子だった。 

いくら日頃は詮索しないトミーでも、使い途を尋ねたそうな不安な面持ちだった。 

「わかった…。しかし1億はここには置いてないよ。今日は週末だから銀行も開いてないし…」

そう言いながら、指をパチンッと鳴らすと、執事が小切手帳を運んできた。 


「借用書は要らないからね。何だか知らないけど、気を付けてな…」


どこかトミーの横顔に寂しさが垣間見えた。 


トミーは、8ツも0を書き込んだ小切手を一枚俺に手渡すと、ラグビーと筋トレで鍛え抜かれたゴツい手で、俺の肩を2回叩いた。 

「危ないことには手を出しちゃいけないよ?いいね。
今日は地元の16銀行は空いていないから、各務原イオンの中にあるAEON銀行に行ってごらん。今から頭取に指示を出しておくからね」

俺は、礼の代わりに、トミーの目を見詰めながら固く握手をすると、急いで各務原イオンの中にあるAEON銀行に車で走った。

頭取とは言っても、AEON銀行は特殊な形態の銀行だから、恐らくは東京本社から支店長にでも連絡が入ったのだろう。

到着すると各務原支店には週末と言うこともあり、1億の金を常備していないとのことで、急いで周辺の提携銀行やATM経由で送られてきた資金を職員が運んで来てくれている最中だった。

金額が大きいからなのか、トミーの力なのかはわからなかったが、警備員まで周りを固めてくれて、ものスゴい早さで取引をしてくれた。

俺は手元にあった、もち吉アラレの紙袋に1億の束を無造作に詰め込むと、底が抜けそうな袋を下から抱えて、急いで店に戻った。 


指示通りに5人の客への手渡しが済んだ頃には昼過ぎだった。 


まったく食欲はわかなかったけれど、何かしら胃に突っ込んでから、少し昼寝をした。 


夢の中でトミーが叫んでいる。 

「小太郎~!ダメだ!そちらに渡ったら命はないぞ!こちらに戻るんだ!」


目を覚ますと全身汗でびっしょりだった。 


(三途の川みたいだったなぁ…) 


しかし、やはりそこは根から悪党の俺だけに、立ち直りも早かった。


「なんや! 1億くらい、すぐに用立てできるやないかい! これで俺は2日で2億を動かす男じゃ! ひっひっひ!」


あのクーラーボックス紛失が、初めから権堂の企みであったのだとは、まだこの時点では知る由もなかった。

【由】よし
事物の起こるもとになったことがら。わけ。いわれ。…とのこと。手段。


第10パケ【筋トレ中毒のシャブ屋】
おわり
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