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プロローグ
しおりを挟むマクシミラ王国 王都にあるマクシミラ学園
卒業パーティーも終盤に差し掛かった頃
その事件は起こった
「イザベラ・ドリドル公爵令嬢、私としてもこんなことはしたくないが 貴女との婚約を破棄させていただく」
賑やかだった卒業生や在校生の話し声が一瞬にして止む。なにせ声の主がこの王国の第二王子殿下であったからだ。
そんな中で一人甲高い声を上げる令嬢がいた。
「なぜっ!なぜですの? 勝手にそんなこと許されるとでも ..まさか、あの身分の低い男爵令嬢がいいっていうんですの?」
「王家からの許可も出ている。 手順を踏んで手続きをしたまでだ」
「そんなっ!」
二人が向かい合う形になっている。
私は取り乱した。こんなことあるなんて夢にも思わなかった。
でも徐々に記憶がつながっていく 今すぐ家に帰って布団にくるまって現実逃避したい気分だ。
「男爵令嬢とは アリスのことか?
貴女の彼女に対する態度は 注意をするレベルではなかった。 むしろ殺害未遂だ 自分でしたことを覚えているだろう?」
第二王子殿下の冷たい視線がイザベラを射抜く だが普段温和な殿下の態度の急変にもイザベラは怯まない。
「いいえっ!私は我がドリドル公爵家の名に誓ってそんなこと知りませんし、やってもおりませんわ!」
「それではこれはどう言い逃れができる」
ため息をつき そう言った第二王子殿下が自身の指をパチンと鳴らし魔法を使って会場の天井いっぱいに映像を流した
その映像を皆が少し顔を上げて見ると、そこには先ほどまで誘拐されていた アリスと呼ばれる令嬢の姿が映し出されていた、場所は学園内の馬小屋だ。
馬小屋で手紙のような紙切れを持ち 待っているような様子のアリスだったが 次の瞬間 後ろから布か何かを口に押し付けられ 二人組の男によって後ろの茂みに連れ込まれてしまった。
映像を見ていた貴族達が騒めく。
映像は違う場面に切り替わる
ここは外壁からして王宮の使われなくなった倉庫と思われた。そこに二人組の男に担がれ 気を失ったアリスが映った
数分後 その場に現れ入っていったのは
.......そこにいる公爵令嬢 イザベラだった。
殿下がもう一度パチンと指を鳴らし映像を止める。
「最近秘密裏に監視カメラを所々に仕掛けておいてよかったよ これを見てもイザベラ 君はなにも関わっていないと言えるのかい?」
「っ!!そ、そんなの魔法でいくらでも合成できますわ!」
あ~なんだっけな 概要は結構思い出してきたのになんだか大切なところがまだ思い出せてない気がする。
「私もそれは疑ったよ この間から魔法検査機関を通して調べてもらった だが映像改ざんは無い というのが結果だ」
「っそれならば あの男爵令嬢の自作自演です!!私も協力しろと男を使って脅されたのです!
フィン様の気を引き 私を貶めるためになんて浅ましい女ですこと!」
「..イザベラ、君は先程 公爵家の名に誓って何も知らないし、何もしていないと言ったね 」
イザベラはグッと押し黙る
「アリスこちらに出ておいで」
このままでは埒が明かないとフィンは先程の映像で誘拐されていた男爵令嬢を手招く
アリスは一週間ほど監禁されていたので映像より少し細かった。
いやいやいやタイムタイム フィン殿下タイムですって一回落ち着きましょ?ね?
まだ私整理できてませんから!
奥から出てきたアリスは何故か挙動不審だった。フィンの隣に来て男爵令嬢と目線を合わせた瞬間 目が、背筋が、佇まいが凛として美しいと見た誰もが思った。
え?これどうする?とりあえずイザベラ様見ておく?
わぁ!イザベラやっぱり美人 今は鬼の形相だけど...
ってこの後ってまさか
「あの倉庫の中までは写せなかったが、アリス あの場に現れたのはイザベラで間違えないね?」
「....はい。イザベラ公爵令嬢で間違えありませんでした」
アリスは震えながら答える
その姿は酷く加護欲をそそった。
けれどアリスの震えは倉庫の出来事を思い出した恐怖からくるものではなかった。
..これエンディングよね!?ハッピーかバッドどっちなの!?逆ハーエンドは周りに殿下以外いないから大丈夫だとしても
「嘘よっ! 皆さんそんな男爵令嬢の言葉を信じるっていうの!?」
イザベラは周りを見渡す が冷たい貴族の目線が刺さっただけだった。
「ナ、ナターシャ? レイチェル?」
普段自分の周りにいた二人もイザベラを嘲笑うかのように見下していた。
「イザベラ、全て君の行動が招いた結果だ。これで分かったね?」
「わ、私には公爵のお父様がいますわ!!公爵家の援助が受けられなくていいのかしら?」
確かに王家は一時負債を抱えていて そこにつけ込むかのように公爵家が負債を肩代わりし、その代わりとフィンに恋したイザベラをフィンの婚約者に立たせた。
「イザベラ...」
イザベラが慣れ親しんだ父の声に振り向くと、そこには沈痛な面持ちをした公爵がいた がそれに気がつくことなくイザベラの表情はパッと明るくなる。
「お父様からも言ってちょうだい!!何故私があんな女に負けなければならないのっ!」
次に公爵が放った言葉は重かった
「...お前を公爵家から勘当する。まとまった金は用意する 今夜にでも平民街に降りなさい」
「え?何を言って...? どうして!どうして皆私を信じてくれないのっ!お父様は私に死ねと言っているの?」
貴族が平民街に降りて働き生活するなどよほどプライドをズタズタにしないと不可能だ。
「殿下、申し訳ありません 私は娘を甘やかしすぎました ですが最後の情けとしてせめて処罰はこれで勘弁していただけないでしょうか」
公爵ともあろう方が人目も憚らず膝をつきフィンに頭を下げる。
「あぁ それでいい 公爵家には新たに忠誠を誓っていただければ」
「ありがたきお言葉」
フィンがこの場で、卒業パーティーという未来の当主達の前であえて罪を暴いたのも
この公爵から王家へ忠誠があると示したかったからに違いなかった。
勘当宣言をされたイザベラは壊れたように涙を流しながら 床に座り込みブツブツブツブツ何かを言っている
「イザベラ、行くぞ」
公爵が言ってもイザベラは糸が切れた人形のように動かない
「おいイザベ 」
「フィン様、、最後に一つお聞きしたいです」
公爵の言葉を遮ってイザベラが口を開いた
「許可しよう」
「...私が婚約者から降りた後、その、アリスを婚約者にするおつもりでしょうか?」
「あぁ。私はそのように望んでいるよ」
最後くらいはと、正直に答えたフィンに あわよくば自分の娘を、と思っていた貴族のため息が聞こえる
「ふっ あっははははははははっ」
だが途端イザベラの様子がおかしくなった
これ詰んだかも このイザベラの壊れっぷりってあれよね?一回しかそのルート入ったことないけど 私の人生終わりかもしれないな
「おいイザベラ?」
「公爵令嬢である私よりその女? おかしくてしょうがないわ 」
イザベラはフラッと立ち上がるとゆっくりゆっくりとアリスやフィンの元へ向かっていく その姿はまるで操り人形かのようだった。
危険な空気を感じ取った近衛達がフィンの周りで警戒していた
そうよ武器がなければ何もできないわよね
そのまま警戒よろしくですムキムキ近衛さん!
私は目の前のムキムキ近衛さんを拝んだ。
イザベラは近くにある果物に刺さっていた飾りの尖ったピンを引き抜いた
近衛が捕らえようと動きだした瞬間
そっちなの!!イザベラ様頭いいですね!でも聞いてませんよそれ。
オリジナリティ溢れ出さなくていいですから!
「風よ!!」
フィンが防御魔法をマリアに向けて放ったが
....イザベラ様の美しいお顔が目の前で拝見できてこの上ない幸せですが お願いだから泣きそうな顔しながら刺さないでいただきたかったです
イザベラの凶器がアリスの腹部に刺さるのが早かった。
誰かの悲鳴が上がると同時にアリスのドレスが一瞬で血で赤く染まる。
イザベラは虚ろな目をしながらすぐに近衛に捕らえられ会場を後にした
「っぁ!」
呼吸が苦しい 感じたことないような痛みが走る。そういえば出欠多量で死亡だっけ..?
死ぬ間際だけどアリスは冷静だった
..前から薄々なんか既視感っていうの?感じてたんだけど さっきのシーンでようやく全部思い出したわ
でも流石に、ヒロインは殺されて悪役令嬢処刑ルートなんてすぐに思い出せないじゃない!
あーーー!私の推しのフィン様が苦しそうに顔を歪めてるじゃない!だれよ!こんな表情にしたの! いやでもこの顔 ゲームでもアリスでも見たことない表情だから最期の最期で得したかも?
なんて考えていると周りの声が言葉がどんどん遠ざかっていく
「...これだからバッドエンドは」
アリス・グロリア男爵令嬢は転生令嬢だった。
日本での名前は 佐藤 有咲
乙女ゲーム 〝TRUE LOVE ~マクシミラ恋愛学園~〟を夜通しやり込んでいた
ただの大学生だった。
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