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「待て! まだ話は終わっていないぞ、ニオ!」
夜風に当たりながら伸びをしていた私の背後から、騒々しい声が追いかけてきた。
振り返ると、そこには息を切らせたジェラルド殿下と、ドレスの裾を摘んで小走りでついてくるリリナ嬢、そして数名の取り巻きたちの姿があった。
私は露骨に顔をしかめ、腕時計を確認した。
「業務時間は終了しました。これ以降の会話は時間外労働(オーバータイム)となりますが、よろしいですか?」
「ふざけるな! 金の話ばかりしおって!」
殿下が私の目の前で仁王立ちになる。
「婚約破棄には同意した。慰謝料も……くっ、払うと言った。だが、それとこれとは別だ!」
「別、とは?」
「貴様の罪だ! 数々の悪行について、リリナに謝罪もせずに立ち去るつもりか!」
ああ、なるほど。
金銭的な敗北感を、道徳的な優位性で埋め合わせようという魂胆か。
実に人間らしくて浅ましい。
私は小さな溜息をつき、近くに控えていた御者に「出発を十分ほど遅らせて」とハンドサインを送った。
「分かりました。では、その『罪』とやらを具体的に挙げていただけますか? 冤罪でないことが証明されれば、謝罪でも土下座でもオプションでお付けしますよ」
「言ったな? 後悔するなよ!」
殿下は勝ち誇ったように鼻を鳴らし、リリナ嬢の肩を抱き寄せた。
「リリナ、怖がらなくていい。あいつに君がされた酷いことを、全部言ってやるんだ」
「は、はいぃ……ジェラルド様ぁ……」
リリナ嬢が潤んだ瞳で私を睨む。その視線には、明確な敵意と嘲笑が混じっていた。
「まず一つ目だ! 先月、リリナの歴史の教科書を隠しただろう!」
殿下がビシッと私を指差す。
「テスト前に教科書を隠すなど、陰湿極まりない嫌がらせだ! おかげで彼女は勉強ができず、心を痛めていた!」
周囲の取り巻きたちが「そうだそうだ」「酷すぎる」と野次を飛ばす。
私は無表情のまま、再びクラッチバッグを開いた。
「教科書、ですか」
「とぼけても無駄だ! 目撃者はいなくとも、動機があるのは貴様だけだ!」
「いえ、動機がありません」
私はバッグから一枚の紙を取り出し、ペラリと広げた。
「これは学園の成績管理委員会から正式に取り寄せた、リリナ嬢の過去三回分の成績表です」
「なっ、なぜ貴様がそんなものを!」
「生徒会役員としての権限です。ご覧ください。歴史の点数は、前回が四点、前々回が二点、その前が名前の書き忘れで零点です」
私は成績表を殿下の目の前に突きつけた。
「平均点は三点以下。教科書があろうがなかろうが、彼女の成績は誤差の範囲でしか変動しません。私が教科書を隠す労力を割くことで得られる『嫌がらせ効果』は、費用対効果(コストパフォーマンス)が悪すぎます」
「ぐっ……」
「それに、彼女の教科書は中身が真っ白でしたよ。授業中に落書きばかりしていて、重要な箇所にマーカーすら引いていない。隠す価値すらない資源ゴミです」
「そ、そんなことはないですぅ! 私は一生懸命……!」
リリナ嬢が叫ぶが、証拠(成績表)の威力は絶大だ。
「次、お願いします」
私が事務的に促すと、殿下は顔を赤くして次のネタを探した。
「そ、そうだ! 二週間前の調理実習だ! 貴様、リリナのスープに大量の塩を混入しただろう!」
「塩?」
「リリナが味見をした時、あまりの塩辛さに泣き出したのを知っているぞ! あんな可愛い顔を歪ませるなんて、悪魔の所業だ!」
私は眼鏡の位置を直した。
「ああ、あの件ですか。訂正します。あれは塩ではありません」
「言い訳か! 塩辛かったと言っている!」
「あれは『岩塩』ですらなく、ただの計量ミスです。リリナ嬢はレシピの『小さじ1』を『お玉1』と勘違いして投入していました」
「な……」
「私は隣の調理台からそれを見ていましたが、止める義務はないので放置しました。自業自得です。ちなみに、そのスープを『美味しい、リリナの愛の味がする』と言って完食したのは殿下、貴方ですよ」
「ぶっ……!」
殿下が口元を押さえる。
数週間前の高血圧の原因が判明し、青ざめているようだ。
「ま、まだある! 先日の階段での出来事だ!」
殿下が必死に話題を変える。
「リリナが階段から突き落とされたと言っていた! 幸い、僕が受け止めたから怪我はなかったが、一歩間違えれば大惨事だ! あれこそ殺人未遂ではないか!」
「突き落とした、ですか」
私はリリナ嬢を見た。彼女は私の視線を避けるように殿下の背後に隠れる。
「リリナさん。貴女が転びかけたのは、学園の東棟にある螺旋階段ですね?」
「そ、そうですぅ! ニオ様が後ろからドンって!」
「物理的に不可能です」
私は即答した。
「当時の私の位置情報は、図書室の貸出記録と司書の証言により、西棟にいたことが証明されています。東棟と西棟の移動には、私の足で早歩きしても十五分かかります。瞬間移動でもしない限り、犯行は不可能です」
「そ、それは……誰か手下を使ったのかも!」
「それに」
私は言葉を被せる。
「仮に私がその場にいて、貴女を突き落とそうとしたなら、確実に『仕留めて』います」
「ヒッ……!」
私の目が笑っていなかったのか、リリナ嬢が短く悲鳴を上げた。
「中途半端に突き飛ばして、殿下に抱きとめられるような甘い仕事はしません。重力加速度と角度を計算し、確実に全治三ヶ月以上のダメージが入るように設計します。私が手を出していない何よりの証拠は、貴女が今、五体満足でそこに立っていることです」
シーン……。
会場前が静まり返る。
もはや誰も反論しようとしない。
あまりの正論(と殺意)の前に、殿下も言葉を失っている。
「……他にありますか? 上履きに画鋲が入っていた件は、貴女が自分で踏み抜いた画鋲を放置していただけですし、花瓶が割れた件は、貴女が廊下でダンスの練習をしてぶつかったのが原因です。全て防犯魔道具の映像記録に残っていますが、見ますか?」
私が懐から水晶玉(記録媒体)を取り出そうとすると、リリナ嬢が青ざめて首を振った。
「い、いいですぅ……ジェラルド様、もう行きましょう? 私、気分が……」
「お、おいリリナ!?」
旗色が悪いと悟ったのか、リリナ嬢が撤退戦に入った。
賢明な判断だ。最初からそうしていればよかったのに。
私は懐中時計をパチンと閉じた。
「どうやら、これ以上の『罪』の提示はないようですね。冤罪の証明は完了したとみなしてよろしいですか?」
「ぐぬぬ……」
殿下は悔しげに拳を震わせているが、もはや反論の余地はない。
「では、私はこれで。これ以上の引き止めは公務執行妨害ならぬ、私の『睡眠執行妨害』とみなし、追加料金を請求いたします」
「……行け。さっさと行ってしまえ!」
殿下が吐き捨てるように言った。
「ありがとうございます。二度とお会いしないことを願っております」
私は優雅にカーテシー(礼)をした。
最高級の皮肉を込めて。
そして、今度こそ誰にも邪魔されることなく、待機していた公爵家の馬車へと乗り込んだ。
「出して」
「はっ」
御者が鞭を振るい、馬車がゆっくりと動き出す。
窓の外では、まだ殿下たちが呆然と立ち尽くしているのが見えた。
遠ざかる彼らの姿が、豆粒のように小さくなっていく。
私は馬車のソファに深く体を沈め、大きく息を吐き出した。
「ふぅ……」
終わった。
本当に終わったのだ。
「馬鹿な男に、浅はかな女。……お似合いのカップルじゃない」
独り言が漏れる。
胸の奥にあった重たい石が取れたような、清々しい気分だ。
これで明日からは、あの無意味な王妃教育もない。
やかましいお茶会に出る必要もない。
好きな時に起きて、好きな本を読み、好きなものを食べる。
私の理想としていた『スローライフ』が、すぐそこまで来ているのだ。
「お父様には事後報告になるけれど、まあ、慰謝料三万枚もあれば文句は言わないでしょう」
実家の父、バルト公爵は私に似て合理的(守銭奴)な性格だ。
「瑕疵物件」となった娘よりも、現金の方を喜ぶに違いない。
私はこれからのバラ色の未来を想像し、緩みそうになる頬を必死に抑えた。
だが。
人生というのは、どうしてこうも計算通りにいかないのだろうか。
揺れる馬車の中で、私はまだ気づいていなかった。
私が『慰謝料請求書』を叩きつけたあの瞬間、会場の隅で目を光らせていた『もう一人の厄介な人物』が、すでに私の身柄確保に向けて動き出していたことを。
そして、家に帰った私を待っていたのが、父からの『労いの言葉』ではなく、『地獄の辞令』であることを。
馬車は夜の闇を切り裂き、私の(かりそめの)自由を乗せて走り続けた。
夜風に当たりながら伸びをしていた私の背後から、騒々しい声が追いかけてきた。
振り返ると、そこには息を切らせたジェラルド殿下と、ドレスの裾を摘んで小走りでついてくるリリナ嬢、そして数名の取り巻きたちの姿があった。
私は露骨に顔をしかめ、腕時計を確認した。
「業務時間は終了しました。これ以降の会話は時間外労働(オーバータイム)となりますが、よろしいですか?」
「ふざけるな! 金の話ばかりしおって!」
殿下が私の目の前で仁王立ちになる。
「婚約破棄には同意した。慰謝料も……くっ、払うと言った。だが、それとこれとは別だ!」
「別、とは?」
「貴様の罪だ! 数々の悪行について、リリナに謝罪もせずに立ち去るつもりか!」
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私は小さな溜息をつき、近くに控えていた御者に「出発を十分ほど遅らせて」とハンドサインを送った。
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殿下は勝ち誇ったように鼻を鳴らし、リリナ嬢の肩を抱き寄せた。
「リリナ、怖がらなくていい。あいつに君がされた酷いことを、全部言ってやるんだ」
「は、はいぃ……ジェラルド様ぁ……」
リリナ嬢が潤んだ瞳で私を睨む。その視線には、明確な敵意と嘲笑が混じっていた。
「まず一つ目だ! 先月、リリナの歴史の教科書を隠しただろう!」
殿下がビシッと私を指差す。
「テスト前に教科書を隠すなど、陰湿極まりない嫌がらせだ! おかげで彼女は勉強ができず、心を痛めていた!」
周囲の取り巻きたちが「そうだそうだ」「酷すぎる」と野次を飛ばす。
私は無表情のまま、再びクラッチバッグを開いた。
「教科書、ですか」
「とぼけても無駄だ! 目撃者はいなくとも、動機があるのは貴様だけだ!」
「いえ、動機がありません」
私はバッグから一枚の紙を取り出し、ペラリと広げた。
「これは学園の成績管理委員会から正式に取り寄せた、リリナ嬢の過去三回分の成績表です」
「なっ、なぜ貴様がそんなものを!」
「生徒会役員としての権限です。ご覧ください。歴史の点数は、前回が四点、前々回が二点、その前が名前の書き忘れで零点です」
私は成績表を殿下の目の前に突きつけた。
「平均点は三点以下。教科書があろうがなかろうが、彼女の成績は誤差の範囲でしか変動しません。私が教科書を隠す労力を割くことで得られる『嫌がらせ効果』は、費用対効果(コストパフォーマンス)が悪すぎます」
「ぐっ……」
「それに、彼女の教科書は中身が真っ白でしたよ。授業中に落書きばかりしていて、重要な箇所にマーカーすら引いていない。隠す価値すらない資源ゴミです」
「そ、そんなことはないですぅ! 私は一生懸命……!」
リリナ嬢が叫ぶが、証拠(成績表)の威力は絶大だ。
「次、お願いします」
私が事務的に促すと、殿下は顔を赤くして次のネタを探した。
「そ、そうだ! 二週間前の調理実習だ! 貴様、リリナのスープに大量の塩を混入しただろう!」
「塩?」
「リリナが味見をした時、あまりの塩辛さに泣き出したのを知っているぞ! あんな可愛い顔を歪ませるなんて、悪魔の所業だ!」
私は眼鏡の位置を直した。
「ああ、あの件ですか。訂正します。あれは塩ではありません」
「言い訳か! 塩辛かったと言っている!」
「あれは『岩塩』ですらなく、ただの計量ミスです。リリナ嬢はレシピの『小さじ1』を『お玉1』と勘違いして投入していました」
「な……」
「私は隣の調理台からそれを見ていましたが、止める義務はないので放置しました。自業自得です。ちなみに、そのスープを『美味しい、リリナの愛の味がする』と言って完食したのは殿下、貴方ですよ」
「ぶっ……!」
殿下が口元を押さえる。
数週間前の高血圧の原因が判明し、青ざめているようだ。
「ま、まだある! 先日の階段での出来事だ!」
殿下が必死に話題を変える。
「リリナが階段から突き落とされたと言っていた! 幸い、僕が受け止めたから怪我はなかったが、一歩間違えれば大惨事だ! あれこそ殺人未遂ではないか!」
「突き落とした、ですか」
私はリリナ嬢を見た。彼女は私の視線を避けるように殿下の背後に隠れる。
「リリナさん。貴女が転びかけたのは、学園の東棟にある螺旋階段ですね?」
「そ、そうですぅ! ニオ様が後ろからドンって!」
「物理的に不可能です」
私は即答した。
「当時の私の位置情報は、図書室の貸出記録と司書の証言により、西棟にいたことが証明されています。東棟と西棟の移動には、私の足で早歩きしても十五分かかります。瞬間移動でもしない限り、犯行は不可能です」
「そ、それは……誰か手下を使ったのかも!」
「それに」
私は言葉を被せる。
「仮に私がその場にいて、貴女を突き落とそうとしたなら、確実に『仕留めて』います」
「ヒッ……!」
私の目が笑っていなかったのか、リリナ嬢が短く悲鳴を上げた。
「中途半端に突き飛ばして、殿下に抱きとめられるような甘い仕事はしません。重力加速度と角度を計算し、確実に全治三ヶ月以上のダメージが入るように設計します。私が手を出していない何よりの証拠は、貴女が今、五体満足でそこに立っていることです」
シーン……。
会場前が静まり返る。
もはや誰も反論しようとしない。
あまりの正論(と殺意)の前に、殿下も言葉を失っている。
「……他にありますか? 上履きに画鋲が入っていた件は、貴女が自分で踏み抜いた画鋲を放置していただけですし、花瓶が割れた件は、貴女が廊下でダンスの練習をしてぶつかったのが原因です。全て防犯魔道具の映像記録に残っていますが、見ますか?」
私が懐から水晶玉(記録媒体)を取り出そうとすると、リリナ嬢が青ざめて首を振った。
「い、いいですぅ……ジェラルド様、もう行きましょう? 私、気分が……」
「お、おいリリナ!?」
旗色が悪いと悟ったのか、リリナ嬢が撤退戦に入った。
賢明な判断だ。最初からそうしていればよかったのに。
私は懐中時計をパチンと閉じた。
「どうやら、これ以上の『罪』の提示はないようですね。冤罪の証明は完了したとみなしてよろしいですか?」
「ぐぬぬ……」
殿下は悔しげに拳を震わせているが、もはや反論の余地はない。
「では、私はこれで。これ以上の引き止めは公務執行妨害ならぬ、私の『睡眠執行妨害』とみなし、追加料金を請求いたします」
「……行け。さっさと行ってしまえ!」
殿下が吐き捨てるように言った。
「ありがとうございます。二度とお会いしないことを願っております」
私は優雅にカーテシー(礼)をした。
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そして、今度こそ誰にも邪魔されることなく、待機していた公爵家の馬車へと乗り込んだ。
「出して」
「はっ」
御者が鞭を振るい、馬車がゆっくりと動き出す。
窓の外では、まだ殿下たちが呆然と立ち尽くしているのが見えた。
遠ざかる彼らの姿が、豆粒のように小さくなっていく。
私は馬車のソファに深く体を沈め、大きく息を吐き出した。
「ふぅ……」
終わった。
本当に終わったのだ。
「馬鹿な男に、浅はかな女。……お似合いのカップルじゃない」
独り言が漏れる。
胸の奥にあった重たい石が取れたような、清々しい気分だ。
これで明日からは、あの無意味な王妃教育もない。
やかましいお茶会に出る必要もない。
好きな時に起きて、好きな本を読み、好きなものを食べる。
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「お父様には事後報告になるけれど、まあ、慰謝料三万枚もあれば文句は言わないでしょう」
実家の父、バルト公爵は私に似て合理的(守銭奴)な性格だ。
「瑕疵物件」となった娘よりも、現金の方を喜ぶに違いない。
私はこれからのバラ色の未来を想像し、緩みそうになる頬を必死に抑えた。
だが。
人生というのは、どうしてこうも計算通りにいかないのだろうか。
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私が『慰謝料請求書』を叩きつけたあの瞬間、会場の隅で目を光らせていた『もう一人の厄介な人物』が、すでに私の身柄確保に向けて動き出していたことを。
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