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「……偽物(フェイク)ですね」
私は手元の「指令書」と、食べかけのマロンタルトを交互に見比べ、即断した。
「おい、ニオ。よく見ろ。この署名、筆跡鑑定の専門家でも騙されるレベルだぞ?」
クライヴ殿下が食い下がる。
しかし、私は鼻で笑い、指令書の紙質を指先で弾いた。
「筆跡はどうでもいいのです。問題は『コスト』です」
「コスト?」
「見てください、この紙。最高級の羊皮紙です。インクもラピスラズリを砕いた特注品。……あのドケチなお父様が、こんな消耗品に金をかけるわけがありません」
私は断言した。
「父は、裏紙の余白にメモを書く人間です。『読めればいい』が信条の男が、こんな無駄な装飾をするはずがない。これは、父の性格(ケチさ)を知らない第三者が捏造した証拠です」
「……君の父親への信頼は、歪んだ方向で強固だな」
殿下は呆れたように肩をすくめた。
「だが、誰が? 何のために?」
「動機(メリット)があるのは、今の祖国で『誰かのせいにしたい』連中でしょうね。……殿下、緊急回線を開いてください。答え合わせをしましょう」
「分かった。通信魔導具を用意する」
◇
数分後。
執務室の空中に投影されたホログラム映像が、ザーザーというノイズの後に鮮明になった。
映し出されたのは、祖国の宰相執務室……ではなく、薄暗い地下室のような場所だった。
そこに、優雅にチェスを指している二人の初老の男性がいた。
一人は、我が父バルト公爵。
もう一人は、やつれ果てた国王陛下だ。
『……ん? おや、ニオか。タイミングが良いな。チェックメイトだ』
父がチェスの駒を動かしながら、こちらに気づいた。
地下室にいるとは思えないほど、くつろいでいる。
「久しぶりですね、お父様。……随分と楽しそうですが、国が転覆しかけているのでは?」
『転覆? ああ、外の騒ぎか』
父はワインを一口飲んだ。
『あれは私が仕組んだ「在庫処分セール」だ』
「……はい?」
『ジェラルド王子とリリナ嬢、および彼らに媚びる腐った貴族ども。これらを一掃するために、一度泳がせたのだよ。彼らに全権を握らせ、好き勝手にやらせてみた』
国王陛下が涙目で口を挟む。
『そしたら、わずか三日で国庫が破綻してのう……。民衆が暴動を起こし、衛兵もストライキに入り、城は今、無法地帯じゃ』
「それで、お二人はここに避難(高みの見物)していると?」
『うむ。責任を私になすりつけようと、私の名の偽造文書まで出回っているようだが……まあ、計算通りだ』
父はニヤリと笑った。
私と同じ、感情のない合理的な笑みだ。
『これで、ジェラルド殿下を廃嫡し、リリナ嬢を追放する「大義名分」ができた。彼らは自らの無能さによって自滅したのだからな』
「……なるほど。相変わらず、やり方がエグいですね」
私は感心した。
毒を持って毒を制す。
腐った患部を切り取るために、一度壊死させる荒療治だ。
「それで? その『患部』たちは今、どうなっているのですか?」
『見せてやろう。監視カメラの映像だ』
父が指を鳴らすと、映像が切り替わった。
そこは、王城の玉座の間。
「いやぁぁぁ! パンがないならケーキを持ってきてよぉ!」
「ひぃぃ! 来ないでくれ! 僕は王子だぞ!」
そこには、怒り狂った民衆(と、給料未払いの衛兵たち)に取り囲まれ、玉座の上で震え上がるジェラルド殿下とリリナ嬢の姿があった。
『金返せー!』
『聖女詐欺だ! 井戸を元に戻せ!』
『王家の資産を売った金はどうしたー!』
罵声と生卵が飛び交う。
「うっ、うう……違うんだ! ニオが! ニオが全部持ち逃げしたんだ!」
ジェラルド殿下が叫ぶが、誰も聞く耳を持たない。
『嘘をつくな! ニオ様は隣国で素晴らしい改革をしていると新聞で読んだぞ!』
『お前たちが無能なだけだ!』
民衆の怒りは頂点に達していた。
「あーん、ジェラルド様ぁ! なんとかしてよぉ! ドレスが汚れちゃう!」
「うるさい! お前が余計なことをするからだ! あっち行け!」
「ひどい! 愛してるって言ったじゃない!」
「愛で腹が膨れるか! 今はパンが欲しいんだ!」
二人は互いを罵り合い、髪を掴み合う喧嘩を始めた。
かつて「真実の愛」を誓った二人の、あまりにも無様で滑稽な末路。
私はタルトの最後の一口を口に放り込み、咀嚼した。
「……美味(おい)しい」
「ニオ。タルトの感想か? それとも映像の感想か?」
隣で見ていたクライヴ殿下が尋ねる。
「両方です。最高のスパイス(ざまぁ)が効いています」
私は映像に向かって言った。
「お父様。彼らの処遇は?」
『国外追放だ。王籍を剥奪し、平民以下の身分に落とす。行き先は……そうだな、北の極寒の地にある開拓村などどうだ? 一生、凍土を耕して借金を返す生活だ』
『ううっ……息子よ、すまぬ……これも国のためじゃ……』
国王陛下が顔を覆う。
「妥当な判決ですね。生産性のない人間には、肉体労働で貢献してもらうのが一番です」
私は満足げに頷いた。
『そういうわけだ、ニオ。……国は一度リセットされる。立て直しには時間がかかるだろうが、まあ、私とお前で貯め込んだ「裏金」……ごほん、内部留保を使えばなんとかなる』
「……お父様。私の口座に入金された金貨五万枚は、返しませんよ?」
『分かっている。それは手切れ金だ。……その代わり』
父の目が、鋭く光った。
『隣国の皇太子殿下。そこにいるな?』
「……ああ、聞いている」
クライヴ殿下が前に出た。
『娘をやる。返品は不可だ。……その代わり、我が国との最恵国待遇条約を結べ。復興支援という名目で、そちらの技術と資源を安く回してもらう』
「……ふっ」
殿下は不敵に笑った。
「いいだろう。ニオという最高の人材を貰う対価と思えば、安いものだ。……商談成立だな、バルト公爵」
『交渉成立だ。……ニオ、幸せになれよ(金持ちになれよ)』
プツン。
通信が切れた。
執務室に静寂が戻る。
「……終わりましたね」
私は空になった皿を見つめた。
ジェラルド殿下とリリナ嬢の破滅。
祖国の崩壊と再生。
そして、私の完全なる自由(という名の隣国への永住)の確定。
全ての懸案事項が片付いた。
「ああ。……壮絶な『ざまぁ』だったな」
殿下は複雑そうな顔をしつつも、私の肩を抱いた。
「だが、これで君を連れ戻そうとする邪魔者は消えた」
「そうですね。……これからは、心置きなく定時退社に専念できます」
「そこは『心置きなく私と愛を育める』と言ってほしいところだが」
殿下は苦笑し、私の額にキスをした。
「……まあいい。時間はたっぷりある」
「ええ。……これからは、少しはサービス残業(デート)も検討しますよ」
私が照れ隠しに言うと、殿下は今日一番の笑顔を見せた。
こうして、私の「悪役令嬢」としての物語は、最高のハッピーエンド(ざまぁ)で幕を閉じた――わけではない。
そう、まだ一つだけ。
私たちが忘れている「重要事項」が残っていた。
「……あれ? 殿下」
「ん? どうした」
「今の通信……お父様、私の『猫』については一言も触れませんでしたね?」
「……あ」
「人質だったはずの猫。国王陛下の膝にいた猫。……まさか」
嫌な予感がした。
父の性格を考えれば、ただで返すはずがない。
その予感は的中する。
数日後、祖国から届いた荷物には、猫の代わりに『請求書』が入っていたのだ。
『品名:猫(ラグドール)の保管料および餌代(プレミアムコース)』
『金額:金貨五百枚』
「……あのクソ親父ぃぃぃ!!」
私の絶叫が、平和になった執務室に響き渡る。
やはり、この親にしてこの子あり。
私の戦い(金銭闘争)は、まだまだ終わらないようである。
私は手元の「指令書」と、食べかけのマロンタルトを交互に見比べ、即断した。
「おい、ニオ。よく見ろ。この署名、筆跡鑑定の専門家でも騙されるレベルだぞ?」
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地下室にいるとは思えないほど、くつろいでいる。
「久しぶりですね、お父様。……随分と楽しそうですが、国が転覆しかけているのでは?」
『転覆? ああ、外の騒ぎか』
父はワインを一口飲んだ。
『あれは私が仕組んだ「在庫処分セール」だ』
「……はい?」
『ジェラルド王子とリリナ嬢、および彼らに媚びる腐った貴族ども。これらを一掃するために、一度泳がせたのだよ。彼らに全権を握らせ、好き勝手にやらせてみた』
国王陛下が涙目で口を挟む。
『そしたら、わずか三日で国庫が破綻してのう……。民衆が暴動を起こし、衛兵もストライキに入り、城は今、無法地帯じゃ』
「それで、お二人はここに避難(高みの見物)していると?」
『うむ。責任を私になすりつけようと、私の名の偽造文書まで出回っているようだが……まあ、計算通りだ』
父はニヤリと笑った。
私と同じ、感情のない合理的な笑みだ。
『これで、ジェラルド殿下を廃嫡し、リリナ嬢を追放する「大義名分」ができた。彼らは自らの無能さによって自滅したのだからな』
「……なるほど。相変わらず、やり方がエグいですね」
私は感心した。
毒を持って毒を制す。
腐った患部を切り取るために、一度壊死させる荒療治だ。
「それで? その『患部』たちは今、どうなっているのですか?」
『見せてやろう。監視カメラの映像だ』
父が指を鳴らすと、映像が切り替わった。
そこは、王城の玉座の間。
「いやぁぁぁ! パンがないならケーキを持ってきてよぉ!」
「ひぃぃ! 来ないでくれ! 僕は王子だぞ!」
そこには、怒り狂った民衆(と、給料未払いの衛兵たち)に取り囲まれ、玉座の上で震え上がるジェラルド殿下とリリナ嬢の姿があった。
『金返せー!』
『聖女詐欺だ! 井戸を元に戻せ!』
『王家の資産を売った金はどうしたー!』
罵声と生卵が飛び交う。
「うっ、うう……違うんだ! ニオが! ニオが全部持ち逃げしたんだ!」
ジェラルド殿下が叫ぶが、誰も聞く耳を持たない。
『嘘をつくな! ニオ様は隣国で素晴らしい改革をしていると新聞で読んだぞ!』
『お前たちが無能なだけだ!』
民衆の怒りは頂点に達していた。
「あーん、ジェラルド様ぁ! なんとかしてよぉ! ドレスが汚れちゃう!」
「うるさい! お前が余計なことをするからだ! あっち行け!」
「ひどい! 愛してるって言ったじゃない!」
「愛で腹が膨れるか! 今はパンが欲しいんだ!」
二人は互いを罵り合い、髪を掴み合う喧嘩を始めた。
かつて「真実の愛」を誓った二人の、あまりにも無様で滑稽な末路。
私はタルトの最後の一口を口に放り込み、咀嚼した。
「……美味(おい)しい」
「ニオ。タルトの感想か? それとも映像の感想か?」
隣で見ていたクライヴ殿下が尋ねる。
「両方です。最高のスパイス(ざまぁ)が効いています」
私は映像に向かって言った。
「お父様。彼らの処遇は?」
『国外追放だ。王籍を剥奪し、平民以下の身分に落とす。行き先は……そうだな、北の極寒の地にある開拓村などどうだ? 一生、凍土を耕して借金を返す生活だ』
『ううっ……息子よ、すまぬ……これも国のためじゃ……』
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『分かっている。それは手切れ金だ。……その代わり』
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「……ああ、聞いている」
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「……ふっ」
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「いいだろう。ニオという最高の人材を貰う対価と思えば、安いものだ。……商談成立だな、バルト公爵」
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執務室に静寂が戻る。
「……終わりましたね」
私は空になった皿を見つめた。
ジェラルド殿下とリリナ嬢の破滅。
祖国の崩壊と再生。
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全ての懸案事項が片付いた。
「ああ。……壮絶な『ざまぁ』だったな」
殿下は複雑そうな顔をしつつも、私の肩を抱いた。
「だが、これで君を連れ戻そうとする邪魔者は消えた」
「そうですね。……これからは、心置きなく定時退社に専念できます」
「そこは『心置きなく私と愛を育める』と言ってほしいところだが」
殿下は苦笑し、私の額にキスをした。
「……まあいい。時間はたっぷりある」
「ええ。……これからは、少しはサービス残業(デート)も検討しますよ」
私が照れ隠しに言うと、殿下は今日一番の笑顔を見せた。
こうして、私の「悪役令嬢」としての物語は、最高のハッピーエンド(ざまぁ)で幕を閉じた――わけではない。
そう、まだ一つだけ。
私たちが忘れている「重要事項」が残っていた。
「……あれ? 殿下」
「ん? どうした」
「今の通信……お父様、私の『猫』については一言も触れませんでしたね?」
「……あ」
「人質だったはずの猫。国王陛下の膝にいた猫。……まさか」
嫌な予感がした。
父の性格を考えれば、ただで返すはずがない。
その予感は的中する。
数日後、祖国から届いた荷物には、猫の代わりに『請求書』が入っていたのだ。
『品名:猫(ラグドール)の保管料および餌代(プレミアムコース)』
『金額:金貨五百枚』
「……あのクソ親父ぃぃぃ!!」
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