15 / 37
◆永倉新八、孫に語る ― 三人の思い出
しおりを挟む
夜が深まり、囲炉裏の火は小さくなってきた。
だが真之介の目は、まだぎらぎらと輝いている。
「じいちゃん……三人一緒の時の話、もっと聞きたい!」
新八は湯飲みを置き、うん、と小さくうなずいた。
◆◆池田屋“前夜”の三人
「池田屋の前の日のことや。
道場でわし、沖田、歳さんの三人で稽古しとった」
新八は笑みをこぼした。
「沖田がな、調子に乗りすぎてわしを転ばせよったんや」
「うわっ、また転んだん!?」
「ちゃう、今度は“転びかけた”だけや。踏ん張ったで?ぎりぎり。」
真之介がくすくす笑う。
新八は続ける。
「そしたら歳さんが後ろからぼそっと言いよるんや」
『永倉ァ、いっそ華麗に転んだらどうや。
どうせ見てるのは俺と総司だけや』
「ほな沖田がな、けたけた笑いながら言いよる」
『新八さん、転ぶ時は“さっ!”って声を出すと格好いいらしいですよ!』
「いや、なんで転ぶこと前提なんや……言い返す間もなく、
沖田が今度は歳さんに斬りかかっていってな」
「え?沖田さん、土方さんに!?」
「おう。歳さんも『こいつ……』って笑いながら受けてな。
その時の三人の気迫──いつ思い出しても胸が熱なるわ」
新八はしばし黙り、囲炉裏の火を見つめた。
◆◆三人の背中
「池田屋の夜、わしら三人は先頭に立ったんや。
歳さんは“隊を守る鬼”として。
沖田は“まっすぐな刃”として。
近藤さんは“全部を背負う覚悟”としてな。」
真之介はごくりと唾を飲んだ。
「じいちゃんは?」
「わしか?……そうやなぁ」
新八は少しだけ照れたように言った。
「“二人を支える後ろ盾”のつもりやった。
わしが倒れたら歳さんも総司も踏ん張れへん。
せやから、踏ん張った。何があっても。」
◆◆笑えるほど、熱かった
新八の目尻が少しゆるむ。
「実はな……池田屋へ駆け込む直前、
沖田がひょいと振り返って、こんなん言うてきたんや」
『新八さん、転ばないようにしてくださいね!』
「こんな時にそれかい!と心の中で突っ込んだで。
わしが『おまえなぁ!』って怒鳴ったら、
歳さんまでくっくっと笑いよるしな」
「そこ笑うとこちゃう!」
「そうなんや。せやけど……“笑えるほど熱かった”ゆうのは、
ああいう瞬間のことやろうな。
死ぬか生きるかの時に肩並べて笑える──
そんな仲間、そうそうおらへん」
真之介の目がじんと潤んだ。
◆◆三人への想い
「近藤さんは……あったかい太陽のような人やった。
歳さんは……その太陽を守る影や。
沖田は……光そのものみたいな若武者やった。」
新八はそっと、孫の肩に手を置いた。
「わしはな、その三つの光と影に照らされて、生きてこられたんや。
今のおまえに語れるのも……三人のおかげや」
囲炉裏の火がふっと揺れ、
遠い時代の鼓動が、かすかに聞こえたような気がした。
だが真之介の目は、まだぎらぎらと輝いている。
「じいちゃん……三人一緒の時の話、もっと聞きたい!」
新八は湯飲みを置き、うん、と小さくうなずいた。
◆◆池田屋“前夜”の三人
「池田屋の前の日のことや。
道場でわし、沖田、歳さんの三人で稽古しとった」
新八は笑みをこぼした。
「沖田がな、調子に乗りすぎてわしを転ばせよったんや」
「うわっ、また転んだん!?」
「ちゃう、今度は“転びかけた”だけや。踏ん張ったで?ぎりぎり。」
真之介がくすくす笑う。
新八は続ける。
「そしたら歳さんが後ろからぼそっと言いよるんや」
『永倉ァ、いっそ華麗に転んだらどうや。
どうせ見てるのは俺と総司だけや』
「ほな沖田がな、けたけた笑いながら言いよる」
『新八さん、転ぶ時は“さっ!”って声を出すと格好いいらしいですよ!』
「いや、なんで転ぶこと前提なんや……言い返す間もなく、
沖田が今度は歳さんに斬りかかっていってな」
「え?沖田さん、土方さんに!?」
「おう。歳さんも『こいつ……』って笑いながら受けてな。
その時の三人の気迫──いつ思い出しても胸が熱なるわ」
新八はしばし黙り、囲炉裏の火を見つめた。
◆◆三人の背中
「池田屋の夜、わしら三人は先頭に立ったんや。
歳さんは“隊を守る鬼”として。
沖田は“まっすぐな刃”として。
近藤さんは“全部を背負う覚悟”としてな。」
真之介はごくりと唾を飲んだ。
「じいちゃんは?」
「わしか?……そうやなぁ」
新八は少しだけ照れたように言った。
「“二人を支える後ろ盾”のつもりやった。
わしが倒れたら歳さんも総司も踏ん張れへん。
せやから、踏ん張った。何があっても。」
◆◆笑えるほど、熱かった
新八の目尻が少しゆるむ。
「実はな……池田屋へ駆け込む直前、
沖田がひょいと振り返って、こんなん言うてきたんや」
『新八さん、転ばないようにしてくださいね!』
「こんな時にそれかい!と心の中で突っ込んだで。
わしが『おまえなぁ!』って怒鳴ったら、
歳さんまでくっくっと笑いよるしな」
「そこ笑うとこちゃう!」
「そうなんや。せやけど……“笑えるほど熱かった”ゆうのは、
ああいう瞬間のことやろうな。
死ぬか生きるかの時に肩並べて笑える──
そんな仲間、そうそうおらへん」
真之介の目がじんと潤んだ。
◆◆三人への想い
「近藤さんは……あったかい太陽のような人やった。
歳さんは……その太陽を守る影や。
沖田は……光そのものみたいな若武者やった。」
新八はそっと、孫の肩に手を置いた。
「わしはな、その三つの光と影に照らされて、生きてこられたんや。
今のおまえに語れるのも……三人のおかげや」
囲炉裏の火がふっと揺れ、
遠い時代の鼓動が、かすかに聞こえたような気がした。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
大東亜戦争を有利に
ゆみすけ
歴史・時代
日本は大東亜戦争に負けた、完敗であった。 そこから架空戦記なるものが増殖する。 しかしおもしろくない、つまらない。 であるから自分なりに無双日本軍を架空戦記に参戦させました。 主観満載のラノベ戦記ですから、ご感弁を
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる