空想時代小説 晩年 永倉新八物語

新雪小太郎

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じっちゃんの教え 実践す

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新八の孫 真之介 が静かに立ち上がった。

夕暮れの道場には、永倉新八の声がまだ木霊しているようだった。

「命は一度きりや。けどな、その一度をどう使うかで、人の価値は決まる――」

老いた祖父の言葉が胸の奥に染み込んで、抜けなくなっていた。

◆教えを実践す

翌朝。
道場の庭は霜が降り、空気は凛と張りつめている。


真之介は一人、木刀を握り、じっちゃんの残した教えを心の中で反芻した。


◎「まず、息を整えろ」
新八がよく言った。



「息が乱れとるうちは、心も剣も乱れる。武士でも庶民でもそこは変わらん。」


真之介ゆっくりと息を吐く。


冬の白い息が、まっすぐ空へ伸びる。


◎「次に、怖さを知れ」

恐れを知らん者は、無謀に走ると。
恐れを知り、それを抱えたまま前に進む。それこそ武士だと。

真之介は木刀を握る手を見つめた。
少し震えている。

——でも、それでいい。


◎型を打つ

静かに、丁寧に、一つひとつ。

永倉新八が若い頃、血煙の中で磨いた技ではなく、
老境に至り、ようやくたどり着いた

「人を生かす剣」。

パンッ!

乾いた足音が庭の土を踏みしめた。


「……じっちゃん、こうか?」

動きはまだ拙い。 


けれど、まっすぐで、すこぶる正直だった。


◆じっちゃんの言葉が背中を押す

「剣はな、人を斬るためのもんやあらへん。人を生かすために振るうもんや。

 わしがこの歳まで生きられたのも、斬るための剣を捨て、生きるための剣を選んだからや。」


孫の胸中に、その言葉が熱く灯る。

——じっちゃんが守り抜いた想いを、

——今度は自分が受け継ぐ番や。

真之介は木刀をそっと構え直した。


その目には、もう子どもの迷いはない。

静かで強い、決意だけが宿っていた。

その時 風が吹いた

その瞬間、庭を横切る冬の風が、どこか懐かしい。

まるで永倉新八が、背後からそっと見守っているかのようだった。

真之介は軽く一礼し、再び型を打ち始める。

一つひとつの動きに、じっちゃんの
教えが息づく。




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