空想時代小説 晩年 永倉新八物語

新雪小太郎

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ある日のこと

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ある日のこと
真之介が木刀を振っていると、
不意に「ひょこっ」と塀の向こうから顔を出す影があった。

近所のガキ大将・タケルだ。

「おーい! またお前、朝から剣の練習か! なぁ、必殺技とか出ぇへんの?」

真之介は苦笑いしながら木刀を下ろす。

「出ぇへん。ドラマやないんやから」

タケルは聞く耳を持たず、

「ええから! ほら、『新撰組・永倉流 秘奥義!』みたいなん教えてぇな!」

と、空に向かって変なポーズを決める。

そこへ、後ろからふいに声が飛んだ。

◆じっちゃんの“恐怖の一喝”

「おいタケル、剣を必殺技ごっこに使うな言うてるやろがッ!」

タケルは魂が抜けたように固まり、
孫は吹き出しそうになって必死にこらえた。

新八は杖をつきながら近づき、タケルに指をさす。

「ええかタケル。秘奥義ならあるぞ」

タケルの目がキラキラ輝く。

「な、なんや! やっぱあるんやな!?」

新八は深くうなずき、
すっと真顔で言い放った。


◆永倉新八・秘奥義

朝ごはんちゃんと食べるの術やと
新八はきっぱりと叫んだ。

タケル:「………は?」

真之介:「(ぶはっ)」

タケルはぽかんとした顔で固まり、
新八はまるで名刀を抜いたかのように胸を張る。


「朝飯を抜いたら集中力が落ちる。

 集中力が落ちたら怪我する。

 怪我したら修行はできん!

つまり! 

朝飯こそ秘奥義の根源や!」


タケルは微妙な顔で
「……め、めっちゃふつう……」と呟いた。

新八は腕を組んだまま鼻を鳴らす。


「侮るな。わしはな、飯を三杯食うて戦場に行った男や!」

タケル:「それただの大食いでは……?」

真之介:「(またぶはっ)」


新八の“訓示のあとに必ずオチがつく”法則


その後も新八の教えは続く。

「ええか真之介よ。

剣の極意は心を澄ませること――」

真之介がうなずくと、新八は続けて言った。


「そして、心を澄ませるには…庭の落ち葉を全部拾うことや!」


真之介:「また労働やんか!」

新八:「心の修行や!」

結局、真之介とタケルは一緒に落ち葉拾いをする羽目に。


だがタケルは不満げに言う。


「永倉流の修行って……地味やなぁ!」


新八は笑って杖をつきながら言った。

「派手やなくてええ。
 地味なことを毎日続けるんが、一番強い剣になるんや。」



孫は胸の奥がじんわり温かくなる。

タケルは「なるほどなぁ」と言いながらも、
最後にこう付け加えた。
「……やっぱ必殺技は欲しいけどな!」
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